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Episode 4
はじまりはきっかけ 4
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紬は、個室の更衣室で買ったばかりのセパレートに着替えるのだが。
「準備できた?」
「ひゃめえ!」
女同士とあって、映奈は平然とカーテンの隙間から首を突っ込んでくる。
――うぅ。一度私の裸を見てるからって、映奈ちゃん遠慮ないよぉ。
洋服と下着を持ってロッカーまで戻ってくる紬を待っていたのは、やはり着替え終わっていた映奈であった。映奈の水着は、トライバル柄のクロスブラにショートパンツという上下セパレートタイプ。色っぽさはないが、常に元気で前向きな映奈にはとても似合うアクティブでスポーティーな水着だ。
――かっ、かっこいい~~~!
その水着に見とれてしまう紬だが、そんな彼女にきょとんとした映奈が声をかける。
「どうしたの? どこか変?」
「はっ!? ご、ごめん! 似合いすぎてて、見とれちゃってた」
「あははは! ありがと。紬ちゃんも似合ってるよ」
映奈は白い水泳帽に束ねた髪をしまい、その部分だけ水泳帽が膨らんでいる。それでもまとめきれなかった髪がもみあげからひと房垂れ下がり、このアンバランスさがアクセントになっている。紬は終始映奈にドキドキさせられながらも、そんな映奈を追いかける。
ふたりが先に向かったのは、トルネードウォータースライダー。限られた空間の中で長距離流れるために高いところからトルネード状になったゆるやかなチューブの中を流れ落ちるもので、ひとりからふたり同時に流れることができる。映奈と紬はそろって流れることを選んだ。
「ほら、お先にどうぞ!」
「こ、怖いってぇ。怖いからぁ、私が映奈ちゃんの背中に抱き着くからあ!」
「大丈夫怖くないって。こういうのは勇気あるのみだよ」
「そっ、そうだよね。映奈ちゃんが認めてくれた勇気があるよねっ!」
そしてふたり同時に案内員の合図で滑り出す。チューブは下がカラー、上がクリアとなっており、飛び出す心配がないとはいえそれなりにスリルがある。勇気を出して滑り降りた紬だが、それでも恐怖のあまり絶叫して滑り落ちる。最後には盛大な水しぶきを上げて着水した。
「ひー! もう怖かった、あー怖かった! 映奈ちゃんは? あれ、映奈ちゃんどこ!?」
「こっちこっち、うしろ」
紬が振り向くと、そこにはブラトップを直す映奈の姿があった。
「いやー、そこそこ『あって』よかった。貧乳だったら恥ずかしい思いをしてるところだったよ。……いや、貧乳だったら見られて困るもんでも」
「あるよ充分!」
ふたりは次の遊泳客が着水する前にチューブの出口前を去り、次のプールへ。
映奈は人工砂浜と人工波でサーフィンを楽しみ、たまに顔面から落ちて周囲の人を心配させる。紬は水鉄砲で射的に挑戦し、過去一か月の最高スコアを叩きだしてギャラリーを作った。ビーチバレーコートもあり、それまで試合をしていた男女たちから誘われて映奈と紬も対戦することに。運動神経があまりよくない紬だが、トスでボールをネット付近まで送ることで映奈のアタックを助け続けた。
プールには売店も併設されており、食べ物はクレープにホットドッグ、飲み物は多種多様に取り揃えられている。やはり映奈はメロンソーダを、紬はブラックコーヒーを頼み、互いに注文したクレープとホットドッグを交換しながら休憩時間を満喫した。
売店から少し離れた場所にはサウナとジェットバスと水飲み場もあり、サウナ好きやお風呂好きがそれぞれを楽しんでいる。中にはサウナで我慢比べをしている少年たちもおり、映奈も飛び入り参加して勝ってしまった。紬も「テレビで特集されてた『ととのう』って感じが知りたいな」とサウナに挑戦したが、先に暑さに参って結局ととのう感覚は得られなかった。
「さて、このあとはどうしよう。もう一回ウォータースライダーに乗る?」
「うーん、どうしよ」
臼井健康センターのプール使用制限は二時間。それを超えると三十分ごとに百円の超過料金が発生する。映奈は「まあ百円だしオーバーしてもいいけど」と言ってまだ楽しみたい様子だが、紬は疲れを見せ始めた。
すると、ビーチバレーとはまた別の男性利用客が映奈に声をかけてきた。
「なっ、なあ。きみ、レイレイの八神映奈だろ?」
「えっ? そうですけど」
「じゃあさ、シャーロック・ホームズの武術習ってるってのは本当だよな。それならいっちょ、水鉄砲で襲ってみるから対応してみてくれるか?」
「おっ、『ガン・カタ』水鉄砲バージョンときますか。いいですよ、わたしも飛び道具とバーティツの相性がいいか悪いか気になってるところでした。いきましょう!」
「準備できた?」
「ひゃめえ!」
女同士とあって、映奈は平然とカーテンの隙間から首を突っ込んでくる。
――うぅ。一度私の裸を見てるからって、映奈ちゃん遠慮ないよぉ。
洋服と下着を持ってロッカーまで戻ってくる紬を待っていたのは、やはり着替え終わっていた映奈であった。映奈の水着は、トライバル柄のクロスブラにショートパンツという上下セパレートタイプ。色っぽさはないが、常に元気で前向きな映奈にはとても似合うアクティブでスポーティーな水着だ。
――かっ、かっこいい~~~!
