拝啓大好きな家族へ

猫狐

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デッドエンド

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暗い牢屋の中。



一人の看守が泣いていた。



手紙を読みながら、ただ、静かに。



彼女に紙とペンを渡したのは、ただの気まぐれだった。



相手は、国を震撼させた稀代の大悪女。



まだ子供といえる年で裁かれた、様々な悪事により、死刑囚となっていた。



そして、今日正午。



民衆が集まるなか、公開処刑となった。



彼女は、石や卵などを投げつけられながらも最後まで嗤っていたという。



そんな彼女がまさか、こんな手紙を残すなんて誰が考えるか。



こんな懺悔をおいて逝くなんて。



誰が想像できるか。



所詮はまだ子供だったのだ。



ああ、私達は一人の少女に何を背負わせてしまったのだろう。



こんなに幼い、ただ、家族が大好きだった少女に。



家族と彼女の間に何があったのかは知らない。



婚約者との間に何があったかも知らない。



でも、これだけはわかる。



この手紙は、懺悔は、家族への遇いに溢れている。



稀代の悪女もただの家族思いの少女であったのだ。



善悪を知らないただ純粋なだけの少女だったのだ。



彼女は誰もが当然のように受け取っている母親の愛を渇望し続けた。



もう誰からも愛されてないと思った彼女は、最後の望みである、母の愛を欲したのだ。



犯罪をおかして。



なのに、見返りはこれだ。



なんて哀れな少女なのだろう。



なんて可哀想な少女なのだろう。



彼女は捕まったとき何を思ったのか。



諦念に近い想いを抱いていたのか。



最後に婚約者のお陰で父と兄の愛に気づけた彼女は人生で一番幸せだったのだろう。



そして、人生で一番後悔していたのだろう。



涙でにじむ文字は。



しわになっているこの紙は。



血で濡れているこの机は。



この手紙を書いた彼女の心情を露にしている。



最後まで家族を愛し続けた彼女。



最後に家族以外の存在に気付いた彼女。



ならば、これを見つけた私は、どうすべきか。



そんなの決まっている。



彼女は望まないかもしれないないが、この手紙は__。



看守である男は手紙をもって歩きだした。



どうか、



どうか彼女が彼方で幸せでありますように。











時は遡り----



一週間前



曇り空の下、いつもはザーザーと響く雨音を大勢の男の声が掻き消していた。



「そっちにいったぞー」



「追え!囲い込むんだ!」



水溜まりを踏む音が徐々に小さくなり、ざわざわと揺れ喧騒に飲まれかけていた空気のなか、喜びの一声が上がった。



「対象を…捕獲しました!」



一気に場が静まりかえる。



誰もが動きを止め、呼吸の音さえ聞こえない沈黙が続いた。



その言葉を言った本人でさえ、緊張した瞬間だった。刹那、空気が大きく揺れる。



「うおおぉぉお!」



雄叫びが、響き渡った。



「よかったぁ、これで俺たちは救われる。」



「もうあいつらに仲間を殺されることはないんだ。」



「やっとだ…これで俺の家族に申し開きができる。」



三者三様、それぞれがそれぞれの思いを吐き出していく。



「よくやったぞ。対象をすぐさまこちらへ連れてこい。」



上官の声に少し落ち着きを取り戻したが、いまだ熱は冷めぬまま。誰もが勝利を、喜びあった。





「団長。対象を連れてきました。」



声から分かってはいたが、対象を発見したのは年若い青年だった。



上官へ対象を引き渡した後、彼は先輩や同期たちに囲まれ、心から嬉しそうに笑っている。



そんな中、この状況と似つかわしくない皮肉混じりの刺々しい声が僅かに聞こえた。



「これで満足?私の何もかもを奪っておいて。」



女の甲高い声でそっとささやくように。



その後も何かを言っていたが、その声は雨音で掻き消されてしまった。



その声が聞こえたのは一番近くにいた団長だけだったようだ。



彼は静かに彼女を見下ろして言った。



「先に奪ったのはそっちだろう。」



彼女の体がビクッと震える。



目深にフードを被っているため顔を見ることは出来ないが、おそらく驚いた顔をしているだろう。



まさか聞かれるとは思っていなかったというところか。



彼はそう彼女の心の内を想像し、同時に間違っていないことも確信していた。



周りがお祭り騒ぎな状態のなか、二人の間にだけ静かな空間が出来上がる。



彼女が返事をするよりも早く彼が前を見たまま彼女に尋ねた。



「抵抗は、しないのか?」



その声音には気遣うような響きがこもっていた。



彼女はそんな彼の様子を鼻で嗤う。



「今さら私が抵抗するとでも?優しい優しい団長様は罪人の気遣いまでされるようですね。」



