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0015★冒険者登録して奴隷を買いましょう
しおりを挟む『夢の翼』の4人組と共に、あっさりとロマリス王国の防護壁の中に入ったセシリアは、初めての異世界の市井の様子に、辺りを見回してしまう。
幸いなことに、フードを深く被っているお陰で、そこまで目立つことは無かった。
何故なら、かなりの確率でフード付きマントを着ている者が居たからである。
ただ、セシリアから見て、けして治安が良いとは思えるような場所ではなかったのは確かなコトだった。
取り敢えず、彼等のお陰で難なく入れたのは助かったわねぇ……
まずは、冒険者登録かしら?
あまり迷惑を架けたくないから、早く彼等から離れた方が良いのよねぇ………
出来れば、奴隷を手に入れるまでは、付き合って欲しいのよねぇ………
セシリアは周囲の者達から視線を送られていないコトを確認してから、小さな声で言う。
「あの……私……奴隷……欲しい……あと……冒険者登録………」
あぁ~もう……自分のコミュ症が恨めしいわぁ…………
なんか…前世よりも…かなり酷くなってる気がするわ………
セシリアの要求に、4人は顔を見合わせる。
ちょっと相談してから、冒険者ギルドへと連れて行くコトにした。
それは、セシリアが欲しいと思った奴隷が買えるようにというコトで優先されたのだ。
街中を警邏している警邏隊の者の中には、理由を付けて金品請求する者がいるからだったりする。
特に、身分証が無い者は、下手をすればあらぬ嫌疑をかけて、犯罪奴隷へと落とされることすらあり得るのだ。
その説明を受けたセシリアは、冒険者ギルドへと連れて行ってもらうコトが出来た。
そこで、ひと悶着あるかと思われたが、たまたま受け付けを担当した受付嬢が、面倒を嫌って、サクッと登録してくれたのだ。
ただし、そこでされる、登録されたばかりの初心者冒険者に対するレクチャーを、連れて来た『夢の翼』の4人に、ポイッと丸投げしてくれたのだ。
冒険者ギルドを出た『夢の翼』の4人は、胸をなでおろしながら言う。
「いやぁー…ラッキーだったなぁ………」
「本当にねぇ~……彼女が新人担当の時で良かったわ」
「ああ…こういう時には、あの性格も助かるな」
「ええ、お陰で詮索もされなければ、強制依頼という名の新人イビリもなかったもの」
そう、セシリアはラッキーなコトに、新人にはかならず1度は依頼を振ってやらせるというモノをさせられずにすんだのだ。
新人受け付け担当によっては、仮発行しかせず、幾つかの嫌われ依頼を済ませないと、ちゃんとした冒険者登録をしてくれないのだ。
だから、仮のままで、何時まで経っても最低ランクの冒険者にすらなれないというコトもあるのだ。
更にいうなら、冒険者登録には、それなりの金額がかかるのだ。
なんと言っても、登録費用が無いと、冒険者になれないシステムだった。
なるほどねぇ………この異世界は、登録費用が必要なタイプなのねぇ………
そう言えば、ネット小説にもそういう設定のあったわねぇ…………
武器も使うと壊れて行く系と、経験値で強化されていくタイプあったし………
まぁ…それは…おいおい知って行けば良いことよねぇ………
次は、奴隷ね………どんなタイプが居るのかしら………
どのくらいするモノなのかしら?お金のレートが全然理解らないわぁ………
門のところの支払いも、冒険者登録の費用も出してもらっちゃったし………
後で、こっち側で手に入れた宝箱から出たの手渡さないとねぇ………
そんなことを考えいると、カレンがセシリアに声をかける。
「リアさん…その…この辺りから奴隷販売している区域になるから………」
カレンの言葉に、セシリアは周囲を見回す。
そんなセシリアの隣りに、エルザがススッと来て小声で言う。
「欲しい奴隷が居たら、デュバインに言うのよ…自分で交渉しちゃダメよ」
2人の忠告に、セシリアは素直に頷く。