その水着に見とれてしまう紬だが、そんな彼女にきょとんとした映奈が声をかける。
「どうしたの? どこか変?」
「はっ!? ご、ごめん! 似合いすぎてて、見とれちゃってた」
「あははは! ありがと。紬ちゃんも似合ってるよ」
映奈は白い水泳帽に束ねた髪をしまい、その部分だけ水泳帽が膨らんでいる。それでもまとめきれなかった髪がもみあげからひと房垂れ下がり、このアンバランスさがアクセントになっている。紬は終始映奈にドキドキさせられながらも、そんな映奈を追いかける。
ふたりが先に向かったのは、トルネードウォータースライダー。限られた空間の中で長距離流れるために高いところからトルネード状になったゆるやかなチューブの中を流れ落ちるもので、ひとりからふたり同時に流れることができる。映奈と紬はそろって流れることを選んだ。
「ほら、お先にどうぞ!」
「こ、怖いってぇ。怖いからぁ、私が映奈ちゃんの背中に抱き着くからあ!」
「大丈夫怖くないって。こういうのは勇気あるのみだよ」
「そっ、そうだよね。映奈ちゃんが認めてくれた勇気があるよねっ!」
そしてふたり同時に案内員の合図で滑り出す。チューブは下がカラー、上がクリアとなっており、飛び出す心配がないとはいえそれなりにスリルがある。勇気を出して滑り降りた紬だが、それでも恐怖のあまり絶叫して滑り落ちる。最後には盛大な水しぶきを上げて着水した。
「ひー! もう怖かった、あー怖かった! 映奈ちゃんは? あれ、映奈ちゃんどこ!?」
「こっちこっち、うしろ」
紬が振り向くと、そこにはブラトップを直す映奈の姿があった。
「いやー、そこそこ『あって』よかった。貧乳だったら恥ずかしい思いをしてるところだったよ。……いや、貧乳だったら見られて困るもんでも」
「あるよ充分!」
ふたりは次の遊泳客が着水する前にチューブの出口前を去り、次のプールへ。
映奈は人工砂浜と人工波でサーフィンを楽しみ、たまに顔面から落ちて周囲の人を心配させる。紬は水鉄砲で射的に挑戦し、過去一か月の最高スコアを叩きだしてギャラリーを作った。ビーチバレーコートもあり、それまで試合をしていた男女たちから誘われて映奈と紬も対戦することに。運動神経があまりよくない紬だが、トスでボールをネット付近まで送ることで映奈のアタックを助け続けた。
プールには売店も併設されており、食べ物はクレープにホットドッグ、飲み物は多種多様に取り揃えられている。やはり映奈はメロンソーダを、紬はブラックコーヒーを頼み、互いに注文したクレープとホットドッグを交換しながら休憩時間を満喫した。
売店から少し離れた場所にはサウナとジェットバスと水飲み場もあり、サウナ好きやお風呂好きがそれぞれを楽しんでいる。中にはサウナで我慢比べをしている少年たちもおり、映奈も飛び入り参加して勝ってしまった。紬も「テレビで特集されてた『ととのう』って感じが知りたいな」とサウナに挑戦したが、先に暑さに参って結局ととのう感覚は得られなかった。
「さて、このあとはどうしよう。もう一回ウォータースライダーに乗る?」
「うーん、どうしよ」
臼井健康センターのプール使用制限は二時間。それを超えると三十分ごとに百円の超過料金が発生する。映奈は「まあ百円だしオーバーしてもいいけど」と言ってまだ楽しみたい様子だが、紬は疲れを見せ始めた。
すると、ビーチバレーとはまた別の男性利用客が映奈に声をかけてきた。
「なっ、なあ。きみ、レイレイの八神映奈だろ?」
「えっ? そうですけど」
「じゃあさ、シャーロック・ホームズの武術習ってるってのは本当だよな。それならいっちょ、水鉄砲で襲ってみるから対応してみてくれるか?」
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