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[番外編]花岡くんは大切な心を掴みたい(15話での裏側、花岡視点)
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「つーか、一年で女子にキャーキャー騒がれてるグループの目立つ方の奴? 麗しの仲ちゃんが激推しっつってんだよね。あーあ、いいよなぁー。女にチヤホヤされて超羨まし~」
「……」
「仲ちゃん、何で俺でじゃなくこんな奴の事を……。俺の方が断然顔も頭もいいしぃ。あっちだって自信あんのにー」
「……」
「そろそろ俺も胸がでけぇの女と遊びてーな。下の締まりも最っ高な━━」
隣のクラスのバスケ部員に呼ばれて体育館寄りの校舎の一階の廊下で壁に寄りかかって待っていた。余りにも退屈で時々欠伸をして肩を鳴らしていたら、「ふぅ~ん? 君があの花岡くぅんかぁ?」と声をかけられた。現れたのはバスケ部員ではなくネクタイの色からして先輩だ。
その素行の悪そうな先輩らしき男が下ネタも含んで勝手に絡んできた。童顔で目立つらしい姿から先輩同級関係なくやっかみも多い。
そういう輩には相手にはしないで無視するに限る。
「おいこら、無視すんな。なぁ、君って女選び放題ヤリまくり天国じゃんか。俺もエロい女とヤりてぇ」
「……」
「あっれー? またむっしぃ? マジスルーちゃうの? 食い付きわりぃなぁ」
にやにやといやらしく笑っている。何がおかしいのか理解したくないが、自分を小馬鹿にしてるのは俺でもわかる。
「おめぇの中学の奴におもしれー話聞いたんだけどよ、中学ん時は毎回女をヤり捨ててたんだろ? うちの中学でも噂になっててなぁ。意外と君もちゃっかりとやるねぇ~」
「……」
「俺もそのゲスい根性見習いたいわ~」
この先輩はまだまだ話足りないのか口が減らない。そろそろ聞き流すのが飽きてしまい、あいつはまだかと気にも留めないまままた欠伸をした。しかし、聞き逃せない話を急に出されてしまう。
「あの影薄そうな……何つったっけ。一之瀬? だっけか。そいつと一日中ベッタリだってな? お前マジでホモだったのかよぉ」
「……」
「気持ちわりぃ~の。女子が聞いてたら号泣だわ~」
「……」
「それにしても趣味わりぃな。よりにもよってあの陰険そうな奴かよっ。女みてーにもっと可愛い奴にしとけよ。俺だったらあんな奴が横にいたら恥ずくて歩けねぇわー」
にやにやとまた笑い出した。
「……一之瀬の悪口を言うなっ」
「ひゅ~、やっと反応したか。そんなに陰険くんが大事なんだ。ほぉ~」
一之瀬が馬鹿にされたと思いだんだんと苛ついて来たが、本気で言い返せば負けだと無言で睨み付ける。
「あー、そうだぁ。その陰険くんと仲良くしよっかな~。簡単に手懐けやすそーだし、俺がたっぷりと可愛がってやろっと」
「……っ! やめ━━」
「なぁなぁ、あいつの身体って他の女よりもいいのか? ちょっと味見してみても━━」
我慢の限界で咄嗟に先輩を教室の扉側に押し付けて胸倉を掴んだ。
「てめぇ、今すぐしめっぞ? 一之瀬に手ぇ出して見ろ。タダじゃ置かねぇっ」
「じじ、冗談だっての……っ。野郎相手にほ、本気にしねぇってぇ……」
先輩の挑発に怒りのあまりにドスの効いた声を久しぶりに出していた。胸倉を掴まれた先輩は怖気ついた様子でさっきの威勢がなく顔色が悪くなっていた。
中学の荒れてた時期以来で発した本人の自分でも驚いていた。
その瞬間だった。
──ガシャンッ
強い衝撃で目の前の教室の扉の窓ガラスが割れてしまった。散らばったガラスの破片に先輩も俺も唖然として扉をしばらく眺めていた。