「それはっ...__あなたがっ!」



彼は思わず、彼女の方を向いてしまった。



絶対に見ないようにしていたのに。



彼女は構わず話し続ける。



「もうお母様も捕まってしまったのでしょう?ならば、そんなもの必要ないですわ。あなたに話すようなことはありませんよ?_____愛しい婚約者様」


彼の顔を見上げまっすぐに目を射抜く。



最後の一言はそれはそれは愉しそうに言いはなった。



二人が会ったときに必ず口にする”愛しい婚約者様”という台詞。



こんな時でもそれを言う彼女から彼は目が離せなくなっていた。



見慣れた夕陽をドロリと溶かしたような瞳。



人形のように整った顔立ち。



久しぶりに近距離で見たそのどれもが変わらず美しいままだった。



昔と変わったところがあるとすれば、ド派手な化粧と顔つきくらいだろうか。



彼は幼き日の笑顔を思い浮かべ、よりいっそう後悔の念を感じていた。



「私があなたを助けられていれば…。」



ポツリと溢した言葉。



その言葉は彼女の逆鱗に触れたようだ。



彼女はキッと彼を睨み付ける。



「思い上がらないでもらえます?私は好きでやっているのです。助けるなんて烏滸がましい。」



「生まれたときからの悪人なんて存在しない。」



「あら、罪人皆にそう言って回っていますの?なんともお優しいお考えですこと。ご存じではないようなので、私が教えて差し上げますわ。そんな人たくさんそんな人間はたくさん存在します。私みたいなものは何処にでも。はぁ、団長様がそんな考えでよく……。」



「よく騎士団が成り立ったなってことか?おあいにくさま、既に堕ちたものに情けをかけたことはない。」



会話がどんどんヒートアップしていく。



回りも異常さに気づき始め、誰もが二人を見つめていた。



気づけば先程まで喜びあっていた兵たちも口をつぐみ、二人の会話だけが辺りに木霊する。



皆、二人の関係性を知っているのだ、誰も邪魔に入ろうとはしない。



「そうですか。まあどうでも良いことですけど。私にとってあなたはどうでもいい存在ですから。」



「そうだろうな。まあ、私にとってあなたは大事な存在だったが。」



「そうでしたの?全く気づきませんでしたわ。」



「あなたはいつも家族しか見ていなかった。一番近くにいた私だからこそ全部見てきたんだ。」



「ふふふっ。冗談はよしてください。」



彼は顔を歪め今にも泣き出しそうな顔をしていた。



彼女は口角を上げとても楽しそうな顔をしていた。



そんな反対の表情を浮かべる彼らに近くにいた、団長の教育係だった男は少しだけ同情を覚えていた。



歯車が一つ狂ってしまっただけで、こうも変わってしまうのか…、彼らの人生が交わることはもう二度と無いのだな…と。



周りの者たちにとって、彼女はずっと憎むべき存在だ。



だが同時に知っていた。



自分達の団長が彼女に恋い焦がれていることを。



だから彼らは、今すぐ殺してやりたい気持ちをおさえ見守るしかなかった。



「……私のことを、愛していましたか?」



唐突に、彼女はぼそりと彼に尋ねた。



先程までの威勢は何処に行ったのかというほどのしおらしさに、見ている者達の方が呆気にとられる。



その様子は道に迷った迷子のようで、十九才という年齢を感じさせる幼さを見せていた。 



彼もそんなことを聞かれるとは思わなかったのか、驚いた顔をした。



そしておもむろに彼女に近づきフードをとった。



ぱさりと音をたて背中に落とされたフードを気にせず、彼女はのろのろと顔をあげる。



雨にさらされたことで、厚く塗った化粧がどろどろと流れ落ちていく。



彼はそんな彼女の顔を服が汚れるのも厭わずに拭い、少し微笑んだ。



化粧によって印象が変わっていた顔も取れば昔のまま。



彼はその事が無償に嬉しかった。



「私は、いや俺は……。」



年に数回会うだけの関係だった。



彼女が家族に喜んでもらうため自分に会っていたことを知っていた。



彼女の頭の中に自分はいない、そう分かっていても恋い焦がれることを止められなかった。



人生で最初で最後の一目惚れだった。



彼の頭の中に思い出がフラッシュバックする。



政略的な婚約と割りきろうとしている内に彼女は悪へと落ちてしまった。



「あなたを捕まえるためだけに団長になったんだ。」



努力を告げる。



「ずっとあなたの前では透明人間の気分だった。」



苦しさを告げる。



「俺を見て欲しかった。」



想いを告げる。



「ただそれだけで良かったんだ。」



懇願を告げる。



「…っ愛して…いるんだ。」



最後に、愛を告げた。



「あなたがどれだけ人を殺そうとずっとずっと…。

毎度証拠がなくて捕まえられないことを苦々しく思いながらも、心のどこかでほっとしていた。あなたが生きてくれているだけで嬉しかった。周りから何と言われようと絶対に婚約は破棄しなかった。

