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使用人会議
しおりを挟む屋敷に仕える面々が揃ったところで、注目を集めるためにメイド長がパンパンと手を鳴らした。
「皆!よく聞きなさい!また奥様とお嬢様の喧嘩が勃発しました!」
集まった使用人たちはザワザワと騒ぎ出す。
「そんなのいつものことでは?」
「その場にいたやつ可哀想だな。」
メイド長はざわめきを収めるため、再び手を鳴らした。
「よく考えてみなさい!今回は旦那様がおられません!」
「あっ!!」
そこで庭師の男が思わずと言ったふうに声を上げた。
メイド長の視線がそちらを向く。
庭師は、全員の注目を集めてしまったことで、タジタジになりながらも言葉を続けた。
「だから、、、止められる人がいないのですね。」
そこらじゅうで「あっ。」「なるほど、、、。」といった声が上がる。メイド長は深く頷くとぐるりと全員を見渡して言った。
「このような事態は初めてです。性格の似ているお二人ですし、バチバチで喧嘩を始められればどうなるか分かりません。明日には元どうりになっていれば良いのですが、負けず嫌いのお二人ですしそう上手くはいかないでしょう。」
「ならどうすればっ!」
「わたしにもお二人がどのような喧嘩をなさるのかは想像がつきません。おそらく、今までと同じような喧嘩をなさるはずです。主人たちに身内に容赦するという考えがあれば良いのですが、、、おそらく強いと分かっているからこそ逆に手加減などしないでしょう。」
メイド長は皆へ話しながら、考えられる最悪の事態を予想し、顔が真っ青になっていた。
しかし、メイド長である自分が弱気になってはいけないと自らを鼓舞し、強気な姿を皆へ見せ続ける。
近くで話を聞いていたリサはそんなメイド長を頼もしく思っていた。
「そこで、厳重な警備を敷き、近隣へ被害が及ばないようにします。物理的な直接勝負であれば誘導も可能ですが、どのような手で相手を責めるかわかりません。親子ですし、毒などは使わないと思いますが、何をやらかすか分かりませんので。」
メイド長はそこまで言って一旦区切り、後ろを振り返った。
「執事長、それでよろしいですか?」
メイド長が話しかけたのは後ろに控えていた執事長だった。
高齢な彼は表立って動きこそしないが、二十年この屋敷に勤めているメイド長よりも長くこの屋敷に仕えている大ベテランだ。
「問題ない」
そんな彼がしっかりと頷くのを確認したメイド長は、使用人たちの方へ向き直った。
「総員っ!準備に取り掛かれぇぇ!!」
「「「畏まりました!」」」
迫力ある号令に応えるように、使用人は密かに動き出した。
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