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番外編 鈴木和夫のお話
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しおりを挟む来なくても良いって言ってるのに女子高生はのそりと身体を木の影から現す。
セーラー服の下にあるはずのスカートは無く。純白のパンティーも見当たらない。
そこにあるのは魚の下半身だった。
滑《ぬめ》る大きな鱗に覆われ、足があるはずのとこには立派な尾びれがあった。
「人魚姫は美人のはずだ!」
考えていることがそのまま口から出てしまい、彼女は思いっきり顔を歪めた。
鮫のような歯をむき出しにしてオレを威嚇するが、石段を越えて迫ってくる気配がない。
どう考えても大ピンチだろ、オレ!
どうすんだよ。
戦うのか?戦っちゃうのか!?
オレはいつの間に異世界に転移されたんだ!?
チート能力を授かった感じもないし、主人公になった自覚もない。
オレはモブのままヤラれ役として死んでいくのか!?
この物語の主人公はどこにいるんだ!
半魚人はこちらへ来ようとはするものの、静電気を怖がるように手をこちらに伸ばしてはすぐに引っ込める仕草を繰り返す。
もしかしたらこっちに来られないのか……。
なんだよ、そういうことかよ。
半魚人は人の手が加えられた石段や門の付近には近付けないようだった。
人工物アレルギーなのだろう。
俄然強気になったオレは石段と林の境界スレスレまで近づき、鬼さんこちらよろしく往ったり来たりして半魚人をからかってやった。
徐々に怒りを溜め込んだ半魚人から腐った臭いが漂う。
そんなこと気にせずにからかって、ふと我に返る。
何やってんだよ、オレは。
コイツと遊んでる場合じゃないじゃん?
さっさとこの奇妙な状況から抜け出さなきゃじゃん?
コイツは取り合えず手出しできないようだし放置して、誰かを探さなきゃだよな。
石段に灯りがあるので玉様の家に誰かがいるとは思いたいが反応がないのでこれ以上粘っても無駄だろう。
だったらもう一度村へ戻って手あたり次第民家のドアを叩きまくるしかない。
オレが石段を下り始めると半魚人も並行して移動する。
だんだん下へ行くにつれ、オレは思った。
石段が終わってその先、道路に出たらオレはどうなるんだ、と。
アスファルトである道路は間違いなく人工物で、コイツはたぶん来られないだろうとは思うけど確証はない。
そうこう考えているうちに石灯籠まで降りてきたオレの正面に半魚人が手ぐすね引いて立ちはだかった。
しっかりとアスファルトの上に立っていた。
オレはくるりと身を翻して石段を登る。
やべぇ。
オレの推測外れまくった。
ということはだ。
袋の鼠なのはオレの方。
石段と門の辺りがオレの行動範囲。
アイツはそれ以外全部。
どうすんの。
再び上まで戻り、石段に腰掛ける。
左側からそよそよと生ぬるい魚の臭いがする。
オレは一体どこに迷い込んだんだ。
比和子ちゃんのお爺ちゃんの家で仕事していた時までは普通だったろ。
お爺ちゃんも叔父さんも希来里もおばさんたちもいて竜輝もいた。
どこでおかしくなった?
それは縁側でうたた寝が爆睡に変わって、部屋に運び込まれた時からだ。
男のオレを抱えて起こさずに布団に寝かせることは可能だろうか。
いくら二日酔い明けのオレだって流石に抱えられたら、起きる。
……悪夢を見ているのか?
そう考えても腑に落ちないことは多い。
まずこの臭いだ。
夢で臭いって有り得るか。
それにオレは石段を登った記憶がないので、夢の中で石段が再現されるっておかしくないか?
想像のものにしては出来過ぎている。
あとは門の造りだ。
オレの知識には無い古い技術が施されて造られている門はどこから出てきたんだ。
最後に半魚人。
横目で様子を窺うと相変わらず歯をむき出していた。
もしこれが夢だというならオレの希望に沿った人魚姫のはずだ。
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