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第2.5章 -王都学園入学まで 来るべき時に備える-
113.お久しぶりのポートマン家
しおりを挟むプレデビュタントから約1年、久々にポートマン家の皆と会うことが出来た。
「「エディお兄様!!リリー!!ナーデル!!久しぶり!!」」
「あぁ、リリー!!本当に体調治ったのね!!今までも十分可愛かったけど、顔の血色も良くなって…益々可愛くなったわ!!良かった!本当に良かったぁ~~~!!」
ギューーーーッと抱き着いてきたセシルの衝撃によろけながら、しっかり力強く抱き着き返した。
「ありがとう!セシルお姉様!!お姉様も元気そうで良かったわ♪…お姉様も大分成長されましたね、前より大きくなってますわ。」
抱き着かれた時に感じた柔らかい感触に、思わず口に出してしまった。
”何か”が含まれているとは微塵も思っていないセシルは、当然身長の事だと受け取り返事をする。
「あら!やっぱり分かる??私これでも王都にいる貴族の同年代の中で1番と言っていい程背が高いのよ!!
…本当はちょっぴり不安だったんだけど、エディ様の方が高くて安心したわ?」
内緒話をするように、後半部分はコソコソと伝えてくれてリリーナは思わず笑ってしまった。
「ふふふっ!お兄様はまだまだ、つくしの様ににょきにょき成長中ですのでそのまま安心しておいて大丈夫ですよ!この間何てとうとう背を越されたハヤトが「ナーデル様にまで抜かれたら!!」と今から心配してました。」
「あら!言われてみればナーデルも随分大きくなった様だし…やっぱり男の子は見ない内にすぐ大きくなるわね…グレンだけじゃなかったのね!」
セシルが振り返り、男同士で久々の挨拶を交わしていたグレン達を見つめながら言った。
声が聞こえたのだろう、エディとナーデルと楽しそうにしていたが話を止めこちらに来てくれた。
「───リリー、久しぶり。本当…元気そうで良かった。ルーカス王子から聞いてはいたんだけど、この目で見るまで安心出来なかったから…。本当に、本当に良かった。」
ふんわりと涙目で笑うグレンは、髪が伸びたからだろうか随分と父親のショーンに似てきた。
まだあどけなさはありつつも、確実に男らしさが出てきて・・・何だかドキッとしてしまう。
「あ、ありがとう!グレン。それにいつも手紙を送ってくれて、毎回グレンからの手紙が来ないかワクワクしてたのよ!もうすっかり良くなったから、この前出来なかった王都ツアーも!ピクニックやグルメツアーも!いーーーーっぱい一緒に楽しみましょう?」
ずっと、それこそリリーナ本人よりも心配してくれていた、心優しい友達と今まで我慢してきたことが全部出来る!!と思うと嬉しくてしょうがなかった。
リリーナは健康的に血色も良くなったその顔に、満面の笑みを浮かべグレンの手を両手でギュッと握りしめる。
すると久々に会う大好きな友達であり、且つ健康的に益々可愛くなった友達に手を握られ…グレンはあっという間に顔を真っ赤にさせた。
手を伝って自分の心臓の音がリリーナに聞こえないか、グレンは何故だか不安になってきた。
そんな年相応のどぎまぎとした弟の様子を、セシルは面白そうに見つめる。
最近めっきり可愛げが無くなりまるで大人の様になってしまったグレンが、滅多なことで表情を変えなくなってしまったグレンが、いとも簡単に”普通の男の子”の顔になるなんて!
ニヤニヤするセシルに気づき、グレンはコホンッ!と咳払いしてなるべく自然にリリーナの手を元に戻す。
「い、いや。そんなに喜んでくれて嬉しいよ。これからもいっぱいお手紙書くね。
今回は1週間も時間があるから、色んな事をリリー達と一緒に体験したいな!もうずっと前から楽しみにしてたんだ!」
「そうだそうだっ!グレン、今回は俺達のお祖父様が引率して下さるから、ナーデルもグレンも一緒にコアスの森に入っても良いってお父様が許可して下さったんだ!!一緒に冒険楽しもうね!!!」
「僕達のお祖父様ねぇ~!とーっても強いんだって!でも僕と一緒に遊んでると絶対負けちゃうから、僕がお祖父様を守ってあげるの!」
「まぁ、ナーデル立派になって!じゃあ、リリーと私はララやカヨ達と一緒にショッピングでも行きましょう!エマ様が立ちあげられた”ベラフィーノ”がとってもとっても気になってて!!!来月王都にも支店が出来るって聞いたけど、エマ様からお母様と私にプレゼントしてくれたお花の香りのボディーシャボンがとっっっても大好きなの!!!!
