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EPISODE 01・薬に溺れた男
05
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1996年10月08日 22:55
リーパーside
「剣はそんなに得意じゃないんだ。手加減してくれよ?」
武術に関してはガキの頃、クソジジイのクソみてぇな特訓のお陰である程度精通してる。だから別に剣が使えない、なんてことは一言も言っていない。
でも剣は比較的に苦手な分類だ。ナイフと違って小回り効かねぇし、無駄に重いんで扱いにくい。
だが今回は依頼者の思いもあってのもんだ。あいつも覚悟を決めて俺に渡してきたってんなら、使う他ねぇよな?
「なん、で…なんで」
「あ?」
なんて思いながら剣を見つめていると、目の前にいるユーキが苦しそうに片腕で頭を抱え、指の隙間から汚らしい目でこちらを睨んでくる。
てか普通に喋れてんじゃねぇか。そんなに思い入れが強いのか?自分から追放してやったってのに。
「なんで…なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでえええぇ!!アキラの剣をおおおおおぉぉぉぉ!!」
「うおっ!」
で、呑気にそう思いながら眺めていると、一瞬で消え、俺との間合いを詰めては剣で横払いしてきた。
あっぶねぇなおい。少し回避が遅れたらあの剣のサビになっちまうところだったぜ…。
しかしまぁ、どうしたもんかねぇ。今の奴は完全に感情任せで動いてやがる。
なにをそう激怒してんのか知らんが、こうなった人間は痛め付けないと止まらねぇから厄介で仕方がない。
「なんで!!見ず知らずの!!お前が!!アキラの剣を!!殺したのか!?」
「おいおい、俺はただ_」
「うるさい黙れ!!」
「えー…」
自分から聞いといてそりゃねぇだろ。
でもこれ本当にどういう状況だ?薬の投与のし過ぎで記憶がごっちゃになって混乱でもしてるように見えるが…。
でなきゃ自分から追放してやったってのに依頼人…アキラを殺したのか、とか聞いてくるわけねぇよなぁ。
ま、考えるのは後だ後。今はこいつの処理が先だな。
「死ね!!今すぐ死ね!!死んだアキラの為に死ねぇ!!」
そしてユーキは怒りに身を任せ、大きく剣を振り上げると雷の速度で俺へと縦一文字の攻撃を仕掛けてきた。
剣でのじゃれ合いも飽きてきたところだ。とっとと決めるとするか。
「おらよっと」
_ガコォンッ!!
「っ!!」
タイミングを合わせて俺も奴へ横一閃を放つと、奴の剣と俺が持つ剣が勢いよくぶつかり合い、互いに大きく弾け飛んだ。
ユーキは反動を流し切れてないのか、大きく隙を晒すものの、俺はこういうことになることを予測し、やってきた反動を予め受け流すと、踏み込みを入れ…
「悪いな。あんたに恨みは無いんだ」
_ドスッ!!
…そのまま奴の腸へアキラの剣をぶっ刺してやった。
「あああああああああああぁぁぁっ!!」
腹を貫かれたユーキは断末魔を放ち、ヨロヨロと数歩後ろへ下がるとバランスを崩し、尻もちをして倒れ込んだ。
「ふーっ…!!ふーっ…!!」
そこからは悲惨だった。
こんな状況でも、奴は生に執着しているのか、震える手で深く突き刺さった剣を掴み、引き抜こうとするも、力が上手く入らない上、返り血のせいで滑ってなかなか抜けなかった。
それに苛立ってるのか、痛みを緩和させようとしてるのか、荒々しく呼吸をするものの、時間が経つにつれ緩くなり…
「ア………キラ………」
…最期に、依頼者の言葉を残し、瞼を閉じた。一雫の涙を流して…。
「ふ、ふざけるな!!」
動かなくなった彼を見届けた俺の背後に、そんな怒鳴り声が聞こえてきた。
振り返らずとも声の主はわかる。このクソみてぇなヤクを捌いてる外道が喚いてるんだろう。
「き、貴様!!何を寝ている!!起きろ!!あの時、取引を見られた取り巻きをどう処理するんだよ!!」
その外道は俺を無視して、眠りについているユーキを蹴り飛ばしながら怒声を上げる。
箇所なんてもんは関係ない。何度も、何度も、何度も何度も何度も、肌が膨れ上がるほど蹴り続けた。
「そもそも、弱い自分を変えたいと頭を下げてきたのはそっちだろう!!カモになりそうだからグロッティを渡してみたら何だこの有様は!!返せ!!私が渡したグロッティの全てを返せ!!」
…なるほど、話は読めた。
端的に言えば、ユーキは強くなりたいっつー願望があって薬を投与したんだな?
