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EPISODE 02・爆発的芸術と称する変態
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1996年11月31日 23:55
リーパーside
こいつら...どこかで見たことあるなと思えば、あの橋の門兵と同じ格好してやがるな...同じ組織のやつか?
「こいつぁヴァルキリーさんじゃねぇかぁ...ここになんの用で?」
と、爆弾を構えていたボマーがヘラヘラした様子でそう言ってきた。知り合いか?
「おい、なんだこいつら?」
「リーパーちゃんに分かりやすく言えば、政府の犬共だよぉ」
「ほーん、確かに分かりやすいな」
つまり俺たち殺し屋とは真反対の世界に住む住民らって訳ね。
「爆発事件の件について調査を進めていたが...やはり貴様の仕業だったか。ムスペルのボマー!」
俺が納得していると、白服集団の先頭に立つ気の入った女が、腰にかけていた一本の剣を引き抜くと、俺たちに剣先を向けてきた。
気の強い女だな。嫌いじゃねぇが、そんなに気を張りつめてばっかじゃ可愛い顔も台無しだぜ。
「おいおいぃ...俺ぁただ、テメェらが追っかけてるヨトゥンをぶっ潰そうとヤケになってんだぜ?それなのにこの仕打ちたぁひでぇな」
「問答無用。危険物を持つ奴が何を言う」
「いやそういうテメェもあぶねぇだろ、そんな剣こっちに向けやがって」
「これは人々を守るための正義の剣だ!貴様のような野蛮な獲物と一緒にしないで欲しい!」
...なんか俺抜きで話が進んでるな。
このうちにとっとと脱出したいところだが、その正義の味方さんがここまでやってきたってんなら下もおそらく...。
「ともかく、大人しく縄につけ。黒服の貴様もだ」
「え?俺?」
なんか矛先が俺に向けられた。
まぁこんなド変態と関与してるわけだ。向けられない方がおかしいんだろうが、あまりにも突然過ぎて笑えてくる。
「当たり前だ。貴様からもボマー同様、裏社会の人間なのだろう?」
「あぁそうだ...と言ったら?」
「無論、捕縛する」
「おー、おっかね」
ともかく現状は最悪と言ったところだろう。
前に白服もとい、ヴァルキリー軍団に後ろは崖、さらに地上じゃパトカーよろしく奴らのお仲間が張ってる状態だ。
こいつぁ逃走が厳しくなるな。...こいつを渡されてなかったら、の話だが。
「...おいボマー。さっき言ったの、覚えてるか?」
「あ?んだよこういう時に」
迫り来るヤツらを尻目に、俺は隣にいたボマーに耳打ちをする。
「てんびん座だ。今回のラッキーアイテムはなんだっけ?」
「...あぁ、そういうことかよ」
「貴様ら!何をコソコソと話している!逃げ場はないぞ!観念しろ!!」
俺が何を企んでるのか察したボマーは頷くのに対し、ヴァルキリーのリーダーっぽい女は声を荒らげながらじっくりと近付く。
無闇に飛んでこないのは俺たちが人を殺せる凶器を手にしているから迂闊に手を出せないんだろう。
まぁなんでもいい。この間に俺はボマーにひとつ合図を送ってやった。
「ボマー!!やれ!!」
「しゃーねぇなぁ!!」
そう言うとボマーはグローブの着いた手で拳を作り、床目掛けて思い切ってぶん殴った。
直後、奴の拳から黒い粉末状の火薬が飛び散り、俺とボマー、そしてヴァルキリーの連中全てを包み込んだ。
「っ!!」
流石はリーダーと言うべきか、俺たちが何をしたいのかいち早く察したようで、剣を構えて一瞬で距離を詰めてきたが、気付いた頃にはもう遅い。
舞い上がった黒い煙が彼女の剣によって一閃されると払われ、視界が一気に広がるものの、その頃には俺とボマーの姿はない。
「悪いが、あんたらに捕まる訳には行かないんでな!縁がありゃまた会おうぜ!!」
俺は貰ったフックショットを使い、周囲に建てられた高層ビルに突き刺しては遠心力で空を飛び、ボマーは空中で火薬を振りまき、瞬間的に爆発を起こし、その風圧と衝撃を利用して空を飛ぶという滅茶苦茶な移動法で逃走した。
