異世界喫茶店の黒い殺し屋

42神 零

文字の大きさ
上 下
4 / 30
EPISODE 00・異世界へ来た殺し屋

03

しおりを挟む
1996年09月28日 20:50


「ありがとうございましたー」


 喫茶店エイル。ここニヴル地下街唯一の癒しの場所。

 やってくる客は少ないながら様々で、穏やかな人も居れば、愚痴をこぼしにやってきた者、中には組織絡みの人間だってやってくる。

 そんなエイルの閉店時間は21:00。現時刻をもってラストオーダーを終えたリフィアと白髪のひとり娘レナは喫茶店の後片付けに取り掛かった。


「………」


 その最中、リフィアはキッチンの戸棚を開き、あるものを見つめる。

 それは黒い物体で、手に持つとズッシリとした重量感のあるもの…。

 リフィアはただそれを見つめるだけで手に取らず、何か覚悟を決めたような顔付きでゴクリと固唾を呑んだ。


「…ママ?」

「へ?」


 物静かにじっと見つめるリフィアだったが、横からやってきたレナの声で我に返った。

 振り向くと、そこには心配そうにリフィアを見つめるレナの姿が…。


「あ、あぁ。ごめんね、後片付けだね」


 正気を取り戻したリフィアは苦笑いしながら一言謝罪すると、再度後片付けに手を出した…


_ドォンッ!!


