13 / 18
本編
9話
しおりを挟む
ゲシっ
「イテッ!!」
おれはジンの足蹴りによって目が冷めた。
こいつ寝相悪っ!!
「おはよ!!」
「遅かったわね。」
「ご飯できましたよ。」
ジンとともに(巻き添え)リビングに向かったとき、美味しそうな匂いが鼻孔をかすめた。
どうやら女性陣はもう起きていたらしい。
「ユート、ジン、私も作ってみたんだ。美味しいといいんだけど。」
もちろんラナの作った料理がまずいなんてことはないだろう。もし不味くてもラナの手料理なら全部美味しく感じるはずだ。
「美味い!!」
出された食事を口いっぱいに頬張って言う。
これはお世辞ではなく、心からでた言葉だった。
「それで、昨日は言えなかった私のスキルについてお話します。」
そういえば食事前の挨拶のことですっかり忘れていたが、そういう約束だったな。
「私の固有スキル、異世界からの訪問者は、こことは別の世界にある物を自身の魔力と引き換えに取り寄せることができるスキルです。」
千奈は言葉を続ける。
「私はこのスキルで何度も人間族に狙われてきました。」
この世界では異世界は高度な科学技術を持った幻の国と言われていた。
そのため異世界、俺からすると前世の世界からのものを取り寄せることができる千奈は、あの権力大好きな国の上層部に狙われていたのだろう。
「まぁこのスキルのおかげでダンジョンぐらしは快適になったんですけどね。......ってすみません、こんな暗い話して!!」
「いや大丈夫だ。」
「そうだよ、大丈夫だから気にしないで。」
「二人共、ありがとうございます。
千奈が少し涙を浮かべて答える。
「あれ、僕らは?」
「もちろん、ナナとジンさんもですよ。」
なにか暖かい空気が周りにできる。
「そういえば皆さん、帰ったらどうするんですか?」
「ん、そうだな、三人は俺についてきてくれるらしいから、このまま別の場所に行くつもりだ。」
もともと旅をするためにここに来たからな。
「そうですか...じゃあこれからずっと宿ぐらしってことですよね?」
「そうだが。」
なぜ千奈はこんなことを聞いてくるのだろう?
「なら皆さん、ここにすみません?」
「は(え)???」
千奈の衝撃な言葉に俺を含めて全員唖然としている。
特にジンの豆鉄砲を食らったような顔は笑えた。
「ここのダンジョンはご覧の通り広いですし、異世界のものもあります。それにここじゃ絶対バレないしバレたとしても入ってこれません。隠れ家としては最高じゃないですか?」
確かにそうだが......
「そんな事して、千奈になんの利益があるんだ?」
「ふふっ、ただの善意だとは思わないんですね。」
当たり前だ。ただより怖いものはないというしな。
「もちろん報酬は支払ってもらいますよ。」
やっぱりな。
「報酬は......
ジンさんとナナさんをもふもふさせるということで!!!」
「...」
「実はずっと前から思ってたんですよ。2人の素晴らしい毛皮、くりくりとした目、魅惑のボディ((((」
手を口と前にかざし、くねくねとしている千奈はどっからどう見てもやばいやつだ。
「ジン...」
「ナナ...」
未だに興奮した口調で喋っている千奈を横目に、俺はジンの肩に手をおいた。
「お前と過ごしたこの2日...楽しかったよ......」
「2人のことは忘れないよ。」
「ちょっとー!!」
「待ってください!!!」
そのあと千奈にモフり倒されたナナとジンに小一時間説教された。
もちろんラナも。てっ言うかさっきも俺と一緒にふざけてたし、何なら泣き真似もしてたし、意外とノリがいいんだな。
──────────────────
意図せず(ナナとジンを生贄にして)最高の隠れ家といくつかのスキルを手に入れた俺達。
ちなみに2人は魔力多めに渡すことで機嫌を直してもらった。おれの魔力は上質で、魔物や精霊たちにとってはごちそうらしい。
「帰りはどうするの?」
「転移だと転移した場所が分からないから、このまま走っていくわ。」
「ちょうど良いスキルをもらったとこだね。」
「ですね。」
千奈に家と一緒にもらったスキルは3つ。
1つ、『ダンジョンの主』
このダンジョン内の魔物は襲いかかってこなくなる。オンオフ可能。
2つ、『隠れ家への帰り道』
世界中のどこにいても隠れ家へ一瞬で行ける。
3つ、『迷宮迷彩』
全てのダンジョン内では気配を完全に消すことができる。オンオフ可能。
どれも便利なスキルで、ここのダンジョンでは快適に暮らせそうだ。
ちなみにここの魔物を倒す許可はもうすでに千奈からもらってる。どうやら千奈も普通に料理などでここの魔物を倒していたらしい。
無慈悲だな。
「みんな、そろそろFランク層につくわよ。」
隠れ家からここまで結構な冒険者と魔物がいたが、誰一人俺達に気づくことはなかった。早速スキルの効果が出てきてるな。
魔物に至っては俺達に向かってお辞儀してたしな。
いつか倒すかもしれないのにお辞儀されると罪悪感湧くんだが......