あなたを、愛していたからっ!」



周りの誰もが団長の激情に呑まれていた。



普段心の内を明かさない彼にこんな想いがあったとは。誰もがそう思った。



「………そう。」



彼女はただ、震える声でそう返した。



雨に掻き消され、耳をすましていなければ聞こえないほどの声量で。



彼女は今日、初めて家族以外で、彼を認めたのだった。



「…連れていけ。」



そんな彼女を見て彼は感情を押し込めた声で部下にそう指示をだした。



お互い、もう素直に喜べるほど幼くなかった。





場面が変わる



彼女は牢屋のなかにいた。



水が漏れ出すような劣悪な環境で膝を抱え隅にうずくまっている。



そんな時、何処からかコツコツコツコツと足音が聞こえてきた。



そしてその足音は彼女の前で止まった。



「元気にしていたか?」



彼女の元に来たのは、あの時の彼だった。



「この環境で元気でしたら私はそもそも捕まりませんでしたわ。」



そう言って顔をあげた彼女の頬は痩け、女神のような美しさは汚れで曇っていた。



そんな彼女を彼は辛そうに見つめる。



今すぐ彼女を抱き締めたい衝動に駆られ手を伸ばすが、ガシャリと手が牢屋の柵に当たった音で我にかえった。



暗かったからか運良く彼女はそんな彼の様子には気付かない。



彼は自らを落ち着かせるように息を吐いた。



「私を笑いに来られたのですか?」



彼女はそんな彼の様子に気付く由もなく、己を嗤うかのように自虐の笑みを浮かべる。



「私を信じてはくれないのか?」



彼はその質問には答えず問い返した。



彼女は呆れたように首を降る。



「質問に質問で返すなんてなんて無礼な方でしょう。それだからもてないのですのよ。」



「そうだな。こんな男だから婚約者にも信じてもらえない。」



「違っそんなことは…!?」



彼女はハッとする。まさか私が嵌められてしまうなんて…。



屈辱的な思いで顔を赤くし、憎々しげに彼をにらみつけた。



彼はそんな彼女の様子を見て、くっくっと笑った。



「そんなことは…?」



声にからかいを含み、さらに一歩踏み込んでいく。



明らかに楽しんでいる様子の彼に彼女はとうとう声を荒げた。



「ふざけないでいただけますか!?今は笑える気分ではありませんので。」



二日後に殺されるというのに、正気でいられるわけないですわよ…。



そう付け足された言葉は彼には届かなかった。





お互いに無言の時間が続く。



先にその沈黙を破ったのは彼女だった。



「結局、何をしにここまで来られたのですか?」



「…そうだな。ではまず結論から言おう。」



彼はそこで一旦区切り、彼女の目を真剣に見つめた。



「ここから逃げる気はないか?」



・・・。



「………罪人には情けをかけないのではないのですか?」



彼女は、はあと大きなため息をついて彼を軽蔑の眼差しで見つめる。



そこに驚きの感情はなく、ただただ呆れていた。



「驚かないのか?」



驚かれると思っていた彼はそんな彼女の様子に逆に驚いていた。



「あなたが愛の告白をされたときから、もしかしたら…とは思っていましたので。」



でもまさか、本当に馬鹿な男に成り下がるなんて…と彼女は思っていた。



彼女は自らが言ったことすら守れない彼に対して怒りを覚えていた。



彼に開きかけていた心を閉じ、やはり家族以外は信用ならない…そう失望していた。



だが、それをわざわざ彼に伝える気はない。



「そうか。それなら返事はもう決まっているだろう。どうする?」



「どうするもなにも。そのようなこと不可能ですわ。」



「不可能じゃないとしたら?」



「あなたの言葉は信用出来ません。」



彼はやれやれとまた茶化し始めた。



「私にもう一度あのくだりをやってほしいのか?」



「…。」



「…反応してくれないと流石に傷つくのだが。」



「…。」



「悪い。私が悪かった。だから話を聞いてくれ。」



彼女がこんな状況でふざける彼を徹底的に無視しだしたので、彼は慌てて謝った。



普段茶化すようなことのない寡黙な性格の彼だからこそ、こういうときにどうすればいいか分からない。



空気を少しでも軽くしようと思い付きでやったことが完全に裏目に出ていることに気付き、慣れないことをやるものではないな…と後悔していた。



その必死さが彼女にも伝わったらしく、迷惑そうな顔をしながらも彼の方へ体を向けた。



「…説明を求めます。」



かなり不本意そうではあるが話は聞いてくれるようだ。



彼はその事に内心安堵しながらもことの次第を語り始めた。



「今日の朝、私に内密に依頼がきた。その内容は、あなたを、脱獄させてほしいというものだった。その時は依頼主が分からなかったため、いたずらと思っていたのだが…。先程、判明したためあなたに提案をしに来たわけだ。」