スマートじゃねぇな...でもやることは器用だ。あの野郎に珍しい話だが。
「ま、待て!!」
穴の空いたビルから、リーダー格の女が何か喚き散らしているが、距離が距離なので何を言ってるのかさっぱりわからん。
でもああいう性格だ。素直に逃がしてくれやしねぇだろう。
「兄貴ぃ!!お迎えに来たっすよ!!」
言うて俺も無策というわけじゃない。あれから三十分経過してるんだ。いいタイミングで優秀な運び屋が来る時間帯だろう。
「よっと」
走るスキーのトラックの荷台の上に飛び乗った俺は、世話になったフックショットを懐にしまい、風に煽られながら遠ざかるユグドラシルを見つめる。
で、案の定というかなんというか...サイレンのような音が遠くから聞こえてきやがった。
「スキー!!最大出力で走れ!!追っ手は俺が何とかする!!」
「はいっす!!」
運転席でハンドルを強く握るスキーに合図を送ると、奴は意を覚悟した様子でアクセルを踏み切った。
途端、これまで以上にエンジンを吹かし、限界までタイヤを走らせた。古いのにここまで走れるのは手入れがいい証拠だな。
「そこのトラック!!止まりなさい!!我々には射撃許可が降りている!!」
だが奴らも負けていない。
バイクやらパトカー...のようなもんを乗った連中が拡声器を使って俺たちに警告をしてくるが、当然無視。
そこで奴らは痺れを切らしたようで、ライフルのようなものを取り出すと引き金を引いて鉛玉をぶち込んできた。
「あわわわわわわっ!!」
「怯むな!!あんたは走ってることだけ考えろ!!」
慌てているスキーに一喝を入れたところで、俺も反撃に移る。
と言ってもこいつらは政府に飼われている犬共だ。迂闊に手を出しちゃいけねぇってのはわかってるが、このまま逃げ続けても追い付かれるのが目に見えている。
なので俺は走るトラックの上で構えた拳銃の引き金を引いた。
狙いは奴らの頭...ではなく、乗ってるそれのタイヤの部分だ。
「う、撃ってきたぞ!!弾丸に_うわぁっ!!」
何か喚いてるようだが途中で聞こえなくなったな。
まぁそりゃそうか。タイヤに穴開けられてスリップしちまったら嫌でも距離が引き剥がされちまうだろうし。
「蛇行しろ!!狙いを振り切るんだ!!」
でも奴らも馬鹿じゃない。俺の狙いが足止めだとわかった瞬間、対策として蛇行運転をおっぱじめやがった。
政府の犬共がそれやっちゃ行けねぇだろ...と思いながら、俺は引き続きタイヤに銃弾をぶち込んだ。
「ちょ、直撃!!離脱する!!」
まぁ、残念だが俺にそんなもん通用しない。自分で言うのもなんだが、蛇行したところで俺の精密射撃からは難を逃れることなんざ出来やしねぇ。
「狙いが正確すぎる...!!このままじゃ全滅するぞ!!」
なーんか向こうが喚いているけど、んなもん関係ねぇ。全部タイヤに穴開けてやる。
てか全滅って人聞きの悪いこと言いやがるな。事故防止の装備付けてるっぽいし、死にはしねぇでしょ...怪我はするだろうけど。
「あ、兄貴!!前!!前!!」
「あ?」
で、追っ手の大半を倒していたら、運転していたスキーが慌てた様子で俺に言ってきた。
警告通り、前を見てみると、そこには今にも門を閉じようと手配を進めている門兵達の姿が...。
「ちっ、面倒なことしやがる...」
あんな分厚い門だ。このまま正面衝突すりゃ潰れるのなんて目に見えている。
だが不幸中の幸いというか、このスピードとあの門との距離なら...多分行けるだろ。
「おいスキー!!あんたは最高の運び屋だよなぁ!?」
「こ、こんな時に何言ってんすか!?」
「死にたくなかったら俺の合図でハンドブレーキとペダルブレーキを掛けろ!!」
「な、何をする気かわからないっすけど...策があるなら従うっす!!」
素直で結構。流石は俺が見込んだだけはある。
そうしてスキーは意を決した覚悟でハンドルを握りしめ、ギアチェンしてからアクセルをこれまで以上に踏み込んでトラックを走らせた。