「ここからはFランク層だから、もうスキル使わなくていいぞ。」
「「「はーい!」」」
Fランク層なら問題ないので、スキルを消して歩く。
後は自然にここから出ればいいだけ。簡単だ。
「うわぁぁぁぁ!!」
「「「「!!!」」」」
「おい、あれって......」
「嘘だろ、ここはFランク層だぞ。」
9回に上がった時、近くから悲鳴が聞こえた。
そこには血にまみれていて倒れている女性と、血塗れの斧を持ったオーガがいた。
オーガはAランクの魔物なため、普通はこんなところにいないのだ。
「どういうことだよ、千奈。」
ダンジョンマスターなら魔物をどこに出すのも自由自在だ。
でもあいつがそんなことをするやつには思えない。まぁあって一日も経ってない相手の、何が分かるのかと言われればそれまでだが。
「とりあえず助けるぞ!!」
「うん!」
考えるよりも人を助けるほうが重要だ。
「この人治せるか?」
「大丈夫。」
「オーガも普通に倒せるけど...」
「あぁ。」
この戦いは勝つか負けるかの戦いじゃない。
どうやって最低限目立たなくして勝てるかという戦いだ。
SSSランクの魔物を倒してきた俺達だ、余裕でこいつなんかは倒せる。
しかしFランク冒険者の俺らが倒せば注目を浴びることは間違いないだろう。
だけど俺達は国外追放された身だ。
ラナのためにも目立つのは避けたい。
つまり俺達は目立たつにこのオーガを倒さなきゃいけない。
あれ、これって普通に倒すより難易度高くないか?
まぁ仕方ないか。
「たぁ!!」
「火の槍」
「治癒」
結果は意外と早くに終わった。
「おい、大丈夫か!?」
「これは...」
まだ問題は山積みのようだが。
「イテッ!!」
おれはジンの足蹴りによって目が冷めた。
こいつ寝相悪っ!!
「おはよ!!」
「遅かったわね。」
「ご飯できましたよ。」
ジンとともに(巻き添え)リビングに向かったとき、美味しそうな匂いが鼻孔をかすめた。
どうやら女性陣はもう起きていたらしい。
「ユート、ジン、私も作ってみたんだ。美味しいといいんだけど。」
もちろんラナの作った料理がまずいなんてことはないだろう。もし不味くてもラナの手料理なら全部美味しく感じるはずだ。
「美味い!!」
出された食事を口いっぱいに頬張って言う。
これはお世辞ではなく、心からでた言葉だった。
「それで、昨日は言えなかった私のスキルについてお話します。」
そういえば食事前の挨拶のことですっかり忘れていたが、そういう約束だったな。
「私の固有スキル、異世界からの訪問者は、こことは別の世界にある物を自身の魔力と引き換えに取り寄せることができるスキルです。」
千奈は言葉を続ける。
「私はこのスキルで何度も人間族に狙われてきました。」
この世界では異世界は高度な科学技術を持った幻の国と言われていた。
そのため異世界、俺からすると前世の世界からのものを取り寄せることができる千奈は、あの権力大好きな国の上層部に狙われていたのだろう。
「まぁこのスキルのおかげでダンジョンぐらしは快適になったんですけどね。......ってすみません、こんな暗い話して!!」
「いや大丈夫だ。」
「そうだよ、大丈夫だから気にしないで。」
「二人共、ありがとうございます。
千奈が少し涙を浮かべて答える。
「あれ、僕らは?」
「もちろん、ナナとジンさんもですよ。」
なにか暖かい空気が周りにできる。
「そういえば皆さん、帰ったらどうするんですか?」
「ん、そうだな、三人は俺についてきてくれるらしいから、このまま別の場所に行くつもりだ。」
もともと旅をするためにここに来たからな。
「そうですか...じゃあこれからずっと宿ぐらしってことですよね?」
「そうだが。」
なぜ千奈はこんなことを聞いてくるのだろう?
「なら皆さん、ここにすみません?」
「は(え)???」
千奈の衝撃な言葉に俺を含めて全員唖然としている。
特にジンの豆鉄砲を食らったような顔は笑えた。
「ここのダンジョンはご覧の通り広いですし、異世界のものもあります。それにここじゃ絶対バレないしバレたとしても入ってこれません。隠れ家としては最高じゃないですか?」
確かにそうだが......
「そんな事して、千奈になんの利益があるんだ?」
「ふふっ、ただの善意だとは思わないんですね。」
当たり前だ。ただより怖いものはないというしな。
「もちろん報酬は支払ってもらいますよ。」
やっぱりな。
「報酬は......
