上 下
32 / 173

0031★もしかしなくても、平和なスローライフは遠い?

しおりを挟む


 あっ…すっかり忘れていたわ……奴隷を買った、本当の理由
 はぁ~…後で、貨幣価値を教えてもらわないと

 一般市民に紛れて暮らす為の、一般的な常識も欲しいわ
 出来るだけ、ロマリス王国から遠くに行きたいしね 

 そんなセシリアの内心を知らないリアは続ける。

 「だから、グレンは本能的にリアに縋ったのさ……グレンが跪いて、リアの手の甲に額を近付けて、礼を口にした時、初めてちゃんとリンクしたんだよ……ほわっと光り輝いていたからね」

 ルリの説明に、セシリアは成程という表情で頷く。

 「リアは気付いて無かっただろうけど、あれは、グレンがリアの支配をこころから受け入れた証しなんだよ…」

 「支配を受け入れる?」

 「ああ、そうさ……だから、あいつの前の名前がなんであれ……今は、リアのグレンなんだよ」

 はうわぁぁ~……リアの…今の私のグレン……って、いや…嬉しいけど……
 恥ずかしいというか……でも、グレンは私のモノかぁ……

 その言葉に、リアは再び顔が赤くなるのを自覚した。

 「リアお姉ちゃんって、グレンお兄ちゃん好きなの?」

 子供特有の遠慮のない真っ直ぐな言葉に、セシリアはきょとんとする。

 えっ…好き?……グレンを?………あぁー…うん…好きかぁ……
 恋愛っ意味では…ちょっとわからないけど……憧れてきな好きはあるわね

 だって…もの凄いイッケメンだし…声も低めでクラクラするけど………
 今更だけど、逆ハー求めるヒロインって凄いよねぇ……その心臓の強さが

 私には無理だわ……全員の好感度とかいうのを、小まめにあげるなんて無理
 妹の乙女ゲームを手伝ったところって、主に『ダンジョン』の戦闘部分だったし

 って……逃避しても、なんにも変わらないのは理解っているわ
 だいたい、ルリみたいな大型の魔獣を捕獲できたコトもおかしいし

 まして、人族と魔獣の魂の交換なんて、本来できることじゃないでしょ
 それって、それこそ神の領域のはずだし………

 グレンもルリも、同じ呪術師の実験体だったみたいだから
 そっちも気にしないと、危ないかもしれないわね

 私自身、やっとアゼリア王国の浄化の器という状態から、解放されたばかりなんだから
 もう、エイダン王太子に追放された私のコトを、探していると思うのよね

 王や王妃が、セシリア・アイリス・ハイドランジア公爵令嬢の追放の撤回
 いや、下手したら、無かったコトにして、探している可能性も捨てられないわね

 誰が好き好んで、あんな悍ましい立場に、もう一度なるわけないじゃない
 ここは、逃げるが最優先事項よねぇ………

 だから、今は恋愛なんてしている暇ないのよ
 さて、ユナにはなんて答えましょうかねぇ………

 「そうね…家族として好きよ…勿論、ユナもね…ルリやレオもみんな好きよ」

 セシリアの言葉に、ユナはにこにこする。

 「うん、ユナもみんな好き…ルリお姉ちゃんも、グレンお兄ちゃんも、レオも……でも、一番好きなのはリアお姉ちゃんだよ」

 そう言って、ユナはセシリアの腕の中で、安心して眠るレオを潰さないように抱き付く。

 「ありがとう、ユナ……とても嬉しいわ……ふふふふ」

 ルリは、ユナとリアのやり取りを黙って見ていたが、ちょっと考えてから意を決したように聞く。

 「ところで、リア……その腹に抱えている異物はなんだい?……リアが許容しているモノかい?……それとも、腹に異物があるコトは知らないのかい?」

 その言葉で、ルリにはわかるコトを知る。

 ああそうか……グレンの魂のカタチすらわかるんだもんね
 このお腹の中にある、今は龍帝の魂が宿る、元は陽の精霊王の靈石がわかるんだ

 「これは、私が自分で此処にしまったモノよ……」

 「自分で入れたモンなんだね」

 「うん…そう……まぁ…もとは怪しい大魔導師とかいうヤツに、勝手に埋め込まれたモノだけどね……ソレを、ある加工して流用したモノなの…」

 「大丈夫なのかい?……アタシでも見極められないモノだけど………」

 心配そうに言うルリに、セシリアはふふふふと嗤って言う。