騒ぎを聞き付けた先生に厳しく叱られ反省文を書かせられていた。先輩とは別室で紙と睨めっこしながら文章を考えている。
言葉を文章にするのが苦手だ。国語嫌い。苦痛になりながらも自分なりに頑張って言葉を繋ぎ合わせる。
……頭がこんがらがる。一之瀬が側に居ればやる気が……。そうだった、帰りは━━。
今日は優の家で一之瀬と優とで勉強会の約束をしていた。連絡を入れようと携帯で一之瀬に電話をかけようとしてふと指が止まる。
(居残りの理由なんて言えねぇ……)
あの一之瀬の事だ。理由を詳しく聞かれそうだ。
一之瀬が嫌な男にちょっかいかけられそうになってキレたとは言いづらい。気の短い小さい男だと思われたくない、一之瀬に余計な心配をかけたくないと頭によぎり連絡を躊躇った。
(遅くなるって連絡しないと。……しゃあねぇ、優にでも伝えとこ)
本当は一之瀬の声をいち早く一番に聞きたかった。仕方なく幼馴染である優に電話をかけた。優には事情を話して一之瀬には言わないように口止めをした。
「あ、大佑。どうかしたの? 遅いから一之瀬と先に帰ってたよ」
「俺も一之瀬と帰りたい……」
「すぐに学校から出れるのか? まだ途中だし、今から走れば間に合うんじゃないの?」
「……居残りなんだ。一之瀬と優に悪いが遅くなる」
「居残り? 何でまた」
「教室の扉のガラス割って反省文書かせられてて大苦戦中」
「はぁ……今回は何をやらかしたの?」
「んー、ちょっとな……カァッとなって先輩の胸倉を掴んでその勢いでガラスを割ってしまって……」
「もう中学生じゃないんだから、もっと理性を働かせていい加減に落ち着きなよ。中学の時も何度も何度も注意したよね?」
「うぅ……面目ねぇ……」
「でも大佑の事だ。理由もなく殴りかかろうとするはずがないのはわかっているよ。それで詳細を教えてくれない?」
「俺殴ってねぇよ! 一之瀬……一之瀬にそいつが俺への嫌がらせで手を出そうとしたから軽く脅しただけだぜ?」
「軽く、ねぇ……」
「疑うなよ!」
「前科がたっぷりとあるからね。簡単に信用が出来ないなぁ」
「う……頼むから一之瀬には絶っ対に言うなよっ」
「……」
「仲ちゃん、何で俺でじゃなくこんな奴の事を……。俺の方が断然顔も頭もいいしぃ。あっちだって自信あんのにー」
「……」
「そろそろ俺も胸がでけぇの女と遊びてーな。下の締まりも最っ高な━━」
隣のクラスのバスケ部員に呼ばれて体育館寄りの校舎の一階の廊下で壁に寄りかかって待っていた。余りにも退屈で時々欠伸をして肩を鳴らしていたら、「ふぅ~ん? 君があの花岡くぅんかぁ?」と声をかけられた。現れたのはバスケ部員ではなくネクタイの色からして先輩だ。
その素行の悪そうな先輩らしき男が下ネタも含んで勝手に絡んできた。童顔で目立つらしい姿から先輩同級関係なくやっかみも多い。
そういう輩には相手にはしないで無視するに限る。
「おいこら、無視すんな。なぁ、君って女選び放題ヤリまくり天国じゃんか。俺もエロい女とヤりてぇ」
「……」
「あっれー? またむっしぃ? マジスルーちゃうの? 食い付きわりぃなぁ」
にやにやといやらしく笑っている。何がおかしいのか理解したくないが、自分を小馬鹿にしてるのは俺でもわかる。
「おめぇの中学の奴におもしれー話聞いたんだけどよ、中学ん時は毎回女をヤり捨ててたんだろ? うちの中学でも噂になっててなぁ。意外と君もちゃっかりとやるねぇ~」
「……」
「俺もそのゲスい根性見習いたいわ~」
この先輩はまだまだ話足りないのか口が減らない。そろそろ聞き流すのが飽きてしまい、あいつはまだかと気にも留めないまままた欠伸をした。しかし、聞き逃せない話を急に出されてしまう。
「あの影薄そうな……何つったっけ。一之瀬? だっけか。そいつと一日中ベッタリだってな? お前マジでホモだったのかよぉ」
