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0038★えっ?…骨まで食べちゃうの?
しおりを挟む自分の席に座ったセシリアは、やるコトをやったという気分に、無意識にちょっと微笑みを浮かべる。
どうやら食べずに待っていてくれたらしいコトを見て取り、にっこりと笑って言う。
「待っていてくれたんだね…お待ちどうさま……それじゃ食べよう『いただきます』」
と、前世の習慣が無意識に出たセシリアは、両手を軽く合わせて、頭を軽く下げてから、まず渇いている喉を湿らせるために、カップに入っている水を一口飲む。
はぁ~…昼間にも思ったけど、ちゃんと味が感じられるわ
お水でさえ、ちゃんとお水だって感じられるもの
そう思いながら、スプーンを手に取り、スープにゴロゴロと入っている野菜を口に運ぶ。
うん…やっぱり、この根菜はじゃがいもみたいなモノね……色は紫だったけど
紫っていえば、さつまいもには、前世の世界に、そう言うのあったわねぇ
あれ?こんなに凄い色じゃなかったけど、じゃがいもにも紫のあったような……
知識で、そういうのがあったってことは知っていても、実際は見てないけどねぇ
ああ…美味しいわぁ~……ちゃんと味が感じられて……うん…ほくほくしてる
次は、お肉も食べてみようかな?……そういえば、何の魔物の肉だったのかな?
まぁ…知らない方が良いのかな?
グレンもルリも言わないってコトは、そう言うことだよね
などと思いながら、セシリアはゆっくりと煮込んだお肉を食べる。
ああ…思っていたよりも、柔らかく煮込まれてるわ…良かったぁ~…
お肉を煮る時間が短いからどうかなって思ったけど……うん?
ガリリッ…ゴリゴリ…ガリゴリ……
そんなセシリアが、異音に気付いて顔をあげて見たモノは、骨をガリゴリと齧るルリの姿だった。
えっ…なんで?……骨なんて食べているの?
そう思う隣りからも、似たような音がして、思わずユナを振りかえって眩暈を覚えた。
えぇぇぇぇ~…なんで、ユナも骨を食べているのぉぉぉ~………
それも嬉しそうに頬張って、ガリゴリとしているのぉぉ~………
びっくりしているセシリアに、同じようにスープの中の野菜をスプーンで食べていたグレンが、顔をあげて言う。
「リア…ルリは魔獣だ…ユナも獣人だ……驚くことじゃない」
そう言ってから、硬いパンを手に取り、バリッとむしり、スープに浸けながら続けて言う。
「2人とも、そんな風に骨を食べるなら、獣化してあっちで食べろよ……リアが驚いてるぞ」
その言葉に、即座に反応したのはユナだった。
「イヤッ…リアお姉ちゃんの隣りは、私の席だもん」
「この姿で食べるから、うまいんだよ…アタシも止める気ないよ」
と言って、再び食べ始める。
「…本当は、出来上がったら、ダシの骨は取り出すんだけど…まぁー良いか…そのままでも、ユナとルリが食べれるなら………」
そんな会話をしながら、硬いパンをスープに浸して食べる。
ふふふふ………良いわねぇ~…こういうのって………
と、今までの虐げられ続けてきた生活を、ついつい思い返してしまいながら、ご飯を楽しむセシリアだった。
それでも、考えてしまうのは、しょうがないコトだった。
いったい何時から、災いや穢れを背負わされていたのか?
気が付いたら、身体にいくつもの魔道具を着けられていた
お父様やお母様だという人を見ても……なんの感情も湧かなかった
本当に、感情を抑制する魔道具のセイだったのかしら?
もしかしたら、私自身、あの人達の子供じゃない可能性もあるかもしれない
ラノベやマンガ…いや、乙女ゲームにもある……あるある、じゃないわよね
でも、私自身も、どこかからさらわれてきて、浄化の器の生贄にされていたとしたら?
だって、私の両親だというあの人達は、私を見ても情らしいモノが無かったもの
王太子の婚約者という地位につける為だけに、養女にされていたのだったら………
あの私に対する無関心も納得がいくわ……他人だもの………
はぁ~…冗談ごとじゃなく、私はどこの誰なのかしら?
あの人達が両親じゃなかったら………
考えたくないけど、私も、乙女ゲームのヒロインとか、それを引き立てる不憫モブとか
対抗馬としての、当て馬の可能性があるのかも………
それに…しても……私が…いなくなった…あの…国……どうなったかなぁ?……
何時の間にか…身に着けさせられていた…魔道具は全部…外されたから……ねぇ……
一番小さなステーキを食べ、具沢山スープと硬いパンを、なんとか半分食べたセシリアは、何時の間にか用意されたぶどう酒を飲んで、酔っぱらっていた。
それに気付いたグレンが、ほとんど夢の中に入り始めていたセシリアから、まだぶどう酒が入っているカップを取り上げる。
もう、その時には、目を閉じでクゥークゥーと寝息を立て始めていた。
グレンは、慌ててセシリアを抱き上げ、馬車の中に運んだコトは言うまでもない。
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