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本編

8話

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「すみません!!もうダンジョンは手放すから、命だけは見逃してください!!!」

ダンジョンの最下層であり最後のボス部屋に突入した時、居たのは巫女装束を着て部屋に崩れ落ちた女性と、

何台ものゲーム機に、テレビ、こたつ、エアコン、...エトセトラ

俺は日本の家にでもワープしたのか?

作りが完全に日本家屋なのですこし違和感を感じる。

「命だけは、命だけは!!!」

女性は土下座までして命を乞うていた。

「ご主人、年端もゆかぬ女性が土下座までする様子を見て、どう思われるのですか?」

「うっせえよ。」

敬語が外れたと思えば生意気になりやがって。

父さんはそんな子供に育てた覚えはないぞ!まぁ父さんでも育てたわけでもないから当然だけど。

「落ち着いてください。私達は別にあなたの命がほしいわけではないのです。」

「そうよ、このご主人様...ユートも少し(いやかなり)おかしなところがあるけど、むやみに人を殺す人じゃないから。」

「ほ、ホントですか...」

「「もちろん(ですよ)!!」」

良かった、女性陣が説得してくれたおかげで女性はいくばくか落ち着きを取り戻していた。

「ご主人より弱い女性陣の方が役に立つとは......」

おいジンやめろ、それは普通にダメージを食らう。

あとお前腹黒だな。

「えーと、落ち着いたか?」

「はい、取り乱してすみません。あなた方が私の命を奪う気がないことは分かりました。取り敢えず、座ってください。」

彼女は落ち着きを取り戻したあと、丁重な言葉で俺達をこたつに座らせた。

やっぱ良いよなこたつ。今は夏のド真ん中だけど。

「それではあらためて自己紹介しますね。あ、みかん食べます?」

「食べる」

「わたしの名前は望月千奈と申します。種族はオラトリオ神の使いで、年齢は684歳、ジョブは戦巫女です。自己紹介はこんなとこですかね。そちらは?」

「俺はユートだ。この街に来たばっかのFランク冒険者だ。この子はラナ、あととなりの魔獣がジンとナナだ。よろしくな。」

「よろしくね!」

ラナは千奈を信用したらしく、素がでてる。

千奈もラナの可愛さに当てられて固まったまま口をパクパクとしている。

「オラトリオってあの伝説の......」

「滅びたはずじゃ...」

2人の話によると、オラトリオとは神の使い(天使ではない)であり、二百年以上前に滅びた種族らしい。

そのことについては千奈が教えてくれた。

「たしかにオラトリオの故郷、甲賀は昔に滅ぼされ、他の人たちは皆殺されました。だけど私は巫女姫だったこともあってか、城の外に逃されました。」

「そうですか......」

千奈の言葉に沈黙が漂う。

「だがお前...えっと千奈は女神イーリスの使いだろ?なのになんでこんな和風なんだ?」

おい、ジン睨むな。悪かったって。

「ユートさんの和風?というものは存じ上げませんが、私たちは女神イーリスの使徒ではないんです。私達は今はもう滅びた神、天照大御神あまてらすおおみかみ様の使徒です...いや使徒でした。」

もしかして...

「なぁ、おまe...千奈の先祖に望月千代女と言う女性はいないか?」

「え、いますけど......どうしてそれを?」

「やっぱりな。」

「「「「???」」」」

違和感の正体が分かった。

彼女たちは昔の日本に似ているんだ。(まぁ日本家屋に住んでて巫女装束着てるのに何いってんだかって話だけど。)

その証拠に日本の神である天照大御神がいるし、彼女の故郷である甲賀も実際に昔の日本に存在する。

なにより決定的なのは という女性のことだ。

彼女は昔日本で活躍していたくノ一だ。

小さい頃忍者にハマっていたので、間違いないはず。

「えーと、大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ。この人すこし......いや結構おかしいけどそれでも強いから。」

「うんうん、だから君は気にしなくて大丈夫だよ。」

なんで君たち出会ってから2日も経ってない人のことをそんなにディスれる訳?

もしかして俺のせい?(あなたが2人を雑に扱ったせいです。)

「でもユートはいい人だよ。」

ありがとう、ラナ。

ナイスフォローだ。

「とりあえずもう夜になるので、今日は止まっていってください。」

そういえばまだ一日立っていなかったな。あまりにも濃い一日だったから忘れてたわ。

「あ、先にお風呂に行かれます?」

「お風呂!?!」

──────────────────

「はぁ~気持ちよかった~」

「ですね~」

お風呂上がりで気の抜けた声が口から出る。

風呂上がりの体に牛乳が身にしみる。やっぱ風呂上がりには牛乳だろ。

そのあと入らせてもらったお風呂は、風呂というより温泉だった。しかも最高級の。

彼女によると、普段は普通のお風呂に入っているが、今回は特別らしい。お風呂場を見てみると完全に日本の風呂場だった。

少し懐かしくて涙が出たよ。

ちなみになぜこの世界に日本の物があるのかについては、後で教えてくれるらしい。

ダンジョンのS、SS、SSSランク層を攻略し、勝手にダンジョン部屋に乗りこんできたのに、家に入れてくれて泊まらせてくれてお風呂(温泉)にも入れてくれて、挙句の果てには料理までごちそうしてくれるって、すごいな。

聖人か?

忘れてたけど浴衣も貸してくれた。懐かしい。

というかこの部屋ってめちゃくちゃ広いな。

「ユート、おまたせ!!」

「ゴフッ!!」

ラナの浴衣姿に思わず牛乳を吹き出してしまう。

「汚いですよご主人。」

ジンの辛辣な言葉が気にならないくらい、ラナの浴衣姿は素晴らしかった。

白い肌に薄い桃色の浴衣があっている。特に模様も派手じゃなく、少ない所が良い。また白い帯と金色の紐がラナを表しているようだ。それに髪も素晴らしい。プラチナブロンドの髪はゆるいお団子にされていて、かんざしで止めてある。かんざしも繊細で豪華なもので、輝く髪からでも存在感がある。彼女を一言で言うと、かわいい天使女神尊いかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい...
(一言じゃないし軽くホラー)

「この人はほっといてご飯食べましょ。」

「そうね、というかあなたも主人様のあしらい方分かってきたわね。」

「えぇ。」

まって千奈も俺の扱い雑になってない?

悲しいんだけど。

でもそんな気持ちも無くなった。食卓に並んでいた米を見て。

この世界の主食はパン、または麺だけで、米というものが存在しないのだ。

いやこの体に転生してからまだ2日しか経ってないけど、今までの人生では85年と2日米がない世界にいるから、ホント久しぶりなんだよ。

しかも焼き魚に豆腐とわかめ味噌汁って定番の和食がいい。

「では皆さん、お食べください。」

「いただきます!!」

早速箸を手に取り焼き魚とご飯を口に運ぶ。ちゃんと「いただきます」は言ってからな。みんな俺には常識がないって言ってるがそんなことはないからな。

それにしてもうまい。

千奈には料理人の才覚があるんだろう。

「ん、どうした、食べないのか?」

「主人、そのいただきますって何なんですか?」

ん?

「結構長く生きてきたけど、食事の前にそんな事する人いなかったわよ。」

んん?

「私もだよ。」

んんん?

「これは私の一族に伝わる儀式です。食事をいただく事を感謝するものなんですが......どうしてあなたが?」

あーしくじった。

3人は俺が転生者であること知っているが、千奈はこのことを知らない。

その後はもう強引にごまかした。いや絶対ごまかせてないと思うけど。

なにはともあれ、この席に転生してから二日目の夜を俺は迎えた。

布団サイコー!!
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