いいスピードだ。気持ちいい風だぜ。
「つ、突っ込んでくるぞ!!」
「奴ら...まさか正面突破でもするつもりか!?」
向こうは俺たちが予想外の動きをして戸惑ってんのか、焦った様子が見て取れる。
そりゃびっくりするよな。俺たちが今やってんのはどうみても自殺行為のそれでしかねぇからよ。
けど、残念だが俺たちは当然そんなことするつもりはない。俺には帰る場所がある、絶対生きて帰らねぇと怒られちまうからな。
「今だ!!ハンドブレーキ!!」
「はいっす!!」
そう思ってると距離が近付いてきたのでここでハンドブレーキを掛ける。
無理な急ブレーキにトラックは耳鳴りのするブレーキ音を鳴らしながら車体の勢いを殺した。
当然感性が働いて、それに伴って車体も大きく傾くが...無論それでいい。
「ペダルを踏め!!」
「うおおおおおぉっ!!」
この勢い、角度、斜面などあらゆる箇所を計算した俺は再度スキーに合図を送り、対するスキーも気合一閃と言わんばかりの雄叫びを上げながらブレーキペダルを思い切って踏み込んだ。
直後、感性と急ブレーキの衝撃が互いに衝突し、それに耐えきれなくなったトラックは文字通り...空中へ舞った。
「.........っ!?」
たかが普通のトラックが宙を舞うなんて有り得ない話だと、門兵の連中は口を開けたまま硬直。
その隙に、荷台に乗っていた俺は奴らの操作盤に向けて銃弾2発を浴びせ、機材をお釈迦にしてやった。タイミングはトラックが空中で半回転したところが狙い目だ。
当然鉛玉は操作盤にぶち込まれ、直撃した操作盤は嫌な音を立てながら黒い煙を上げた。ありゃもう使えねぇな。
そしてトラックの方だが、門を飛び越えると一回転し、着地すると何事も無かったかのようにタイヤを走らせた。
「はぁ...!!はぁ...!!」
「よくやった。やっぱサイコーの運び屋は違ぇな」
「で、出来ることなら...これが...最後にして...ください...っすよ...」
振り切ったとはいえ、スキーに少し無理させちまったな。後で報酬に色をつけてやることにしよう。
リーパーside
こいつら...どこかで見たことあるなと思えば、あの橋の門兵と同じ格好してやがるな...同じ組織のやつか?
「こいつぁヴァルキリーさんじゃねぇかぁ...ここになんの用で?」
と、爆弾を構えていたボマーがヘラヘラした様子でそう言ってきた。知り合いか?
「おい、なんだこいつら?」
「リーパーちゃんに分かりやすく言えば、政府の犬共だよぉ」
「ほーん、確かに分かりやすいな」
つまり俺たち殺し屋とは真反対の世界に住む住民らって訳ね。
「爆発事件の件について調査を進めていたが...やはり貴様の仕業だったか。ムスペルのボマー!」
俺が納得していると、白服集団の先頭に立つ気の入った女が、腰にかけていた一本の剣を引き抜くと、俺たちに剣先を向けてきた。
気の強い女だな。嫌いじゃねぇが、そんなに気を張りつめてばっかじゃ可愛い顔も台無しだぜ。
「おいおいぃ...俺ぁただ、テメェらが追っかけてるヨトゥンをぶっ潰そうとヤケになってんだぜ?それなのにこの仕打ちたぁひでぇな」
「問答無用。危険物を持つ奴が何を言う」
「いやそういうテメェもあぶねぇだろ、そんな剣こっちに向けやがって」
「これは人々を守るための正義の剣だ!貴様のような野蛮な獲物と一緒にしないで欲しい!」
...なんか俺抜きで話が進んでるな。
このうちにとっとと脱出したいところだが、その正義の味方さんがここまでやってきたってんなら下もおそらく...。
「ともかく、大人しく縄につけ。黒服の貴様もだ」
「え?俺?」
なんか矛先が俺に向けられた。
まぁこんなド変態と関与してるわけだ。向けられない方がおかしいんだろうが、あまりにも突然過ぎて笑えてくる。
「当たり前だ。貴様からもボマー同様、裏社会の人間なのだろう?」
「あぁそうだ...と言ったら?」
「無論、捕縛する」
「おー、おっかね」
ともかく現状は最悪と言ったところだろう。
