悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

文字の大きさ
上 下
7 / 173

0006★こんなイベントありましたっけ?

しおりを挟む


 セシリアは自分好みの落ち着いたモスグリーンに灰色を混ぜたような色合いのフード付きマントを纏い、その着心地と身体を隠せるコトによる喜びを噛み締める。

 素敵……ひらひらの藤紫の裾に向かって広がるドレスが全部隠せているわ
 しっかりとした厚地なのに、とても肌触りが良くて軽い

 何か特殊な機能があるかもだけど………まっ…そんなコトどうでも良いわね
 欲しいモノが2つもゲットできたんだもの………

 当座の生活費になりそうな宝飾品もあったし………
 まぁ…外に出たら、落ち着いて鑑定しないとダメでしょうけど

 そう言えば、この乙女ゲームによく似た世界のお金と貨幣価値が判らないわ
 こうなると、ここから出たら出来るだけ早く奴隷を買わないとだわ

 少しの間、精霊のブーツとフード付きマントを手に入れた喜びを噛み締めたセシリアは、まだ探していない場所を探検する為に足を進める。

 本音を言えば、この古代遺跡を封印したいぐらいだわ
 でもって、私自身と私が許可した者以外入れなく出来たらなぁ………

 そしたら、最高の隠れ家になるんだけどなぁ………
 そういう魔法とか有ったら最高なのに………って、無理よねぇ………

 ふぅ~……とにもかくにも、目についた分のお宝だけは確保よ
 お金は、有ればあっただけ助かるんだから………

 あら……小さいと思ったら、この宝箱は全部魔石なのね………
 うん?……んん?………あらあら……もしかして魔晶石も入ってるの?

 小さいのもあるから、お金の代わりに使えそうね
 あとは、どの古代遺跡へと行くかよねぇ……

 この砂漠の地下にある古代遺跡から、別の古代遺跡に転移するコトも出来たはず
 問題は、転移した先の古代遺跡にいる魔物とかをどうかわすかよねぇ………

 一応、魔法もそれなりに習ったけど………習得が微妙なのよねぇ………
 攻撃魔法なんて、初級を発動させるのがせいぜいだし………

 治癒系も少しだから……初級ポーションとどっこいなのよねぇ………
 まぁ…あんなに、魔道具ジャラジャラと身に付けさせられていたから………

 私の本当の魔力とかって、よく判らないのよねぇ………
 なんにしても、アゼリア王国から遠く離れた国がいいわよねぇ………

 隣国のシルーク王国もいまいちだし………
 性の歓楽街が中央にデデーンとある、商業都市を持つロマリス王国もちょっとだし

 苦い顔をしながら、壁の奥に隠されていた宝箱を開ける。
 中には、ズラッとポーションの瓶が並んでいる。

 えぇ~……これってエリクサーじゃないの………それも上級だわ
 妹が課金しまくってゲットしたモノより遥かに上質だわ

 流石、古代遺跡の宝箱だわぁ~……それも色が数段濃いわ
 もしかして、これが最上級なのかしら?

 まぁ…良いわ……取り敢えず、回収よ回収……確認は後ですれば良いのよ

 セシリアは、おさめられた宝箱ごとポーション瓶をアイテムボックスへと放り込む。
 記憶にない宝箱や部屋などがあるので、怪しいと思ったところは徹底的に探すセシリアであった。

 次に入った部屋には宝箱は無かった。
 あるのは、どこぞの宗教団体のありがたい、部屋のような空間で、その中央には華美な台座があり、真球の水晶玉のようなモノがおさめられていた。

 「う~ん…こんな部屋ってあったかしら?記憶に無いんだけど………」

 そう呟いたセシリアは、取り敢えず台座に鎮座する水晶珠を手に取る。
 ずっしりとした、直径が20センチぐらいの薄い水色水晶珠は、セシリアが手に取ると、フワッと淡く光って消えてしまう。

 えっ?……えぇぇぇ~?…どういうコトぉぉぉ~?………消えちゃったけど?………
 ………じゃなくて、この古代遺跡に、こういう仕掛けなんてあったっけぇ?

 自分の覚えている、乙女ゲームの古代遺跡攻略の内容との相違にセシリアは首を傾げる。

 まぁ…いいわ……次よ、次……とにかくどんどん回収できるモノは回収しなきゃ………
 一応、護身術や魔法は習ったけど、役に立つようなモノじゃないんだから………

 自慢できそうなのは、身体強化ぐらいしかないもの………
 それだって、魔道具が外されたから使えるだけだしねぇ………

 とにかく、目についたモノは、ぜぇ~んぶいただいたいくわよ
 今世は、幼少期から今まで酷使されたんだから、あとはのんびりスローライフよ

 そして、願わくば、私でも良いという優しい人とまったりとした生活したいわ
 恋愛というモノも、してみたいしねぇ………

 燃えるような恋や愛じゃなくて良いのよ
 そこに居るのが自然というような、穏やかな陽だまりのような………

 じゃないわ、私………とにかく、別の古代遺跡に行ける魔法陣を探さなきゃ………
 何時まで経っても、この地下にある古代遺跡から出られないわ

 忘れているだけで、あの水晶珠が消えるイベントだってあったかもだし………
 やれるコトはやらないとね………

 って、思っている側から、また、水晶球が飾られている部屋にたどり着いたわ
 この部屋の水晶球も、やっぱり部屋の中央ね………

 セシリアは、淡い緋色の水晶球を台座から取り上げる。
 と、さっきと同じように、仄かに輝いた後にスゥーっと消えてしまう。


 覚えてないだけで、こういうイベントあったのかもしれないわね
 となると、後いくつ水晶球を台座から外せばいいのかしら?

 そんなコトを考えながら、セシリアは怪しそうなところを探し出しては、宝箱をゲットし、水晶球を消していった。

 「これで、9個目ぇ………」

 セシリアが台座からほんのりと紫色を帯びた水晶球を持ち上げ、その手から消失させたところで、今まで歩き回った空間の中央に、魔法陣が現れていた。
 9個目の水晶球の消失と共に、空間がキシキシという音を響かせたコトで、セシリアは慌てて水晶球が安置されていた部屋から飛び出してキョロキョロする。

 「えっ?………魔法陣?………あれ?……別の階に移動するんだっけ?」

 現れた魔法陣を見て首を傾げるが、見ていても何も変わらないので、セシリアは喉を鳴らして呟く。

 「ゴキュッ……無謀かもだけど……進まないと……流石に、寂しくなってきたわ」

 なんか、お腹も空いて来た気がするし………
 たぶん、そこそこにはお宝ゲットしたはずだし………

 「女は度胸っ………」

 そう口にして、セシリアは魔法陣の上に乗る。
 が、そのままでは何も起こらない。

 はぁ~……勝手に稼働する訳じゃないのね………
 つーと、魔力を流せば良いのかしら?
 セシリアは、深呼吸を繰り返し、ゆっくりと足元の魔法陣へと魔力を流し込んだ。
 

 









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...