彼女は怪訝そうな顔をした。



「私は家族からも見捨てられているのですよ?裁判の時だってお父様たちは来られませんでしたし、そんな私を助けようとする方なんているわけないじゃないですか。」



彼女は自分が多方面から嫌われていることをよく知っていた。



そこには自らの家族すら含まれていることも。



不意に彼女の脳裏に二つの光景がフラッシュバックする。



一つは兄の婚約者を殺すのに失敗して逃げようとしたときのもの。



もう一つは家を出ていくときのもの。



婚約者の肩を抱きこちらを見あげる兄の憎しみのこもった目と、彼女に向かって叫ぶそのとき初めて聞いた父の感情的な声はいまだ鮮明に思い起こされる。



彼女はそのときのことを思い返し顔を歪めた。



二人は裁判にも来なかったので、見捨てられていることを彼女は確信している。



彼女の母は彼女と共に処刑されるので、彼女を助ける人は彼を除き存在しない。



なので、話を聞いても、彼の自作自演ではないかと疑っているのだ。



「依頼主は、」



「」



彼女は初めて真実を知った。





あっという間に二日が経ち、彼女の処刑の日が訪れた。



裁判で、彼女は彼女の母親と一緒に広場で公開処刑されることが決まっていた。



正午、彼女は、アナスタージア・リアスは、多くの人が見守るなか、十九才という短い人生を終えた。



見守る人達の中には、最前列で彼女の冥福を祈る彼もいた。



多くの犯罪を犯した稀代の悪女のあっけない結末だった。













「ん?これはなんだ…。」



その日の夜、いつも通り見回りをしていた男は不審物を発見し、中身を確認しようと手に取った__。













次の日、彼は馬車の中で昨日受け取った手紙を見ていた。



昨日亡くなった彼女が書き上げたものらしい。



中身は見ていない。



これを読んだ者が言うには、これは家族宛のものらしいからだ。



それを聞いたとき彼は、最後まで家族のことなのだな、と呆れを通り越して笑っていた。



彼のことも書いてあるそうだが、彼は、先に彼女の家族に見せる義理があると考えていた。



なので、急遽休みを取り、今、彼女の家に向かっている。



彼は彼女との最後の会話を思い出す。













「依頼主はあなたの父上である侯爵だ。」



そう告げたとき、彼女の顔に驚きが浮かんだ。



「信じ、られません…。お父様はすでに私を見捨てられています。」



信じられないといった目で彼を見つめる。



「事実だ。」



彼女が呆然として動かないので、彼はさらに情報を付け加えた。



「しかし、あなたを助けようとしていることを知ったあなたの侯爵の友人から依頼は受けないでくれと頼まれている。それで依頼主が誰か知ることが出来たんだ。」



それがなかったら、私は冷静になれないままあなたをここから連れ出していたよ…、と彼は苦笑いして言った。



彼女は衝撃から抜け出せないようでボーッと虚空を見つめている。



「あなたは父に見捨てられていると言ったが、実際はそんなことないんじゃないか?」



反応しない彼女に向かって彼はなおも言い募る。



「裁判に来なかったのも、友人に止められていけなかったんじゃないか?もしそうだと仮定すると、侯爵はずっとあなたを愛しているんじゃ___。」



「やめてください!!」



彼女は彼の言葉に耳を塞いだ。



だが彼は食い下がらない。



彼はどうしても知ってほしかった。



「やめない。あなたもその事に薄々気づいていたのではないか?」



彼女の我慢は限界に達した。



ガシャリと檻を鳴らして掴み、そこから身を乗り出すようにして悲痛そうな表情で叫んだ。



「今さら…今さらそんなこと言わないでください!気づいていたとして、どうしろと言うのですか?信じられるわけないじゃないですか!?」



彼女は経験上知っていた。



父親が自分を見るのは自分が家門に悪影響を及ぼすときだけだと。



父親は自分に関心がないのだと。



そんな父親が実は彼女を愛していたなんて到底信じることは出来なかった。



彼女自身、事件を起こすたび家が被害を被っていると知ったとき、なぜ勘当しないのかと思ったことはあった。



そんなとき、ちらりと自分のことを愛しているからではないかという考えがよぎったこともあった。



だが、あり得ないと毎度その考えに蓋をした。そのくらい父親の態度は無関心なものだったのだ。



「愛しているのならば、こちらを見てもらえたはずです!心配だってしてくれるはずです!ですがあの人は…、わたしを放置しました。」



彼女は必死になって否定する。