前に白服もとい、ヴァルキリー軍団に後ろは崖、さらに地上じゃパトカーよろしく奴らのお仲間が張ってる状態だ。
こいつぁ逃走が厳しくなるな。...こいつを渡されてなかったら、の話だが。
「...おいボマー。さっき言ったの、覚えてるか?」
「あ?んだよこういう時に」
迫り来るヤツらを尻目に、俺は隣にいたボマーに耳打ちをする。
「てんびん座だ。今回のラッキーアイテムはなんだっけ?」
「...あぁ、そういうことかよ」
「貴様ら!何をコソコソと話している!逃げ場はないぞ!観念しろ!!」
俺が何を企んでるのか察したボマーは頷くのに対し、ヴァルキリーのリーダーっぽい女は声を荒らげながらじっくりと近付く。
無闇に飛んでこないのは俺たちが人を殺せる凶器を手にしているから迂闊に手を出せないんだろう。
まぁなんでもいい。この間に俺はボマーにひとつ合図を送ってやった。
「ボマー!!やれ!!」
「しゃーねぇなぁ!!」
そう言うとボマーはグローブの着いた手で拳を作り、床目掛けて思い切ってぶん殴った。
直後、奴の拳から黒い粉末状の火薬が飛び散り、俺とボマー、そしてヴァルキリーの連中全てを包み込んだ。
「っ!!」
流石はリーダーと言うべきか、俺たちが何をしたいのかいち早く察したようで、剣を構えて一瞬で距離を詰めてきたが、気付いた頃にはもう遅い。
舞い上がった黒い煙が彼女の剣によって一閃されると払われ、視界が一気に広がるものの、その頃には俺とボマーの姿はない。
「悪いが、あんたらに捕まる訳には行かないんでな!縁がありゃまた会おうぜ!!」
俺は貰ったフックショットを使い、周囲に建てられた高層ビルに突き刺しては遠心力で空を飛び、ボマーは空中で火薬を振りまき、瞬間的に爆発を起こし、その風圧と衝撃を利用して空を飛ぶという滅茶苦茶な移動法で逃走した。
スマートじゃねぇな...でもやることは器用だ。あの野郎に珍しい話だが。
「ま、待て!!」
穴の空いたビルから、リーダー格の女が何か喚き散らしているが、距離が距離なので何を言ってるのかさっぱりわからん。
でもああいう性格だ。素直に逃がしてくれやしねぇだろう。
「兄貴ぃ!!お迎えに来たっすよ!!」
言うて俺も無策というわけじゃない。あれから三十分経過してるんだ。いいタイミングで優秀な運び屋が来る時間帯だろう。
「よっと」
走るスキーのトラックの荷台の上に飛び乗った俺は、世話になったフックショットを懐にしまい、風に煽られながら遠ざかるユグドラシルを見つめる。
で、案の定というかなんというか...サイレンのような音が遠くから聞こえてきやがった。
「スキー!!最大出力で走れ!!追っ手は俺が何とかする!!」
「はいっす!!」
運転席でハンドルを強く握るスキーに合図を送ると、奴は意を覚悟した様子でアクセルを踏み切った。
途端、これまで以上にエンジンを吹かし、限界までタイヤを走らせた。古いのにここまで走れるのは手入れがいい証拠だな。
「そこのトラック!!止まりなさい!!我々には射撃許可が降りている!!」
だが奴らも負けていない。
バイクやらパトカー...のようなもんを乗った連中が拡声器を使って俺たちに警告をしてくるが、当然無視。
そこで奴らは痺れを切らしたようで、ライフルのようなものを取り出すと引き金を引いて鉛玉をぶち込んできた。
「あわわわわわわっ!!」
「怯むな!!あんたは走ってることだけ考えろ!!」
慌てているスキーに一喝を入れたところで、俺も反撃に移る。
と言ってもこいつらは政府に飼われている犬共だ。迂闊に手を出しちゃいけねぇってのはわかってるが、このまま逃げ続けても追い付かれるのが目に見えている。
なので俺は走るトラックの上で構えた拳銃の引き金を引いた。
狙いは奴らの頭...ではなく、乗ってるそれのタイヤの部分だ。
「う、撃ってきたぞ!!弾丸に_うわぁっ!!」
何か喚いてるようだが途中で聞こえなくなったな。
まぁそりゃそうか。タイヤに穴開けられてスリップしちまったら嫌でも距離が引き剥がされちまうだろうし。
