悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

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0018★可愛い従魔買いました

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 食堂『ごっつもり』で満足行くまで食べたセシリアを含む一行は、今度は従魔の販売をしている区域へと出かけて来ていた。
 勿論、グレンにもちゃんとお腹いっぱい食べさせていた。

 食堂での支払いは、デュバインがしたのは言うまでもない。
 デュバインにすれば、もらい過ぎるほどもらってしまったので、セシリアにこれ以上魔石や宝石を出させないようにと、気を張っていたりする。

 当然、カリンやエルザも、セシリアがフード付きマントの内側をごそごそしないように、見張っていたコトは言うまでもない。
 そんな『夢の翼』の面々の気持ちに気付かないセシリアは、鎖に繋がれたり檻に入れられたりしている魔獣に、瞳を輝かせていた。

 うわぁぁ~…もふもふな子がいっぱいいるぅ~……触ってみたいなぁ~………
 定番の犬型や猫型………あっちは、鳥型の魔獣だぁ~………

 でも、グレンの中にいるモノの身体は無いわねぇ………
 こう……なんか………ピーンとクルもの無いのよねぇ………

 「リアさん……居ましたか?」

 デュバインの問いかけに、セシリアは首を振る。

 「これ………って………感じない………グレン……何か感じる?」

 セシリアに名前を呼ばれたグレンは首を傾げてから、キョロキョロと周囲を見回す。

 「何か…少しでも……感じるモノ…あったら…教えて…………」

 周囲を見回したあと、グレンは少し離れたところの大型の檻に入れられたサンドウルフに近寄り、グルルルと喉を鳴らす。

 と、檻の中のサンドウルフは、尻尾を股に挟み、後ずさりしながら鳴く。

 キュ~ン…グルル…ルルル………キュウ………

 グレンはしょんぼりしながら、別の檻に行き、また、同じように喉をグルルと鳴らす。

 が、やはり似たような状態になり、項垂れながら別の檻に行くを何度か繰り返した。

 その様子を観察したセシリアは、グレンを呼び戻して、呪印に手の平を当てて、再び念話を試みる。

 会話こそ成り立たないが、うっすらと大型の猫のような魔獣の姿が脳裏に走る。

 そう、セシリアは、貴女の元の身体はどんな感じのモノだったかと、問い掛けてみたのだ。

 立ち止まって、グレンの胸に手を当てたセシリアに、カレンが問い掛ける。

 「どうしたのリアさん?」

 その声に顔を上げたセシリアは、ちょっとためらってから言う。

 「………えっ……と……たぶん……大きな………ガリガリの…猫みたいな魔獣?」

 セシリアの言葉に、頷いたバウとデュバインが周辺の従魔を販売している魔物商に聞きに走る。
 そう、この辺で、痩せ細った猫型の魔獣を取り扱っていたところはないかと………。

 聞きに走るのを男2人に任せ、カレンとエルザは、周囲を警戒しつつ、もっと情報がないかセシリアに問い掛ける。

 「えーと、大きさとか特徴はないかな?」

 「そうそう……色とか……角があるとかタテガミがあるとか………」

 2人の問いかけに、読み取ったイメージを思い浮かべて言う。

 「たぶん、本当は真っ白なんじゃないかな………今は砂漠の砂の色………」

 そう無意識呟いてから、小首を傾げて言う。

 「えりもとがふっさふさでぇ………尻尾が身体の長さよりかなり長いもふもふ……」

 セシリアにの答えに、カレンが重ねて聞く。

 「大きさは?どのぐらい?………んーと……どの檻に入っている魔獣に近い?」

 聞かれて、セシリアはキョロキョロしてからひとつの檻を指さす。

 「えっと……姿……アレに近いかなぁ?……もっと大きいけど………」

 脳裏に浮かんだ姿に近い、魔獣を指さしたセシリアは、その檻に向かって行く。
 同時に、グレンも当然として付いて行く。
 勿論、カレンとエルザがその後に続く。

 あれ?……もしかして……グレンに入っている子と同種かなぁ?
 なんか…かなり近いような気が………もしかして幼体かなぁ?

 檻の前に立ち、中を覗き込めば、姿に似合わない重低音の威嚇の唸り声が響く。
 魔物商?魔獣商?の男から、今まさに買い取りしようとしている男に、その魔獣は飛びかからんばかりに威嚇している。

こだが、そんなコトお構いなしで、セシリアは檻を覗き込みながら無意識呟く。

 「ふわぁぁ~……可愛いぃぃ~……もふもふな子ぉ~……」

 猛り怒り狂ってガッシャンガッシャンと、檻の中から爪を伸ばした手を振り回す姿に、やっと販売できると思った、魔獣の販売員は焦る。

 そして、首に付けた隷属の呪具を作動させても、重低音の威嚇はやまず、檻に体当たりしだしたコトで、買い取ろうとした男は舌打ちして居なくなる。

 その姿に、魔獣の販売をしている男がガックリと肩を落として嘆く。

 「だぁぁぁぁ~……ダメかぁ~………このままじゃぁ…税金が払えない………」

 そんな中、聞き込みをしていたデュバインとバウが慌てて駆け戻って来る。

 「どうした?」

 「大丈夫か?」

 2人を振り返り、セシリアはいまだに檻の中で重低音で威嚇している猫型の魔獣を指さして言う。

 「…この子……欲しい………あと……この子…似ている…もっとおっきいけど……」

 その言葉に頷き、デュバインはさっさと買い取る為に、魔獣を販売している男と交渉しだす。

 セシリアは、檻の中で唸りながら威嚇する魔獣に手をのばし、無造作に手を入れる。
 次の瞬間、セシリアの手を猫型の魔獣が噛み付く。

 場合によっては、手そのものを失うような状態なのに、噛まれた痛みで悲鳴を上げることもなく、セシリアは齧られた手と反対の手で頭を撫でながら言う。

 「……おいで……一緒に…行こう……怖かった…ね……もう…大丈夫だよ………」

 手を齧りながら唸っていた猫型の魔獣は、しばらく唸っていたがじょじょに威嚇の声を減らし、最後には齧っていた手を舐めて、スリスリと顔を摺りつける。

 魔獣を刺激しないように、悲鳴が漏れそうな口を両手でふさいでいたカレンとエルザがヘナヘナッと座り込む。

 2人の様子に気付いたセシリアは、内心で焦っていた。

 ありゃりゃ~……刺激、強かったかぁ……この身体、痛みに強いから………
 ちょっとどころじゃなく、無頓着すぎたかなぁ………失敗しちゃった

 「ごめん…ね……びっくり……させて……痛い………慣れてるから………」

 ちょっとモゴモゴしながら、手に摺り付く猫型の魔獣を撫でるセシリアの手には、噛み傷ひとつ無かった。

 「「大丈夫なの?」」

 ハモる2人に、セシリアは苦笑いを無意識に浮かべながら答える。

 「…うん…大丈夫……もう…治癒った…から………」

 怒る気力すら無くしたカレンとエルザは、肩を竦めて、いまだに魔獣の売買の手続きをしていた。

 販売をしていた男は、何度も頭を下げながら、譲渡手続きと従魔手続きを済ませて、首輪と連動する腕輪型の魔道具と、檻の鍵を手渡す。

 ただし、全部、デュバインにではあるが………。

 そして、奴隷商の時と同様に、手続きを済ませた男は、脱兎のごとく逃げるのだった。










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