愛しているはずがないと。



彼女は、私を愛してくれる人は母しかいないという根底が覆されることを恐れた。



母に嫌われないため、言われるがままやって来た全てを正当化するために。



だが、彼はそれを認めない。



「侯爵はあなたを己のことよりも大切にしている。それは確かだ。」



「ならば!ならばなぜ!?」



彼女はもう錯乱状態に陥っていた。



彼は見たことのない冷静さを欠いた彼女の姿に驚きながらも、落ち着かせるように柵を掴んでいる彼女の手を取りぎゅっと握りしめ、「落ち着くんだ。」と声をかけ続ける。



彼女は手から伝わってくる温もりを感じて徐々に落ち着きを取り戻していった。



「失礼しました。少し取り乱してしまいましたわ。」



少し照れたように頬を赤く染め、気まずそうにそう言った彼女の顔にはもう動揺は見られなかった。



彼は、こんなときでも泣かないのだな…と彼女の強さに悲痛な思いを抱いたが、見て見ぬふりをすることにして、コホンっと咳払いをする。



「気にするな。では、私が侯爵の友人から伺った話を伝えよう。彼が言うには、侯爵があなたを放置した原因はあなたのお母上にあるそうだ。結婚したときに子供の教育は奥方がやることに決まり、その教育方針から侯爵は関わることが制限された。子供達に関わる全てを奥方が管理されたので、会うと甘やかすからという理由で対話を拒否され続けたようだ。」



「同じ屋敷に住んでいるのに会わないのは無理がありませんこと?」



「驚くべきことに、奥方は使用人を全て入れ替え、あなた達を屋敷の中で逐一監視することでそれを可能としたんだ。奥方抜きで侯爵と会ったことはあるか?」



彼女ははっとしたように息をのみ口に手を当てた。



「そういえば…一度もありません。」



「そういうことだ。侯爵は結婚時の契約書があるから動くことができず、元々忙しい方なので屋敷にいることも多くない。その結果、すれ違いが起きていたわけだ。」



「叱られるときは会えたのですが…。」



「恐らくだが、それは甘やかしているわけではないから、奥方も断りきれなかったのだろう。侯爵もその時だけは娘に会うことができたのでうことができたから、機会があれば叱っていたようだ。これだと、あなたが嫌われていると思って当然だな。」



彼は眉を潜め怒りを露にしている。



大人の事情に子供を巻き込んでいたことが許せないのだ。



それが彼女なので尚更。



「奥方は子供達を己に依存させていたんだ。理由は知らないが、子供であるあなたからすると迷惑な話だろう。その上、あなたの兄上が逃げたことで、執着が更に増したようだが。」



「お母様に酷い態度をとられることもあったのですが、それなのに執着していると…?」



彼女は心底不思議そうに尋ねた。



「どちらかと言えば、あなたにというよりかは理想の娘の存在に依存しているように思える。だから、理想の娘像からかけ離れたことをすれば奥方の中であなたは娘ではなくなるのではないか?まあ聞いてみないとはっきりとしないが。」



彼は気味が悪いと言い吐き捨てた。



それくらい彼女がやったことは常人には理解できないことだった。



「それは私を愛していると言えるのでしょうか…いえ、何でもないです。」



彼女は思わずと言った風に想いがあふれでたが、答えを聞くと立ち直れなくなりそうだと直感し、聞くことをやめた。



二人の間に気まずい空気が流れる。



二人とも答えが分かっていたからこそどうしようもなかった。



彼が気まずい空気をごまかすかのように話し出した。



「昔から…よく無言になっていたな。」



言った後にかなりどうでもよかったと気づいたが、言ってしまったからにはもう遅い。



彼は焦る内心を押し隠して続ける。



「私は緊張で、あなたは興味がなくで、話が続いたことは滅多になかったな…。」



「…そうですわね。」



「一度聞いたことがあっただろう?何故そんなにも家族からしか愛を求めないのか、と。」

「そうでしたっけ?」

「そうでしたか?」



「ああ、そうだ。そのときは当然のことだから、と答えられたが、今はどうだ?」



彼女は考え込むように下を向き、数秒後顔をあげたときには、その顔には寂しさが浮かんでいた。



心なしか目が潤んでいる。



彼はまた話題選びに失敗したと焦ったが、もう引き返せない。



「何ででしょうね?自分でもよくわかりません。たぶん、家族しかいないと頑なになっていたのでしょう。家族というものはですね、一番近しい存在だからこそ固執してしまうのです。何よりも大切な相手だからこそ愛してほしいと願うのです。きっと誰でも家族は特別な存在存