つまるところ、この外道が彼の心の弱いところに漬け込んで、金を毟り取ろうと…。
「おい、コラ」
「あ…?」
そうかそうか…それなら仕方ねぇよな。
こんなゴミ、表じゃ裁けねぇ…。というより、俺がぶっ殺さねぇと気が済まねぇ。
そう思った頃には、俺の突き出した脚が奴の頬を捉えていた。
「がはぁっ!?」
蹴り飛ばされた外道は、頬を凹ませ、折れた歯を撒き散らしながら地面に転がり、壁に衝突すると土煙を巻き上げながらぶっ倒れた。
でもまだ生きてる。なんせこっちは加減してやってるからな。
「あんた、金の為に人様の人生ぶっ壊すのが楽しいか?」
「は、はふぇ…」
「楽しいのかって聞いてんだよ!!」
「がふぁっ!!」
床に伸びてる外道を無理矢理立たせると、もう片方の頬目掛けて拳を振り抜いた。
再びぶっ飛び、残った歯全てへし折られた奴は床に倒れると、俺と距離をとるためにゴキブリのような動きで這いつくばりながら逃げようとする。
だが当然俺はそんなもん許さない。ゆっくり歩いて追いつくと、奴の膝目掛けて全体重を乗せて踏み付けてやった。
「ぎゃあああああああああぁぁぁぁっ!!」
途端、聞こえてくるのは肉が潰れ、骨が折れる生々しい音と耳障りな外道の断末魔。
けどそんなこと知っちゃこっちゃないので、残ったもうひとつの膝をへし折ってやった。
「す、すみません!!すみませんでした!!わ、私はただ!!お金が欲しいだけで…!」
二度と歩けない外道は涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら命乞いを始めた。俺を見てマジで殺されるとでも思ってんだろう。
しかしまぁ、ひでぇ話だな。金が欲しいって理由で人間の人生を壊すだなんて…。
「ほーん、金欲しいの?なんで?」
「は、はい!!実を言いますと妹が病気にかかってまして…!!」
「………」
そっか…そうなのかぁ。妹が病気、ねぇ…。
「はぁ…わーったよ」
「で、では_」
溜め息を付いて返事をしてみると助かったと勘違いしたのか、奴の顔が一瞬笑みを零すものの、真顔に戻って喋らなくなった。
まぁ言わずもがな殺したからな。お望み通り、金が欲しいって言ってたんで、額に鉛玉っつー金をぶち込んでおいた。
「最期の最後でクソくだらねぇ嘘をつくなんてな。馬鹿馬鹿しい」
ただの肉の塊だけになった奴に向かってそういった俺は、ひとつ溜め息を着くと施設の外へと…
「っ………」
「あ?」
…向かおうとした時、足首を掴まれた。
なんだろうと思い、下の方へ視線を向けてみると、倒れ込んでいた魔法使いと目が合った。
「殺……し………て……」
そいつは呼吸がままならなくて、正直何喋ってんのか全くわかんなかったが…訴えてる顔を見りゃどうして欲しいかわかっちまった。
ヤク厨っつっても被害者だ。仮に治療法が確立されていたとしても待ってるのは先の見えない暗闇の未来のみ。
そういう輩はグレて社会のド底辺に這い蹲るのがオチってもんだ。
それに、それ以前に。こうしてる最中でもこいつは苦しいんだろう。
「…悪いな」
ひとつ謝罪を残した俺は、拳銃の引き金を引いた。
狙いは眉間。痛いのは一瞬だけで、気が付きゃあの世に逝ってるさ。
その後、俺は死を懇願するヤク厨共を殺しながら出口へ向かった。
リーパーside
「剣はそんなに得意じゃないんだ。手加減してくれよ?」
武術に関してはガキの頃、クソジジイのクソみてぇな特訓のお陰である程度精通してる。だから別に剣が使えない、なんてことは一言も言っていない。
でも剣は比較的に苦手な分類だ。ナイフと違って小回り効かねぇし、無駄に重いんで扱いにくい。
だが今回は依頼者の思いもあってのもんだ。あいつも覚悟を決めて俺に渡してきたってんなら、使う他ねぇよな?