「蛇行しろ!!狙いを振り切るんだ!!」
でも奴らも馬鹿じゃない。俺の狙いが足止めだとわかった瞬間、対策として蛇行運転をおっぱじめやがった。
政府の犬共がそれやっちゃ行けねぇだろ...と思いながら、俺は引き続きタイヤに銃弾をぶち込んだ。
「ちょ、直撃!!離脱する!!」
まぁ、残念だが俺にそんなもん通用しない。自分で言うのもなんだが、蛇行したところで俺の精密射撃からは難を逃れることなんざ出来やしねぇ。
「狙いが正確すぎる...!!このままじゃ全滅するぞ!!」
なーんか向こうが喚いているけど、んなもん関係ねぇ。全部タイヤに穴開けてやる。
てか全滅って人聞きの悪いこと言いやがるな。事故防止の装備付けてるっぽいし、死にはしねぇでしょ...怪我はするだろうけど。
「あ、兄貴!!前!!前!!」
「あ?」
で、追っ手の大半を倒していたら、運転していたスキーが慌てた様子で俺に言ってきた。
警告通り、前を見てみると、そこには今にも門を閉じようと手配を進めている門兵達の姿が...。
「ちっ、面倒なことしやがる...」
あんな分厚い門だ。このまま正面衝突すりゃ潰れるのなんて目に見えている。
だが不幸中の幸いというか、このスピードとあの門との距離なら...多分行けるだろ。
「おいスキー!!あんたは最高の運び屋だよなぁ!?」
「こ、こんな時に何言ってんすか!?」
「死にたくなかったら俺の合図でハンドブレーキとペダルブレーキを掛けろ!!」
「な、何をする気かわからないっすけど...策があるなら従うっす!!」
素直で結構。流石は俺が見込んだだけはある。
そうしてスキーは意を決した覚悟でハンドルを握りしめ、ギアチェンしてからアクセルをこれまで以上に踏み込んでトラックを走らせた。
いいスピードだ。気持ちいい風だぜ。
「つ、突っ込んでくるぞ!!」
「奴ら...まさか正面突破でもするつもりか!?」
向こうは俺たちが予想外の動きをして戸惑ってんのか、焦った様子が見て取れる。
そりゃびっくりするよな。俺たちが今やってんのはどうみても自殺行為のそれでしかねぇからよ。
けど、残念だが俺たちは当然そんなことするつもりはない。俺には帰る場所がある、絶対生きて帰らねぇと怒られちまうからな。
「今だ!!ハンドブレーキ!!」
「はいっす!!」
そう思ってると距離が近付いてきたのでここでハンドブレーキを掛ける。
無理な急ブレーキにトラックは耳鳴りのするブレーキ音を鳴らしながら車体の勢いを殺した。
当然感性が働いて、それに伴って車体も大きく傾くが...無論それでいい。
「ペダルを踏め!!」
「うおおおおおぉっ!!」
この勢い、角度、斜面などあらゆる箇所を計算した俺は再度スキーに合図を送り、対するスキーも気合一閃と言わんばかりの雄叫びを上げながらブレーキペダルを思い切って踏み込んだ。
直後、感性と急ブレーキの衝撃が互いに衝突し、それに耐えきれなくなったトラックは文字通り...空中へ舞った。
「.........っ!?」
たかが普通のトラックが宙を舞うなんて有り得ない話だと、門兵の連中は口を開けたまま硬直。
その隙に、荷台に乗っていた俺は奴らの操作盤に向けて銃弾2発を浴びせ、機材をお釈迦にしてやった。タイミングはトラックが空中で半回転したところが狙い目だ。
当然鉛玉は操作盤にぶち込まれ、直撃した操作盤は嫌な音を立てながら黒い煙を上げた。ありゃもう使えねぇな。
そしてトラックの方だが、門を飛び越えると一回転し、着地すると何事も無かったかのようにタイヤを走らせた。
「はぁ...!!はぁ...!!」
「よくやった。やっぱサイコーの運び屋は違ぇな」
「で、出来ることなら...これが...最後にして...ください...っすよ...」
振り切ったとはいえ、スキーに少し無理させちまったな。後で報酬に色をつけてやることにしよう。
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