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0021★盗賊らしき集団に追い駆けられてます
しおりを挟むセシリアは、馬車の御者台に座り、今一心に手綱を振ってスピードを上げて走らせていた。
ちなみに、グレン・猫型の魔獣とその幼体は、馬車の中である。
そして、もう1人、獣人の子を乗せていた。
大きな耳とフッサフサの尻尾を持つ、狐の獣人の子供を買ったのだ。
ちなみに、今現在、セシリアが買った狐獣人の子供を奪おうと、盗賊と化した者達が追い駆けてきていたりする。
馬車でロマリス王国の防護壁を出てしばらくしたら、忽然と集団で現れたので、セシリアが狐獣人の子供を買うところを見ていた者達と思われる。
ただ、セシリアがデュバインに渡した魔石と宝石が、ダンジョン産の宝箱から出たモノだった為、かなりもめたのだ。
セシリアとしては、付き合ってもらったので、お礼にと思ったのだが………。
かなり高価なモノだった為、デュバインに首を振られたのだ。
困ったセシリアは、なら馬車と馬を買ってくれと頼んだ。
結果、質実剛健な馬車と、立派な軍馬を4頭買っくれたのだ。
勿論、旅に必要な食料や水もたっぷりと乗せられていた。
それでも、まだまだもらい過ぎると言うデュバイン達に、セシリアは目に付いた狐獣人の子供を指さして欲しがった。
入っている檻や服装がそれなりに整えてられていたので、高価な奴隷と判断しての要求だった。
勿論、そういうステータスになる獣人の奴隷なので、飼いたい者は結構いるようだった。
その中でも、地位を後ろ盾にして、買い叩こうとしている貴族らしい者がいたので、なんとなく、無意識の嫌がらせを込めた行動だった。
当然のことながら、セシリアにはそういう意識はなかった。
ただ、自分の意思の有無に関係なく、理不尽に生贄とされていた鬱憤から、王侯貴族らしいモノが欲しがる奴隷を、横取りしたいという無意識の要求が発現したのだ。
そう、地位をかさにして、値切って買おうとしている目の前の貴族がカンに触ったがゆえの横取り行為だった。
買った後に、面倒ごとが来るという頭は、その時のセシリアには無かった。
デュバインはデュバインで、セシリアから渡された宝石と魔石の対価に見合う何かを、もっと買わなければと思っていた時に示された要求だったので、素直に即買いにはしったのだ。
だから、デュバインは一切値切ることなく、狐獣人の子供を即座に買い取りしたのだ。
勿論、主人はセシリアで、直ぐに所有の移譲などをしてもらったことは言うまでもない。
横から搔っ攫われるようにして、自分が狙っていた狐獣人の子供を買い取られたコトが面白くない貴族が、なにやら難癖を付けて来たが、デュバインは無視した。
そんなに欲しかったなら、無茶な値切りをせずに、適正価格で買えば良いのにと言い放ち、セシリアもデュバイン同様、貴族の男を無視したのだった。
デュバインは、高額な狐獣人の子供を買って、やっと残りの宝石と魔石を受け取るコトを納得してくれたのだ。
それでも、チラリッと見たかぎり半分くらい残っていたのは確かな事実だった。
あれって、どのぐらいの価値あったのかなぁ?
気にしなくても良いのに、デュバインさん達って気が良いなぁ………
宝石や魔石の価値をちょっと考えたセシリアだが、所詮はできたての名前もまだ無い『ダンジョン』から手に入れたモノなので、別に、気にしなくても良い程度しか思っていなかったりする。
苦労らしい苦労をしないで手に入れた宝箱からのモノだったので、頓着していなかったりする。
ロマリス王国の防護壁の門を出るまで、かなり心配されたセシリアだったが、平和なスローライフを望んでいるので、あっさりと『夢の翼』の4人と別れたのだった。
そして、セシリアは買ってもらった馬車に全員を乗せて、夢の平和なスローライフを夢見て、たったとロマリス王国を逃げるようにして出たのだ。
それが、ほんの2時間ほど前のことだった。
んっもぉー…まだ追い駆けて来てる……鬱陶しいわねぇ
おかげで、ゆっくりと彼等と話せないじゃないのぉ………
とはいえ、この辺の地理にうといのよねぇ……はぁ~………
面倒だから………っと…うわぁ~…こんな時に、サンドウルフぅ~…
ふふふふ……今、物凄く良いコト思い付いちゃったぁ~……
あの追い駆けて来ている盗賊達に、なすり付けしちゃいましょう
思い付いと同時に、セシリアは最大限の魔力を込めて、隠蔽を軍馬達と馬車にかける。
そう、向かって来るサンドウルフの群れを後ろへと流す為に。
幸いなコトに、隠蔽が上手く行ったのか、サンドウルフの群れはセシリアの馬車の横を走り抜けて行く。
そのままサンドウルフの群れは、獲物が多い方へとまっしぐらに向かってくれる。
気性の荒い軍馬4頭。
馬車を曳く2頭と左右を伴奏する、ほぼフリーの軍馬2頭。
そんな危険な軍馬達の相手をしたくなかったサンドウルフの群れは、その存在がセシリアの魔法で隠蔽されたと同時に、盗賊を獲物と見定めて、盗賊を装った集団へと牙を向いたのだった。
隠蔽が効いてくれて、ラッキーだったわぁ~…はぁ~…しんどいわ
ここは、さっさとどこか休める場所を探さないとねぇ………
落ち着いたら、グレン達の状態を確認しないとだしねぇ………
それと、あの狐獣人の子供ともお話しをしたいのよねぇ………
衝動買いしちゃうなんてねぇ……はぁ~…考えなしになっているわねぇ
取り敢えず、グレンでも狐獣人の子供でも良いから、色々と聞かないと
なによりも、金銭感覚がまずわからないし………
一般常識も知りたいしねぇ……はぁ~…
夢の平和なスローライフをする為にも、どの辺が安全な国か聞かないとだし
未来の王太子妃としての知識はあっても、現実はねぇ………
いざとなったら、辺境の小さめの村っていう手もありだけど………
どの国が良いかしらねぇ……っと、オーケーオーケー………
盗賊さん達は、サンドウルフの群れに襲われて、付いて来ていないわね
もう少し走らせたら、馬達も休ませて上げて、曳くのも交代しないとね
そんなことを考えながら、セシリアは馬車を走らせ続けるのだった。
ちなみに、現在セシリアが向かっているのは、出身国としたシルーク王国である。
心配するデュバイン達に、亡くなった母親が連れていた乳母を頼るコトにすると言って、ロマリス王国の防護壁から出て来ていたりする。
実際、分岐点まではシルーク王国に向かう街道を素直に走っているセシリアの馬車だったりする。
ええ………ちゃぁ~んと、シルーク王国に向かっている街道を行くわよ
ただし、途中までだけどねぇ………そろそろ最初の三叉路なのよねぇ………
うぅ~ん……大国のゼフィランス帝国の方にでも行こうかしら
それとも、思い切って海があるコーラルージュ王国も良いわねぇ………
はぁ~…どちらにしても、悩むわぁ……遠いのよねぇ………
あとは、人口がカスッカスのところに行くか……
ひとを隠すならってコトで、多いところに行くか?
……どちらかよねぇ………後は、ご飯が美味しいところが良いわねぇ
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