在だと思いますわ。」



彼女は渇いた笑みを浮かべ言った。



「世の中には殺し会うほど憎みあう親子もいるぞ?」



「そうですね。ですが、よく言いますでしょう?愛の反対は無関心って。憎むほど愛していた証拠ですわよ。」



彼は彼女の悲しそうな笑顔に引き込まれていた。



先程までとは違う全てを悟ったかのような表情。



彼女は犯罪者だ。



人を殺めるという一線を越えたものはどこか壊れる。



犯罪者であった彼女は壊れていたのではないか、そう思えるほどに美しい表情だった。



最後に全てを知って、彼女は元に戻ったのだ。彼はそう信じる。



「先程のお誘い、結構ですわ。私は多くの人を不幸にしました。公開処刑は、そんな私に相応しい結末です。」



気高く言いきった彼女を彼は止めることはできなかった。



「……了解した。」



「それと、あなたとの婚約を今ここで破棄します。」



「なぜだ!?」



彼女は驚く彼を見て笑いながら首をかしげた。



「当然でしょう?盲目的に愛してくれる婚約者を切り捨てる悪女というのは、私にお似合いの評価ですので。それに、家族がいない今、あなたは私に必要ないので。」



反論しかけた彼は彼女の最後の言葉にぐっと言葉を飲み込む。



確かにそうだ。



家族が喜ぶから彼女は婚約していたわけで、今はもう必要ない。



だが、それが理由ではないことは彼もわかっていた。



「あなたは私を守ろうとしているのか?」



寡黙な彼に上手な言葉選びなどできない。



ただ実直に聞くしかできないのだ。



彼女は呆れたように笑う。



「そんなわけないじゃないですか。今の私にとってあなたは邪魔なのですよ。」



そうだ。違う。そうだ。違う。……。



そのやり取りを何度も繰り返した結果、先に折れたのは彼だった。



「…わかった。もういいから。私はあなたを信じている。言いたかったのはただそれだけだ。」



「わかってますの?あなたは私に捨てられたのですよ?」



「私はあなたを盲目的に愛す婚約者だからな。」



「……。」



彼女の胸に後悔はなかった。



大きなテロを起こしたり、王都を火災で覆ったり…等々、数えきれないほど多くの悪事を犯した彼女だったが、全てを終わらせて死を待つだけとなった今、久しぶりに朗らかな気持ちになっていた。



「稀代の大悪女としての最後をよく見ておいてくださいね___?」

「あなたは残酷だな。愛するものの首が飛ぶ瞬間をよく見ておけだなんて。」

「だから言ってるでしょう?私は稀代の大悪女だって。」

「ああ、よくわかったよ。」



それが彼女との最後の会話だった。











「あなたは酷い人だな。」



彼は馬車に揺られながら呟いた。







久しぶりに会う侯爵はひどくやつれていた。



だが、その生気のない瞳は彼を見るなりギラギラと輝きだした。



席から立ち上がり、つかつかとこちらへと向かってくる。



不意に体が傾いた。



「何故娘を助けなかった!?」



気付くと彼は侯爵に胸ぐらを掴まれていた。



侯爵のあまりの豹変ぶりに彼は驚く。



後ろから人払いを済ませた子息がやってきた。



「父上、落ち着いてください。」



子息も憔悴しきった顔で目の下には隈ができていた。



「侯爵、これを…。」



彼はそんな二人を見て目を固く閉じ、何かを決意したような顔で目を開け手紙を差し出した。



「これは彼女が書いたものです。どうぞお読みください。」



それを聞いたとたん、目の前の二人は彼の手から手紙をひ

ったくり急いで封を破った。



わなわなと手が震えている。



「娘の…字だ。」



それだけで侯爵は嬉しかった。

















〈拝啓大好きな家族へ



ああ、ついにこの日が来ましたか。



いつかは来ると思ってたけど、意外と早かったですね。



ふふふ。まあでも、今まで赦されてたことが不思議なほどですけど。



私は、いえ、私達は、今まで散々我が儘を言ってきたから。



ずっと反抗し続けてきたから。



当然の結果ですよね。



さて、このたび筆を執ったのは、私の愛しい婚約者様が発端です。



意外に思いますでしょう?