 「存在としは、とても良いモノよ……だからこそ、悪者から隠さなきゃならないの……だから、ルリも守ってね……その時が来るまで……」

 本当は、平穏なスローライフが望みだけどね
 だからと言って、深い眠りに入っている、この方を好きにさせたくないのよ

 正義のヒーローならぬ…ヒロインなんて御免よ
 でも、だからと言って、見て見ぬふりも出来ないわ

 まして、あんな惨い姿をみたら…許せなかった
 たぶん、ルリもそうだろうけど……

 何らかの理由で、弱っている時を狙われたんじゃないかな
 まぁ…ルリは、妊娠していたからだろうけどね

 妊娠中に魔力が不安定になる設定は……ラノベあるあるだもんね
 あと、月齢に左右されるとか……環境に左右される…かしらね

 「ユナも頑張って守るよ……リアお姉ちゃんが大事なモノは、ユナも大事だもん」

 「まぁ…リアが守りたいモノだってんなら、アタシも全力で守るよ」

 2人からの言葉に、リアは安堵の微笑みを浮かべる。

 「ありがとう」

 いったいどのくらい、この方を隠し通せるかしらねぇ………
 まぁ…逃げ回ってみせるわよ……あんな思い、もうしたくないしね

 この方にも、あんな酷いコトさせないわよ
 はぁ~…ヒロイン枠てきなコトしたくないけど

 それでも、黙って見ていられなかったんだからしょうがないわよねぇ………
 はぁ~…本当に、平和で安穏としたスローライフが遠いわぁ……
 







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

下剋上を始めます。これは私の復讐のお話

ハルイロ
恋愛
「ごめんね。きみとこのままではいられない。」そう言われて私は大好きな婚約者に捨てられた。  アルト子爵家の一人娘のリルメリアはその天才的な魔法の才能で幼少期から魔道具の開発に携わってきた。 彼女は優しい両親の下、様々な出会いを経て幸せな学生時代を過ごす。 しかし、行方不明だった元王女の子が見つかり、今までの生活は一変。 愛する婚約者は彼女から離れ、お姫様を選んだ。 「それなら私も貴方はいらない。」 リルメリアは圧倒的な才能と財力を駆使してこの世界の頂点「聖女」になることを決意する。 「待っていなさい。私が復讐を完遂するその日まで。」 頑張り屋の天才少女が濃いキャラ達に囲まれながら、ただひたすら上を目指すお話。   *他視点あり 二部構成です。 一部は幼少期編でほのぼのと進みます 二部は復讐編、本編です。

私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!

神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話! 『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください! 投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

死に戻り公爵令嬢が嫁ぎ先の辺境で思い残したこと

Yapa
ファンタジー
ルーネ・ゼファニヤは公爵家の三女だが体が弱く、貧乏くじを押し付けられるように元戦奴で英雄の新米辺境伯ムソン・ペリシテに嫁ぐことに。 寒い地域であることが弱い体にたたり早逝してしまうが、ルーネは初夜に死に戻る。 もしもやり直せるなら、ルーネはしたいことがあったのだった。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

悪役令嬢だと気づいたので、破滅エンドの回避に入りたいと思います!

飛鳥井 真理
恋愛
入園式初日に、この世界が乙女ゲームであることに気づいてしまったカーティス公爵家のヴィヴィアン。ヒロインが成り上がる為の踏み台にされる悪役令嬢ポジなんて冗談ではありません。早速、回避させていただきます! ※ストックが無くなりましたので、不定期更新になります。 ※連載中も随時、加筆・修正をしていきますが、よろしくお願い致します。 ※ カクヨム様にも、ほぼ同時掲載しております。

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

処理中です...