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0029★隷属契約って………
しおりを挟むふんわりとした輝きが消えたのを確認し、ルリはハフッと嘆息して言う。
「ああ…やっぱり…その幼体…未熟児だったのね…よく今まで生きてたわねぇ……」
その言葉に、同じように輝きが現れて消えるのを見ていたユナが小首を傾げる。
自分の時も光り輝いたので、不思議に思い疑問が口から零れ落ちる。
「未熟児?」
ユナの疑問に、ルリが答える。
「そうだよ、その幼体は、アタシに襟首を捕まれて釣り下げられた時も、声がほとんど出て無かったろ」
「えっ…あれって…ルリにびっくりして、固まっていたんじゃないの?」
セシリアの言葉に、同じこと思っていたヤナもコクコクと頷く。
「それもあるだろうけどねぇ……声帯が育ち切っていなかったんだよ……リアに名付けられて、初めてちゃんとリンク出来たんだろうね……」
えーとぉー…リンクってなにかなぁ?
じゃなくてぇ…ちゃんと買う時に従魔の契約したよねぇ……したよね…アレ契約だよね
「えっ…だって、この子…レオとも従魔契約してるのよ?」
リアの言葉に、ルリは首を振る。
「あんなモンで、正式な従魔契約が成立するはずないだろ」
何を言っているんだいという表情で、ルリは説明する。
「所詮は、人族が低級低位の魔物を、自分達の言いなりにさせる為に作った、勝手で一方的に押し付ける隷属契約だよ……扱う者に見合ったモノしか支配できないよ」
言われてみれば、そうなのは理解るのだが、じゃあ意味は無いのかなぁ?という疑問が浮かぶ。
「人族同士や力の弱い獣人、低位低級の魔物相手なら、それでも有効ではあるよ……ただ、アタシ達みたいなのに、それは意味が無いモノだよ」
だからエサを抜いて、弱らせてから隷属契約させるんだよね
それでも、ルリみたいなのには、ほぼ無効ってことか?
なんで、ルリは捕まっちゃったのかしら?
聞かれたくなさそうだから、聞かないけどね
なんか、同じような理由で、グレンが奴隷だった理由は気かないことにしよう
ぜぇ~ったいに……その理由って、面倒ごとに繋がっているだろうし
「へぇ~…そうなんだ」
そう言いながら、ユナが入れてくれたお茶を飲む。
はぁ~…美味しい……って…どこから出したのかしら?
なんか、あの『夢の翼』の4人組が買い込みしてくれていたようだけど
全然、確認して無いんだよねぇ……そう言えば
馬車の中の半分以上、食料品とか衣料品とか、その他諸々だったのよね
はっきり言って、ルリと私とグレンとユナが雑魚寝するぐらいの空間しか無かったわ
まあ、今のルリは人化しているから、スペースにかなり余裕あるけどね
猫型の魔獣の時の体積から考えるとかなりどころじゃなく小さくなっているものね
それでも、私よりかなり大きいし、背丈だってグレンとほぼ変わらないんじゃないかな
改めて、猫系の獣人の姿をとるルリをなんとは無しに眺めていれば、ルリはさらりと重要なコトを口にする。
「そうなんだよ…だから、グレンとの契約も…不完全なモノだったんだよ………まして、中身が違がっていたからね…アタシもグレンもね」
魂と身体が正しい状態ではなかったから、一方的な隷属も不完全だったってことか
えーとぉー…そうすると、今はどういう状態なのかな?
「えっと、それじゃ…今はどうなっているの?……不完全なモノって不味い?」
リアの疑問に、ルリはふわりと優しく微笑って言う。
「アタシのはちゃんとリアとリンクできているよ……リアがアタシを『ルリ』って呼んでくれた時にね……とても暖かいモノに包まれて、気持ち良かったよ………そのお陰で、子供達も元気だよ」
そう言ってから、ルリはついでのように言う。
「グレンの方はかなりヤバかったね……アタシよりも…弱かったから、魂と身体のバランスが取れていなくて……不安定で…ほとんど壊れる寸前だったんだよ」
壊れる寸前って……人として?…それとも、存在そのものとして?
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いや、そうじゃなくて、どういう意味でなのかしら?
「えっ…そんなに不味い状態だったの?」
「ああ…そうさ…アタシとグレンじゃ…種族も力も全然違うからね……それを救ったのは、リアなんだよ」
ああ…確かにね……猫型の魔獣の成体…それも孕みと、人族の男性じゃ違いすぎるわね
生来の持っている力が、根本的に違うモノ同士だもんね
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