口では愛しいと言いながらも、そんなこと全く思っていなかったのですから。



けれども、捕まったとき彼に熱烈な告白をされ、家族以外に価値があることを知りました。



彼に私が気づいていなかったことを全て教えられたのです。



なので一度、想いを書き出してみることにいたしました。



この想いは誰にも内緒です。





ついに私を見てくれなかったお母様。





これで気はすみましたか。



あなたは望むこと全てをかなえてきたのに、いつも言ってましたよね。



足りない、、、楽しくない、、、美しくないって。



不器用なお母様。



きっとあなたも知らなかったんですよね。



あなた自身が一番欲しいものを。



それはすぐ目の前にあったんですよ。



私もつい最近知ったことですけど。



私もあなたも愚かでした。



それでも願わずにはいられません。





あなたが少しだけでも前を向いていたなら、全てが変わっていたのでしょうか、と。





これで満足ですか。



何もかも失うこの状況で。



あなたが目指したものが何かは存じませんが、きっと違っているだろうこの状況で。



あなたは満たされたのですか。



初めから嫌だったのでしょうけど、あなたが望んだものは手に入れましたよ。



その代償に周りの全てを壊して。



満足感を得られなかったのなら、それはもう、今までの意味はなんだったのか無くなるくらい。



あなたに満たされてほしくて、頑張ってきた全てが、、、



全てが無駄になってしまいます。



あなたは、、、あなたは、、、あなたは。





私を、私を愛してくれましたか。





一度でも、一度だけでよかったからこっちを見てほしかった。



私はずっとずっとずっとずっと。



あなたに愛してほしかっただけなのに。



ずっとそばにいたのに、一度も気づいてくれなかったお母様。



あなたは、私が私でない時だけ私を見てくれた。



あなたの望む私で居続けるのは、嫌ではなかったのですよ。



あなたに見てもらえてる、そう思うことができたから。



私なんかが、あなたに見てもらえるのなら、それでいいはずだった。



いいはずだったのに、、、。



我儘な私でごめんなさい。



親子としての愛を望んでしまってごめんなさい。



あなたに私自身を見て欲しい、愛して欲しいと欲をかいてしまったから。



こんな結末になってしまった。



大好きなお母様。



ほんとはあなたの方が間違ってると知っていました。



これが、、、これがあなたの望んだ結末ですか。





あなたを止めなかった私を恨んで。







いつも私を叱ってくれたお父様。



あなたは幸せでしたか。



当主という絶対的な権限を持っているのに、待っていてくださったのですよね。



私達を。



私達のせいで全てを壊されたのに。



優しいあなたが、赦し続けてくれていたことを、本当は、心のどこかでわかってました。



我慢強いお父様。



私はあなたに幸せになってほしかった。



壊した張本人である私達を守って我慢し続けた結果。



あなたまで悪者になってしまっていたけども。



あなたの友人が賢い人で本当によかった。



あなたは一緒に堕ちようとしてくれたけど、止めてくださったから。



私は、あなたが悪者にならなくて本当によかったと心から思っています。



なんで私を見捨てなかったのですか。



駄目だと思っていても捨てきれなかった私をずっと叱り続けてくれた優しいお父様。



見捨てずにいてくれた優しさを裏切り続けていたのに。



笑った顔なんてもうおぼろげにしか思い出せないけど。



ずっと仰ってましたよね。



何が大切か、何をすべきなのか。



教えてくださってたけど、理解できなかった、直せなかった弱い私に。



感謝してもしきれません。



やっとやっと理解することができました。



もう遅すぎたけれども。



やっとあなたの本当の娘になれた気がします。



今でも私に期待してくれてますか。



有能なお父様。



なんでも完璧なあなたが私は大嫌いでした。



いつでも正しくて妥協を許さないお父様。



私は今でもあなたの全てが正しかったとは思えません。



でも、大好きでした。



比べられ続けたけど、その事に気づいてなんてくれなかったけれども、どうしても嫌いになれなかったです。



小さい頃から、あなたの大きな背中を見せてくれて、英才教育を受けさせてもらってたのに。



何もできなくてごめんなさい。



無能な娘で本当にごめんなさい。



私を信じようとしてくださったのに、、、



期待を裏切ってごめんなさい。



私をずっと愛してくれてたことを私はずっと気づかなかった。



確かに、あなたの愛情の示しかたは少しずれていたけども。



それでも、教えてもらうまで、、、いえ、教えてもらっても信じられなかった。



私にとってあなたは、小さい頃からずっと悪だったから。



でも違った。