 …まさにその直後だった。

 締まったはずの出入口用の扉が勢いよく蹴破られ、外からは大量の黒服の男が流れ込んできたのだ。


「っ!!」


 突然の招かれざる客にレナは悲鳴を上げてリフィアの背後へ、リフィアはそのレナを守る形で一歩後ろへ下がった。

 この対応からして過去に何度も似たようなことがあるようで、リフィアは度々黒服集団に頭を悩ませているらしい。

 そんな黒服集団を掻き分け、現れたのは貫禄のある丸坊主の大男。背中には日本語とも英語とも捉えられない文字がデカデカと記載されている。

 この男が黒服を取り締まってる者だと見える。


「よぉ、リフィア。借金返済の方はどうだ?」


 タバコを一本口に銜えたその男は、黒服のひとりから火を灯させ、ニコチンを含んだ汚い煙を撒き散らしながらニヤリと笑う。

 どうやらリフィアから借金を取り立てる、闇金融の人間らしい。


「借金返済って…もう返したじゃない。今更なんの用?」

「おいおいとぼけんなよ。まだ利子があるだろ?」

「あんなの利子じゃない!あんた達が金を搾取してるだけ!これ以上私から何を奪うっての!?」


 怯みを見せないリフィアだったが、そう言い切った直後に乾いた音が鳴り響き、リフィアは後ろへ吹き飛んで行った。

 泣き叫ぶレナの前には、ビンタを振り抜いた大男の姿が。

 対するリフィアは刈り取られそうな意識の中、何とか堪えて立ち上がろうとするも、左右からやってきた黒服たちによって拘束され、身動きが取れない状態に陥った。


「威勢のいい女は好きだが、生意気な女は大っ嫌いだ。それに口答えできる立場だと思ってんの?」

「っ…!」


 挑発口調でそうベラベラと喋る大男に対し、歯を食いしばって睨み付けるリフィア。

 理由はどうであれ、借金を背負っている以上、反論したらどうされるのか…そんなこと目に見えてるリフィアにとって、ここはグッと堪えるしかなかった。

 何より関係の無いレナだけは巻き込みたくない。その一心で動いてるリフィアは自身が犠牲になってもいい覚悟は出来ていた。


「んー…そうだな。返せねぇなら…俺の奴隷にでもなれ」


 だが現実とは非情なもので、大男はそんなリフィアも知らんと言わんばかり、理不尽な請求をしてきた。

 彼の持つ鎖の先端にはゴム製の輪っかが引っ掛かっており、それを持ってはリフィアの首にはめこもうと近付いた。


「…そうすればレナに手を出さない?」

「さぁ?そいつはどうかな」

「………」


 首輪をかけられそうになってる状況下の中、リフィアは冷静にリリナの方へ視線を向ける。


「ママァ…!ママァ!!」


 そこには顔を真っ赤にして泣き叫ぶレナの姿があった。

 まだ純粋無垢な年頃のためか、レナにとって何を口喋ってるのか理解出来かったものの、本能的に母親が拉致されると察したのだろう。これまで以上の声量で泣き叫んでいた。


「…わかった。あんたの奴隷でもなんでもやるから、レナだけは手を出さないで。それだけは譲れないわ」


 少し間が開いた後…リフィアは真剣な眼差しで大男にそう訴える。


「言い方が癪に障るが…いいだろう。テメェらのカンドーする親子愛に免じて、ガキは見逃してやるよ」


 対する大男はニヤリと汚らしい笑顔を見せると、そのまま首輪を使ってリフィアに…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

快楽転

さちまる☆よるとば
ファンタジー
生まれながらのビッチ!! 異世界で別の生き物に憑依移動、しかもその生命体はサキュバスだったのです。 まさに理想のわたし!!続かないと大変なのでA4で書き溜めていこうと思う。 もしも自分が異世界に行ったら、これはもはや鉄板妄想ですが 私ならこうでありたい!!をお送りします。 飽きやすいし途中で死ぬかもしれません。 R18は今回とりあえずなしです。 ちなみにタイトルは以前買ってた某漫画雑誌を参考にw 小説家になろうにて「よるとば」名で投稿してます。 魔王♂⇄勇者♂〜入れ替わりからの、ハーレム官能〜60話完結 https://ncode.syosetu.com/n2784fd/ ※ノクターンで『魔王♂⇄勇者♂〜入れ替わりからの、ハーレム官能〜』にてR18閑話を投稿してます。大人の方はそちらもぜひご覧ください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生者の相棒〜転生者には常識がない!〜

くろこん
ファンタジー
転生者 私達の世界では最早聞き慣れたと言っても過言ではないようなその言葉は、異世界転生ものもして人気を集めている。しかし、その言葉を全く知らない人達がいる。そう、転生した世界の人間たちだ。今回の主人公は、そんな転生者の不可思議な行動を見守る男の物語である! 人間、魔族、亜人種、エルフ。 1人の英雄の活躍によって全ての異種族が共存する世界、アヴァロム。そんな世界の小さな国の、これまた小さな村に生まれたエルフの少年、アルフィリオン(通称アル)彼はこの剣と魔法の世界に憧れる普通の少年だったが、そんな『平凡』な彼の隣の家に、全く同じ日に生まれた少年は普通じゃなかった!? 常識知らずの隣人、シルフィールドに振り回される少年、アルの一生を書いた異世界転生冒険譚!!

【美醜逆転】助けた奴隷は獣人の王子でした

のらすて
恋愛
異世界トリップして、美醜逆転の世界に飛んできてしまったOL、広森 荷菜(ひろもり にな)。 虐げられていた奴隷獣人、ディートを買い、彼の手を借りて元の世界に帰ろうと計画する。 だけど荷菜が帰ろうとしていることを知ったディートは「絶対に許さない」と言って荷菜を攫って……!? ※ご都合主義、適当設定 ※ハッピーエンド ※無理やり表現あります。ご注意ください。

最深部からのダンジョン攻略 此処の宝ものは、お転婆過ぎる

aradoar234v30
ファンタジー
 主人公の公一が引っ越先の押入れの襖を開けると、そこには少女が居た。  前の住人の特別な趣味の人形ではなく生きている本物の少女だった。  少女は驚く公一を尻目に押入れの中にあるぽっかりと空いた穴の中に引きずり込む。  そして着いた先は薄暗い大ホール。そこには金銀の財宝が山と積まれている薄暗い大広間だった。  渋々ダンジョンの攻略依頼を受け行動に移す公一だったが、そこはダンジョン最深部。  ボスキャラクラスのモンスターが闊歩する世界だった。転移時に付与されたチートスキルと宝物を使いダンジョン世界の完全攻略を目指す。

処理中です...