「うん……その……よろしくお願いします………」
そうして踏み込んだ区域は、奴隷を専門に販売している商業区だった。
「お店を構えている奴隷商の奴隷は売買審査が厳しいからなぁ………」
「まぁ……荷物持ちとか……慰み系なら…コッチだよなぁ………」
と、バウとデュバインが、少し声高に言い合う。
運の悪いコトに巡回中の警邏隊員が数人固まって、奴隷市の中を冷やかし金品もせびっているところに出くわしたのだ。
そういう奴隷を買いに来たという風体で、それらしい奴隷が居るところへと足を進める。
何人かの警邏隊員が、セシリアを囲みながら奴隷を見て歩くデュバイン達の様子をチラチラと見ていたのだ。
セシリアもソレに気付き、ついっと手を上げて言う。
「あの辺の奴隷なら…新しい魔法の実験に使えそうねぇ………」
その言葉に、指さされた辺りの奴隷達が悲愴感を滲ませてあとずさる。
魔法使いには、そこそこの確率で、実験台としての奴隷を求める者がいるのだ。
流石の警邏隊員も、そのセリフが聞こえて、ススゥーとフェードアウトして行く。
そういう魔法使いに目を付けられると、人知れず、実験台にされるコトがあるからだ。
ある意味でタブーが無いのが魔法使いだったりするので、下手に粘着質な魔法使いに気に入られると、厄介なコトになると知っているから…………。
イヤな視線が消えたコトで、セシリアはホッとする。
これで、居なくなったかしら?あまり注目されたくないのよねぇ………
まぁ……悍ましいコトを平気でやる魔法使いってわりといるから………
クスクス………まぁ……神官だって……ろくなのいないしねぇ………
これで、私が奴隷を買っても、難癖は付けて来ないはず………
「ちょ……リア?………」
カレンの小さな声に、セシリアはクスクスと嗤って言う。
「ああいう人達って…そういう魔法使い…怒らせたコトありそうだから………」
意気揚々と絡んだ魔法使いが、そういう魔法使いだった………とかね
うん………まだ…コッチを見ているの……うん……やっぱり…見ているわねぇ………
フフフフ………ちょっと脅そうかしらねぇ………クスクス…………
スイッと顔をそちらに向けて、風魔法で声が届くようにして、ポツリと言う。
「ふん………ハゲれば良いのに………」
同時に、ちょっと癒しとは真逆の魔法にもならない魔力を放つ。
長年、穢れや澱みをため込まされたセシリアは、その負を魔力に乗せるコトができるのだ。
セシリアの声が届いた警邏隊員の数人が、小さな悲鳴を上げて逃げて行く。
それに別の警邏隊員達が気付き、慌ててセシリア達を観察していた警邏隊員を引き摺って逃げて行く。
勿論、セシリアが放った負を込めた魔力を浴びた数人の警邏隊員の頭髪がハラハラと飛び散ったのを見た者達は多数いた。
そんなセシリアと連れだった『夢の翼』の4人の方を見ないように、露店の奴隷商達は買い物客に、手持ちの奴隷を売り込んでいた。
さながら、かかわっちゃなんねぇーだとばかりに………。
そんなセシリアに、4人は肩を竦める。
やっぱり、継母のイジメにあっていたので、性格がキツクなっているんだなと、納得するだけだった。
そして、その矛先が自分達に向かなかった幸いに、心から神に感謝していた。
「さぁーて…リアさんが望むような奴隷は居るかなぁ?」
と、気を取り直したバウが言えば、デュバインが聞く。
「んで、どういうのが良いんだ?」
聞かれたセシリアも、明確な欲しい奴隷というモノを考える。
「…えっとぉ………読み書き出来て……戦闘能力がある…丈夫な………」
と言いかけたセシリアの視線の先で、ひとりの若い男が暴れていた。
その姿はまさに野獣、躍動する獣のような姿に視線が行く。
真紅の長髪に、黄金の双眸に惹かれる。
見た目は細マッチョって感じだけど………あの人おかしくない?………
うぅ~ん………なんだろう?………オーラが歪んでいるっていうか………
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