「なん、で…なんで」
「あ?」
なんて思いながら剣を見つめていると、目の前にいるユーキが苦しそうに片腕で頭を抱え、指の隙間から汚らしい目でこちらを睨んでくる。
てか普通に喋れてんじゃねぇか。そんなに思い入れが強いのか?自分から追放してやったってのに。
「なんで…なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでえええぇ!!アキラの剣をおおおおおぉぉぉぉ!!」
「うおっ!」
で、呑気にそう思いながら眺めていると、一瞬で消え、俺との間合いを詰めては剣で横払いしてきた。
あっぶねぇなおい。少し回避が遅れたらあの剣のサビになっちまうところだったぜ…。
しかしまぁ、どうしたもんかねぇ。今の奴は完全に感情任せで動いてやがる。
なにをそう激怒してんのか知らんが、こうなった人間は痛め付けないと止まらねぇから厄介で仕方がない。
「なんで!!見ず知らずの!!お前が!!アキラの剣を!!殺したのか!?」
「おいおい、俺はただ_」
「うるさい黙れ!!」
「えー…」
自分から聞いといてそりゃねぇだろ。
でもこれ本当にどういう状況だ?薬の投与のし過ぎで記憶がごっちゃになって混乱でもしてるように見えるが…。
でなきゃ自分から追放してやったってのに依頼人…アキラを殺したのか、とか聞いてくるわけねぇよなぁ。
ま、考えるのは後だ後。今はこいつの処理が先だな。
「死ね!!今すぐ死ね!!死んだアキラの為に死ねぇ!!」
そしてユーキは怒りに身を任せ、大きく剣を振り上げると雷の速度で俺へと縦一文字の攻撃を仕掛けてきた。
剣でのじゃれ合いも飽きてきたところだ。とっとと決めるとするか。
「おらよっと」
_ガコォンッ!!
「っ!!」
タイミングを合わせて俺も奴へ横一閃を放つと、奴の剣と俺が持つ剣が勢いよくぶつかり合い、互いに大きく弾け飛んだ。
ユーキは反動を流し切れてないのか、大きく隙を晒すものの、俺はこういうことになることを予測し、やってきた反動を予め受け流すと、踏み込みを入れ…
「悪いな。あんたに恨みは無いんだ」
_ドスッ!!
…そのまま奴の腸へアキラの剣をぶっ刺してやった。
「あああああああああああぁぁぁっ!!」
腹を貫かれたユーキは断末魔を放ち、ヨロヨロと数歩後ろへ下がるとバランスを崩し、尻もちをして倒れ込んだ。
「ふーっ…!!ふーっ…!!」
そこからは悲惨だった。
こんな状況でも、奴は生に執着しているのか、震える手で深く突き刺さった剣を掴み、引き抜こうとするも、力が上手く入らない上、返り血のせいで滑ってなかなか抜けなかった。
それに苛立ってるのか、痛みを緩和させようとしてるのか、荒々しく呼吸をするものの、時間が経つにつれ緩くなり…
「ア………キラ………」
…最期に、依頼者の言葉を残し、瞼を閉じた。一雫の涙を流して…。
「ふ、ふざけるな!!」
動かなくなった彼を見届けた俺の背後に、そんな怒鳴り声が聞こえてきた。
振り返らずとも声の主はわかる。このクソみてぇなヤクを捌いてる外道が喚いてるんだろう。
「き、貴様!!何を寝ている!!起きろ!!あの時、取引を見られた取り巻きをどう処理するんだよ!!」
その外道は俺を無視して、眠りについているユーキを蹴り飛ばしながら怒声を上げる。
箇所なんてもんは関係ない。何度も、何度も、何度も何度も何度も、肌が膨れ上がるほど蹴り続けた。
「そもそも、弱い自分を変えたいと頭を下げてきたのはそっちだろう!!カモになりそうだからグロッティを渡してみたら何だこの有様は!!返せ!!私が渡したグロッティの全てを返せ!!」
…なるほど、話は読めた。
端的に言えば、ユーキは強くなりたいっつー願望があって薬を投与したんだな?