バジル領にしかない商品もあるって聞いたわ!!!私絶対にベラフィーノの本店に行きたいの!!!」
「まぁ!嬉しい!お母様も喜びますわ!お兄様達がコアスの森に行ってる間、目一杯女の子同士で楽しみましょうね♪」
玄関先にもかかわらず、いつまで経っても騒いでいる子ども達をエマ達が叱りに来るのは、その少し後だった。
◇
ポートマン家の方々は今回、ショーン様もチョウ様も含め全員でバジル家に来訪された。
ショーン様は3日程しか滞在できないそうだが、それでも十分満喫できる…いや、して頂きたい。
ということで、一先ず新しいバジル領の名物となった”ピザ”を味わっていただくことにした。
それがどこからか使用人達の間で広まり、ピザファンと化した何人もの従者達から
「ピザは当然、庭の釜で焼きますよね?」「それなら外で召し上がった方が、出来立てを味わっていただけます!!」「となると…一種のガーデンパーティーの様な感じになりますね?」「パーティーなら、やっぱり大勢の人がいた方が盛り上がりますよね?」「勿論、バジールピザもありますよね???」
・・・という「またピザパーティーしましょう!!いやして下さい!!!」という遠回りな圧がかかり、最終的にため息を吐きながらお父様が許可を出した。
前回と全く同じでは面白くないので、ナブの花畑の傍らで始めていた養蜂で出来た蜂蜜を活かし、今回は甘いデザートピザも作ってみた。勿論実際に作ったのはザインです。
あとシーフードピザも新しく作ろうと提案した。家の従者達は獣人達を中心に肉派が多いのだが、私はピザだったら海鮮派である。これを機に海鮮も好きになってもらおうと目論んでいる。
という訳で、始まる前からテンションMAXのバジル家側にちょっと引いていたポートマン家の方々だったが、一口食べると目を輝かせ目出度くこちら側の仲間入りを果たした。
「え!!!うっま!!何これうっま!!!!え、すげぇ美味いじゃん!!!ガンディールお前!!こんな美味いモン隠してたのか!!ふざけんなさっさと王都で売れよ馬鹿!!!!」
「まぁ!これは美味しゅうございます!!少し熱くて綺麗に食べるのにコツが要りますが…!酸味がこのチーズ?でまろやかになり、バジールの香りでスッキリするのね…!
その味もさることながら、赤と白に緑が差し色でアクセントになっているその見た目も大変美しいですわね…。」
「美味しい~~~!!ちょっと焦げてて大丈夫??って思ったけど、ちょっとカリカリしててとっても美味しい!!トマトのヤツも美味しいけど、他のピザも美味しいわ!!この甘いヤツ!!!蜂蜜とチーズってとっても合うのね・・・はぁ、もう美味しすぎて夢みたいだわ・・・!!」
「このエビとかが一杯のピザも美味しい!!白いソースも美味しいしシーフードにとってもあってる!!それに、バジールソースのピザもとっっっても美味しいよ!野菜をペーストした感じかな?と思ったけど、風味と味わいが全然違うね!!僕バジール大好きだ!!」
ポートマン家の方々もお気に召したようで、鼻が高い。
ショーン様は早速お父様を捕まえてやれ「レシピ教えてもらうまで帰らない!!」だの「あのピザ窯?家も作る!!職人紹介しろ!!」だの「材料はワグナー商会の支店でも手に入る様に…最低でも家の領と王都では手に入る様にしろ」だの「なんでこんなの食わせたんだ!!帰って食えないと思ったら絶望しかないだろ!!」だのと責め立てていた。
そんなショーン様に慣れているのか、お父様はお酒を片手に「はいはい、分かった分かった」と言った様に雑にあしらっていた。・・・大丈夫だろうか?
チョウ様はお母様と一緒にチーズと蜂蜜のピザを味わって、お互いに感想を言い合っている。
やはり、デザートピザは女性に人気みたいだ。甘党の男性陣がデザートピザを狙っているのに、片っ端から女性陣が取って行ってるのをみた。
セシルお姉様とグレンは、私達兄弟と一緒に色んな種類のピザを楽しんでいる。
私とセシルはちょっとお腹がいっぱいになってきたけど、エディお兄様とグレンはまだまだ食べるみたいでピザ窯の近くに待機していた。
ナーデルが蜂蜜をこぼしながらデザートピザを食べているのを見て、シャルに何か拭く物を持ってきてもらっている時だった。
「はぁ、」とセシルお姉様がため息を吐いた。
「???どうかなさいました?お姉様。どれかお口に合わなかったものでも…?」
「あ、ごめんなさい!違うのよ!どれも美味しかったわ!!そうじゃなくて・・・。
この”バジール”って、バジル家の名前から取ってるんでしょう?その、羨ましくて。
こんなに美味しい食べ物に、家の名前がついて大勢の人々に愛されるって、素敵だなぁって思って。いいなぁ、ってちょっぴり羨ましくなっちゃった。」
「深い意味は無いのよ、ごめんなさい」とセシルお姉様は慌てて謝っていた。
(分かるわぁ~~!!私も超美しい綺麗でプリティーな宝石見つけたら、”リベア”って名前付けたいと思うもの!!やっぱり女の子は同じこと思うわよね~~~!!)
う~~~ん、リベアのはちょっと違うと思うけど…。
私が分からないだけで、女の子はそういうものなのか???と真剣に考える。
でもそうか、ちょっと羨ましいって言うのは分かる。
私も前世で友達が可愛い文房具とかお人形とか買ってもらってたら、いいなぁって思ったもん。
セシルお姉様もそういう風に思ってるのかな?
うーん、ポートマン・・・ポート・・・・あ、あれなら私でも作れるかな???
何かを思いついたリリーナは、セシルの肩に手を置いて提案してみた。
「セシルお姉様!だったら”ポートマン”の名前の美味しい食べ物作りましょうよ!
ないんだったら、お姉様が作ればいいんです!一緒に皆に愛される食べ物、作ってみましょう!」
「えぇえ?!?!そ、そんなに簡単に作れるのかしら…???
で、でもちょっと面白そう…!!皆で”マヨン”を作った時、とっても楽しかったの覚えてるわ!
ふふふっ!楽しみ!えぇ、リリーありがとう!一緒に作って!”ポートマン”の名を付ける美味しい食べ物!」
「僕もーー!!僕も作るーーー!!美味しいのーーー!!」
今回のポートマン家滞在の楽しみが新たに出来た瞬間であった。
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