あなたが叱るのは嫌いだからではなく愛してるから。



やっと気づけました。



一度も言えなかったけど。



お父様、大好きです。





あなたを、信じられなかった、傷つけた、未熟な私を一生赦さないで。









私を愛してくれたお兄様。



あなたはとても賢いから、すぐに自らの過ちに気づいていましたよね。



私と一緒だったはずなのに。



あなただけが私を私として見てくれたのです。



小さい頃から。



あなただけが私を褒めてくれた。



愛してくれていた。



とても嬉しかった。



私はそれで満足すればよかったのに。



どうしても諦められなかったモノを追い続けてしまいました。



私が強欲だから。



あなただけの愛では満足できなかったせいで。



あなたは、私をずっと救おうとしてくださっていたのですか。



あなただけは私を見捨てないでいてくれのです。



誰もが諦めた中で、最後まで必死に叫び続けてくれましたよね。



私はそれを払いのけて、あなたの大切なものを傷つけて、憎ませたのに。



あなたの最後の言葉と顔が忘れらないです。



あの憎しみと愛情がこもったあの目が。



私は知っていました。



あなたが陰で悩んでいることを。



幼い頃、仲が良かったことを忘れずにいてくれて、憎みきれないことを。



大切なものを傷つけられたのだから、憎んでしまえばいいのに。



私はそんなあなたを利用して、傷つけてしまいました。



あなたは、私の過ちを隠そうとしてくれてたのに。



実際、それに救われたこともあったのに。



なのに、裏切ってしまった私をどうか憎んでください。



大切なものを守りきれてますか。



私がお兄様を信じれなくなったのは、お兄様の一番ではなくなったからです。



もうあなたは私を愛してくれないと思い込んでしまった。



一番ではなくても、あなたはちゃんと私を見ていてくれてたことに気づかないで。



あなたは後悔しているかもしれないけど、私を選ばなかったことを後悔しないで。



私が断言します。



あなたの選択は正しい。



それで良かったのです。



大好きなお兄様。



あなたが悔やむことは何一つとしてないのです。



全て私が悪かった。



あなたは、全てを忘れて幸せになってください。



あなたにはその権利があります。



今まで損したぶん、



大切なものと共に、どうか、





どうかお幸せに。







最後に、



お母様、お父様、お兄様。



私の大好きな家族



私はただ、



普通の家族になりたかったのです。



一緒にご飯を食べて、



一緒にお出かけをして、



いってきます、いってらっしゃいを言ってみたかった。



一緒に笑って、



泣いて、



くだらないことを言い合って、



おはよう、おやすみを言ってみたかった。



願わくば、絵本のような幸せな家族になりたかったけど。



一度ぐらい体験してみたかったです。



その願いは、自らの過ちのせいでもう一生叶わないけど。



今も、



これからもずっと、





みんなのことを愛しています。

                              

 



敬具



PS:今ならあなたと幸せになる未来も楽しそうと思えます。

  

ありがとうございました。



愛しい婚約者様。

  

私のことは忘れてどうかお幸せに。〉















手紙を読み終えた瞬間、二人は崩れ落ちた。



その顔はもう涙でぐしゃぐしゃになっていて、意地もプライドもかなぐり捨てて泣いていた。



「すまない、すまない、すまない、すまない…。」



必死に謝り続けた。



彼はそんな二人を静かに見つめていた。



その時、侯爵が顔を上げた。



「娘は、貴殿の、ことを…とても、大切にしていたようだ。」



彼はその言葉に息を呑んだ。



「娘を、救ってくれて、___ありがとう。

私たちを繋げてくれてありがとう。

貴殿のお陰で、娘は、最期に家族の愛を知ることが出来たんだ。

私たち家族を、私たちの心を、繋げてくれて、



本当に、___ありがとう。」



「……。」



侯爵の感謝の言葉を聞き彼は顔を歪める。



「彼女は…」



侯爵を責める言葉はたくさん出てきた。



どうして彼女にあんなことをしたのか、どうして彼女を助けなかったのか、彼女が歪んでしまった原因はあなたにもあるのだと、そう責めてやりたかった。



だが、それではこれまでと何も変わらない。



責めたって彼女は戻ってこない。



なら、一番後悔する、一番突き刺さる言葉は___?



彼は慎重に言葉を選びながら言った。



「…最期までずっとあなた方を愛していましたよ。」



稀代の大悪女へ素晴らしき餞を。



       ~バッドエンド・オブ・ハッピーエンド~


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