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受け手と贈り手

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「受け手を探そうか」
 放課後、広報部の部室には僕と滝島さんの二人がいた。僕は家から持ってきたミステリーを主題としたエンタテインメント小説の文庫本を読んでいた。滝島さんも文庫本を読んでいたが、カバーをしていたためどのような本を読んでいるのかはわからなかった。どれくらいの時間が経っただろうか。部室の扉が開く音がするや否や、東堂先輩が挨拶よりも前にそのように言ったのだ。
「東堂先輩、いきなりどうされたのですか」
 滝島さんは読んでいた文庫本をそっと閉じると、部屋に入って来る東堂先輩に問いかける。
「ああ、ごめんごめん、お疲れ。話を飛ばし過ぎたね」
 東堂先輩は僕と滝島さんの間にあった二脚の内の一脚に座ると、話を再開する。
「つまり、贈り手である落とし主を探すよりも、受け手を探す方が、早く落とし主にたどり着けるんじゃないかと思ってね。それでさっきの話さ」
 東堂先輩は僕と滝島さんの顔を交互に見た後、話を続ける。
「確かに、受け手を探してから贈り手を割り出すっているのは一見遠回りに聞こえるかもしれない。だけど、今回の出来事に関しては、受け手を優先した絞り込んだ方が、シンプルで早いと私は考えている。まとめると、今回発見された手袋から受け手の特徴を絞り込んで割り出して、そして贈り手のもとへ手袋を帰還させる。こういう手順を踏みたいと思うんだけど、どうかな。もちろん、あくまでも今回の手袋はプレゼントの可能性が高いから、手袋の存在自体を受け手に知られないようにしなければならないし、その分少しハードルは高くなるかもしれないけどね」
 手袋が受け手のことを考えて作られたものである以上、また、贈り手の情報が皆無といってもいい状況である現在において、受け手を絞り込んでいく方がいいというのが東堂先輩の提案ということだろう。
 受け手が判明すれば、人物関係から贈り手を割り出すことも十分に可能だろう。
「よし、では早速聞き込みに向かおうか」
 僕と滝島さんが了解したのを見て取ったのか、東堂先輩は席を立って廊下へと続く扉へと歩き出した。
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