つまるところ、この外道が彼の心の弱いところに漬け込んで、金を毟り取ろうと…。
「おい、コラ」
「あ…?」
そうかそうか…それなら仕方ねぇよな。
こんなゴミ、表じゃ裁けねぇ…。というより、俺がぶっ殺さねぇと気が済まねぇ。
そう思った頃には、俺の突き出した脚が奴の頬を捉えていた。
「がはぁっ!?」
蹴り飛ばされた外道は、頬を凹ませ、折れた歯を撒き散らしながら地面に転がり、壁に衝突すると土煙を巻き上げながらぶっ倒れた。
でもまだ生きてる。なんせこっちは加減してやってるからな。
「あんた、金の為に人様の人生ぶっ壊すのが楽しいか?」
「は、はふぇ…」
「楽しいのかって聞いてんだよ!!」
「がふぁっ!!」
床に伸びてる外道を無理矢理立たせると、もう片方の頬目掛けて拳を振り抜いた。
再びぶっ飛び、残った歯全てへし折られた奴は床に倒れると、俺と距離をとるためにゴキブリのような動きで這いつくばりながら逃げようとする。
だが当然俺はそんなもん許さない。ゆっくり歩いて追いつくと、奴の膝目掛けて全体重を乗せて踏み付けてやった。
「ぎゃあああああああああぁぁぁぁっ!!」
途端、聞こえてくるのは肉が潰れ、骨が折れる生々しい音と耳障りな外道の断末魔。
けどそんなこと知っちゃこっちゃないので、残ったもうひとつの膝をへし折ってやった。
「す、すみません!!すみませんでした!!わ、私はただ!!お金が欲しいだけで…!」
二度と歩けない外道は涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら命乞いを始めた。俺を見てマジで殺されるとでも思ってんだろう。
しかしまぁ、ひでぇ話だな。金が欲しいって理由で人間の人生を壊すだなんて…。
「ほーん、金欲しいの?なんで?」
「は、はい!!実を言いますと妹が病気にかかってまして…!!」
「………」
そっか…そうなのかぁ。妹が病気、ねぇ…。
「はぁ…わーったよ」
「で、では_」
溜め息を付いて返事をしてみると助かったと勘違いしたのか、奴の顔が一瞬笑みを零すものの、真顔に戻って喋らなくなった。
まぁ言わずもがな殺したからな。お望み通り、金が欲しいって言ってたんで、額に鉛玉っつー金をぶち込んでおいた。
「最期の最後でクソくだらねぇ嘘をつくなんてな。馬鹿馬鹿しい」
ただの肉の塊だけになった奴に向かってそういった俺は、ひとつ溜め息を着くと施設の外へと…
「っ………」
「あ?」
…向かおうとした時、足首を掴まれた。
なんだろうと思い、下の方へ視線を向けてみると、倒れ込んでいた魔法使いと目が合った。
「殺……し………て……」
そいつは呼吸がままならなくて、正直何喋ってんのか全くわかんなかったが…訴えてる顔を見りゃどうして欲しいかわかっちまった。
ヤク厨っつっても被害者だ。仮に治療法が確立されていたとしても待ってるのは先の見えない暗闇の未来のみ。
そういう輩はグレて社会のド底辺に這い蹲るのがオチってもんだ。
それに、それ以前に。こうしてる最中でもこいつは苦しいんだろう。
「…悪いな」
ひとつ謝罪を残した俺は、拳銃の引き金を引いた。
狙いは眉間。痛いのは一瞬だけで、気が付きゃあの世に逝ってるさ。
その後、俺は死を懇願するヤク厨共を殺しながら出口へ向かった。
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