「……」
「気持ちわりぃ~の。女子が聞いてたら号泣だわ~」
「……」
「それにしても趣味わりぃな。よりにもよってあの陰険そうな奴かよっ。女みてーにもっと可愛い奴にしとけよ。俺だったらあんな奴が横にいたら恥ずくて歩けねぇわー」
にやにやとまた笑い出した。
「……一之瀬の悪口を言うなっ」
「ひゅ~、やっと反応したか。そんなに陰険くんが大事なんだ。ほぉ~」
一之瀬が馬鹿にされたと思いだんだんと苛ついて来たが、本気で言い返せば負けだと無言で睨み付ける。
「あー、そうだぁ。その陰険くんと仲良くしよっかな~。簡単に手懐けやすそーだし、俺がたっぷりと可愛がってやろっと」
「……っ! やめ━━」
「なぁなぁ、あいつの身体って他の女よりもいいのか? ちょっと味見してみても━━」
我慢の限界で咄嗟に先輩を教室の扉側に押し付けて胸倉を掴んだ。
「てめぇ、今すぐしめっぞ? 一之瀬に手ぇ出して見ろ。タダじゃ置かねぇっ」
「じじ、冗談だっての……っ。野郎相手にほ、本気にしねぇってぇ……」
先輩の挑発に怒りのあまりにドスの効いた声を久しぶりに出していた。胸倉を掴まれた先輩は怖気ついた様子でさっきの威勢がなく顔色が悪くなっていた。
中学の荒れてた時期以来で発した本人の自分でも驚いていた。
その瞬間だった。
──ガシャンッ
強い衝撃で目の前の教室の扉の窓ガラスが割れてしまった。散らばったガラスの破片に先輩も俺も唖然として扉をしばらく眺めていた。
騒ぎを聞き付けた先生に厳しく叱られ反省文を書かせられていた。先輩とは別室で紙と睨めっこしながら文章を考えている。
言葉を文章にするのが苦手だ。国語嫌い。苦痛になりながらも自分なりに頑張って言葉を繋ぎ合わせる。
……頭がこんがらがる。一之瀬が側に居ればやる気が……。そうだった、帰りは━━。
今日は優の家で一之瀬と優とで勉強会の約束をしていた。連絡を入れようと携帯で一之瀬に電話をかけようとしてふと指が止まる。
(居残りの理由なんて言えねぇ……)
あの一之瀬の事だ。理由を詳しく聞かれそうだ。
一之瀬が嫌な男にちょっかいかけられそうになってキレたとは言いづらい。気の短い小さい男だと思われたくない、一之瀬に余計な心配をかけたくないと頭によぎり連絡を躊躇った。
(遅くなるって連絡しないと。……しゃあねぇ、優にでも伝えとこ)
本当は一之瀬の声をいち早く一番に聞きたかった。仕方なく幼馴染である優に電話をかけた。優には事情を話して一之瀬には言わないように口止めをした。
「あ、大佑。どうかしたの? 遅いから一之瀬と先に帰ってたよ」
「俺も一之瀬と帰りたい……」
「すぐに学校から出れるのか? まだ途中だし、今から走れば間に合うんじゃないの?」
「……居残りなんだ。一之瀬と優に悪いが遅くなる」
「居残り? 何でまた」
「教室の扉のガラス割って反省文書かせられてて大苦戦中」
「はぁ……今回は何をやらかしたの?」
「んー、ちょっとな……カァッとなって先輩の胸倉を掴んでその勢いでガラスを割ってしまって……」
「もう中学生じゃないんだから、もっと理性を働かせていい加減に落ち着きなよ。中学の時も何度も何度も注意したよね?」
「うぅ……面目ねぇ……」
「でも大佑の事だ。理由もなく殴りかかろうとするはずがないのはわかっているよ。それで詳細を教えてくれない?」
「俺殴ってねぇよ! 一之瀬……一之瀬にそいつが俺への嫌がらせで手を出そうとしたから軽く脅しただけだぜ?」
「軽く、ねぇ……」
「疑うなよ!」
「前科がたっぷりとあるからね。簡単に信用が出来ないなぁ」
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