ジンさんとナナさんをもふもふさせるということで!!!」
「...」
「実はずっと前から思ってたんですよ。2人の素晴らしい毛皮、くりくりとした目、魅惑のボディ((((」
手を口と前にかざし、くねくねとしている千奈はどっからどう見てもやばいやつだ。
「ジン...」
「ナナ...」
未だに興奮した口調で喋っている千奈を横目に、俺はジンの肩に手をおいた。
「お前と過ごしたこの2日...楽しかったよ......」
「2人のことは忘れないよ。」
「ちょっとー!!」
「待ってください!!!」
そのあと千奈にモフり倒されたナナとジンに小一時間説教された。
もちろんラナも。てっ言うかさっきも俺と一緒にふざけてたし、何なら泣き真似もしてたし、意外とノリがいいんだな。
──────────────────
意図せず(ナナとジンを生贄にして)最高の隠れ家といくつかのスキルを手に入れた俺達。
ちなみに2人は魔力多めに渡すことで機嫌を直してもらった。おれの魔力は上質で、魔物や精霊たちにとってはごちそうらしい。
「帰りはどうするの?」
「転移だと転移した場所が分からないから、このまま走っていくわ。」
「ちょうど良いスキルをもらったとこだね。」
「ですね。」
千奈に家と一緒にもらったスキルは3つ。
1つ、『ダンジョンの主』
このダンジョン内の魔物は襲いかかってこなくなる。オンオフ可能。
2つ、『隠れ家への帰り道』
世界中のどこにいても隠れ家へ一瞬で行ける。
3つ、『迷宮迷彩』
全てのダンジョン内では気配を完全に消すことができる。オンオフ可能。
どれも便利なスキルで、ここのダンジョンでは快適に暮らせそうだ。
ちなみにここの魔物を倒す許可はもうすでに千奈からもらってる。どうやら千奈も普通に料理などでここの魔物を倒していたらしい。
無慈悲だな。
「みんな、そろそろFランク層につくわよ。」
隠れ家からここまで結構な冒険者と魔物がいたが、誰一人俺達に気づくことはなかった。早速スキルの効果が出てきてるな。
魔物に至っては俺達に向かってお辞儀してたしな。
いつか倒すかもしれないのにお辞儀されると罪悪感湧くんだが......
「ここからはFランク層だから、もうスキル使わなくていいぞ。」
「「「はーい!」」」
Fランク層なら問題ないので、スキルを消して歩く。
後は自然にここから出ればいいだけ。簡単だ。
「うわぁぁぁぁ!!」
「「「「!!!」」」」
「おい、あれって......」
「嘘だろ、ここはFランク層だぞ。」
9回に上がった時、近くから悲鳴が聞こえた。
そこには血にまみれていて倒れている女性と、血塗れの斧を持ったオーガがいた。
オーガはAランクの魔物なため、普通はこんなところにいないのだ。
「どういうことだよ、千奈。」
ダンジョンマスターなら魔物をどこに出すのも自由自在だ。
でもあいつがそんなことをするやつには思えない。まぁあって一日も経ってない相手の、何が分かるのかと言われればそれまでだが。
「とりあえず助けるぞ!!」
「うん!」
考えるよりも人を助けるほうが重要だ。
「この人治せるか?」
「大丈夫。」
「オーガも普通に倒せるけど...」
「あぁ。」
この戦いは勝つか負けるかの戦いじゃない。
どうやって最低限目立たなくして勝てるかという戦いだ。
SSSランクの魔物を倒してきた俺達だ、余裕でこいつなんかは倒せる。
しかしFランク冒険者の俺らが倒せば注目を浴びることは間違いないだろう。
だけど俺達は国外追放された身だ。
ラナのためにも目立つのは避けたい。
つまり俺達は目立たつにこのオーガを倒さなきゃいけない。
あれ、これって普通に倒すより難易度高くないか?
まぁ仕方ないか。
「たぁ!!」
「火の槍」
「治癒」
結果は意外と早くに終わった。
「おい、大丈夫か!?」
「これは...」
まだ問題は山積みのようだが。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。
精霊に転生した少女は周りに溺愛される
紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。
それを見た神様は新たな人生を与える
親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。
果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️
初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました
富士山のぼり
恋愛
何処にでもいる普通のOLである私は事故にあって異世界に転生した。
転生先は入り婿の駄目な父親と後妻である母とその娘にいびられている令嬢だった。
でも現代日本育ちの図太い神経で平然と生きていたらいつの間にか聖女と呼ばれるようになっていた。
別にそんな事望んでなかったんだけど……。
「そんな口の利き方を私にしていいと思っている訳? 後悔するわよ。」
「下らない事はいい加減にしなさい。後悔する事になるのはあなたよ。」
強気で物事にあまり動じない系女子の異世界転生話。
※小説家になろうの方にも掲載しています。あちらが修正版です。
家族と移住した先で隠しキャラ拾いました
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」
ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。
「「「やっぱりかー」」」
すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。
日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。
しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。
ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。
前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。
「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」
前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。
そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。
まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――
婚約破棄された悪役令嬢は聖女の力を解放して自由に生きます!
白雪みなと
恋愛
王子に婚約破棄され、没落してしまった元公爵令嬢のリタ・ホーリィ。
その瞬間、自分が乙女ゲームの世界にいて、なおかつ悪役令嬢であることを思い出すリタ。
でも、リタにはゲームにはないはずの聖女の能力を宿しており――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる