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EPISODE 02・爆発的芸術と称する変態
01
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1996年11月30日 22:00
リーパーside
「えー…あー…あ?」
仕事にだいぶ馴染んできた今日この頃、俺は稼いだ金である本を買い、声に出して読み上げている。
買ったものは絵本と辞書のような分厚い本。前者は言葉の読み書き練習、後者はこの世界の歴史について記されているもの。
でもそう簡単に事は進まず。あ行までは読めるようになったが、か行から複雑になり始めて苦戦を強いられている。
「お、頑張ってるね」
と、大の大人が子供用の絵本をマジな目で眺めているという至ってシュールな光景の前に、暖かいココアを持ってきたリフィアが俺の部屋に入ってきた。
「起こしちまったか?」
「いや全然。まぁ、レナはぐっすりだけどね」
「そうか…」
持ってきてもらったココアを少し飲んだ後、再び絵本と睨めっこを始める。
相変わらずか行に当たる部分がよくわからず、頭を悩ませてくるな…。
「…それにしても、レージくんって意外と努力家だよね?」
真剣に眺めていると、置かれたベッドの上に腰掛けていたリフィアが思い出したかのようにそう言ってきた。
「それは褒めてんのか?」
「当たり前じゃん」
なんか、少し引っかかる気がするものの、本人がそうと言うならそうなんだろう…。
「こうやってどんな物事でも真剣になれる人、私好きだよ?」
「…それが例え殺しに関することでも?」
「まぁ、そうだね。確かに殺しはダメだけど、そうする事で救われてる人だって少なからずいる…私はそう思ってるよ」
「…前にも言ったが、変わってんな。やっぱり」
「えへへっ、よく言われるよ」
だろうな。普通なら通報して終わるだろうに。
でも、一理はある。確かに俺がやってる事は外道のそれとは変わらないかもしれないが、そうすることで救われる人間が出てくるだろう。
「けどな。殺し屋ってのは人を喜ばせない仕事さ」
「え?」
「俺はあくまで外道が許せねぇからやってるだけで、人助けの為にやってるわけじゃねぇ。人命救助は別でやってくれって話だ」
こんな商売始めた頃から知っている。どんな理由があっても殺し屋なんてもんは政府のお偉いさんからすりゃ許されねぇ行為だ。
でもとっくに覚悟は出来ている。外道をぶっ潰せるなら人すら辞めてやる覚悟だ。でなきゃこんなもんやってられねぇ。
「…でも、君は私を救ってくれた」
「まぁ…そりゃ、あんたに救われたし?」
「あー、また出た。素直になれない悪い癖」
「るせぇ」
別にいいだろ、減るようなもんじゃねぇし。
「でももし、もしだよ?」
なんて思いながらそっぽ向いていると、リフィアが続けて問いを投げてきた。
「この世の中、君の言う外道がいなくなったらどうするの?」
「罪を償うさ。仕事とはいえ、血を浴びすぎたからな」
「そこは素直なんだね…」
苦笑いしているリフィアはさておき、こいつばかりは嘘偽りは無い。
俺も長年汚い仕事をしてきたんだ。そうでもしねぇと、死んだアイツに顔向けできない。
「まぁ、外道が居なくならないってのは多分ねぇだろうよ」
「なんでそう言い切れるの?」
「人間の欲望ってのは底が無い。それが尽きない限り、外道は生まれる。聖人なんてもんはマジで稀だぜ?」
…例えば、彩華とかな。
「………」
「ちょっと辛気くせぇ話になったな。話題を変えて地球にいた頃の話でもするか?」
「それって君が元いた場所の話?それなら聞いてみたい」
変な空気になったので話題を変えてみることにした。するとリフィアは顔を上げて、俺が提案した話題に食い付いてきた。
「あー、そうだな…。地球っつーのは…」
その夜、リフィアと地球についての話を続けた。
俺が話してるとリフィアは目を輝かせながらうんうんと頷き、興味津々って感じの様子だった。
リーパーside
「えー…あー…あ?」
仕事にだいぶ馴染んできた今日この頃、俺は稼いだ金である本を買い、声に出して読み上げている。
買ったものは絵本と辞書のような分厚い本。前者は言葉の読み書き練習、後者はこの世界の歴史について記されているもの。
でもそう簡単に事は進まず。あ行までは読めるようになったが、か行から複雑になり始めて苦戦を強いられている。
「お、頑張ってるね」
と、大の大人が子供用の絵本をマジな目で眺めているという至ってシュールな光景の前に、暖かいココアを持ってきたリフィアが俺の部屋に入ってきた。
「起こしちまったか?」
「いや全然。まぁ、レナはぐっすりだけどね」
「そうか…」
持ってきてもらったココアを少し飲んだ後、再び絵本と睨めっこを始める。
相変わらずか行に当たる部分がよくわからず、頭を悩ませてくるな…。
「…それにしても、レージくんって意外と努力家だよね?」
真剣に眺めていると、置かれたベッドの上に腰掛けていたリフィアが思い出したかのようにそう言ってきた。
「それは褒めてんのか?」
「当たり前じゃん」
なんか、少し引っかかる気がするものの、本人がそうと言うならそうなんだろう…。
「こうやってどんな物事でも真剣になれる人、私好きだよ?」
「…それが例え殺しに関することでも?」
「まぁ、そうだね。確かに殺しはダメだけど、そうする事で救われてる人だって少なからずいる…私はそう思ってるよ」
「…前にも言ったが、変わってんな。やっぱり」
「えへへっ、よく言われるよ」
だろうな。普通なら通報して終わるだろうに。
でも、一理はある。確かに俺がやってる事は外道のそれとは変わらないかもしれないが、そうすることで救われる人間が出てくるだろう。
「けどな。殺し屋ってのは人を喜ばせない仕事さ」
「え?」
「俺はあくまで外道が許せねぇからやってるだけで、人助けの為にやってるわけじゃねぇ。人命救助は別でやってくれって話だ」
こんな商売始めた頃から知っている。どんな理由があっても殺し屋なんてもんは政府のお偉いさんからすりゃ許されねぇ行為だ。
でもとっくに覚悟は出来ている。外道をぶっ潰せるなら人すら辞めてやる覚悟だ。でなきゃこんなもんやってられねぇ。
「…でも、君は私を救ってくれた」
「まぁ…そりゃ、あんたに救われたし?」
「あー、また出た。素直になれない悪い癖」
「るせぇ」
別にいいだろ、減るようなもんじゃねぇし。
「でももし、もしだよ?」
なんて思いながらそっぽ向いていると、リフィアが続けて問いを投げてきた。
「この世の中、君の言う外道がいなくなったらどうするの?」
「罪を償うさ。仕事とはいえ、血を浴びすぎたからな」
「そこは素直なんだね…」
苦笑いしているリフィアはさておき、こいつばかりは嘘偽りは無い。
俺も長年汚い仕事をしてきたんだ。そうでもしねぇと、死んだアイツに顔向けできない。
「まぁ、外道が居なくならないってのは多分ねぇだろうよ」
「なんでそう言い切れるの?」
「人間の欲望ってのは底が無い。それが尽きない限り、外道は生まれる。聖人なんてもんはマジで稀だぜ?」
…例えば、彩華とかな。
「………」
「ちょっと辛気くせぇ話になったな。話題を変えて地球にいた頃の話でもするか?」
「それって君が元いた場所の話?それなら聞いてみたい」
変な空気になったので話題を変えてみることにした。するとリフィアは顔を上げて、俺が提案した話題に食い付いてきた。
「あー、そうだな…。地球っつーのは…」
その夜、リフィアと地球についての話を続けた。
俺が話してるとリフィアは目を輝かせながらうんうんと頷き、興味津々って感じの様子だった。
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