転生した復讐女のざまぁまでの道のり 天敵は自分で首を絞めていますが、更に絞めて差し上げます

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第2章 -少女期 復讐の決意-

107.閑話 Side天敵 リリーナの復讐 -1-

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 モリーが再婚した”オヒシバ子爵”の屋敷へ移って、早数週間。
 屋敷内では子爵と前妻の子であるグリーゼとモリーの連れ子であるアイリの騒がしいやり取りが、もはや日常の一コマと化していた。 


 ビリビリィッ!!!と布が引き裂かれる音が響く。


 「ちょっと!!!何てことするのよっ!!!ドレスがっ、これお気に入りだったのにっ!!!」

 「あ~ら?ごめんなさい?珍しく”それなりの”服を着てるから、何事かと思って!
 生意気に新しいドレスを仕立てたのね?そんなもの着ても、アンタのそのブッサイクな容姿は変わらなくてよ?
 まったく、折角仕立てたドレスも可哀相じゃない。こんなブスに着られる為に作られて。あぁ、勿体ない…今度から新しいドレスを仕立てる時は許可を取るのよ?


  ────そんなことしなくても、私のお古で十分でしょ?義妹アイリーンちゃん?」


 馬鹿にするようにニタニタと笑うグリーゼを睨みつけ、ギリギリと奥歯を噛みしめるアイリ。
 しかしそんなアイリを助けようとする者などおらず、周りの使用人達は興味のなさそうな目で見るかグリーゼと同じく嘲笑うかだった。


 ・・・そう、オヒシバ子爵家では”義姉のグリーゼ”が”義妹であるアイリーン”を虐める光景が普通になっていた。
 もしもヒューや元アイリの使用人達が見たら信じられない光景が、この屋敷では当たり前に存在している。

 アイリは最近慣れてしまった燃え上がるような怒りで体を震わし、今日も今日とて吠える。


 「うるっさいわよ!!アンタみたいなブスが、よくもアイリを馬鹿にしたわね!!誰がアンタのダサダサなドレスなんて着るもんですか!!何よそのゴテゴテキラキラドレス!!全っ然可愛くないわよ!!」

 「ふふふっ、だから言ったでしょ?”私のお古をアンタにあげる”って。私の趣味でも何でもないわよ、こんなダサいドレス。これはね?この間の騒動で没収されたどこぞの貴族の古着よ?多分祖母くらいの代のモノを保管してたんでしょうね…凄く安かったから、アンタにピッタリだと思って買っといたわ!」

 「ぷっ!!あはははっ!!!バッカじゃないの??私にお古を渡す為に、そんなダッサいドレスわざわざ着るなんて…本当、頭悪すぎ!!!アンタブスの上に”おバカ”ちゃんなのね??アハハ!」


 これは傑作だと、見下すように嫌な笑い方をしながらグリーゼを煽る。
 散々自分に向けられた癇に障る笑顔を、このチャンスに目一杯返してやろうと仰け反るくらい大笑いした。

 煽りに煽られているはずのグリーゼだが、気に障った様子もなく…むしろ穏やかにほほ笑むほどだ。
 周囲の者達も同様に、一切反応を見せずにただただ自分の仕事を全うしていた。


 「ふふふっ、これはね…先程お父様に見せに行ったのよ。”お気に入りのドレス”を身に着けて、お父様に自慢しに行ったの。お父様はそれはそれは褒めてくださったのよ?お婆様の持っていた昔のドレスにそっくりだと。

 ────お父様は感嘆するでしょうね。そんなに気に入っていたドレスを、”義妹が気に入っていた敗れたドレスの代わりに”私が譲ったと聞いたら。

 お父様はアンタも知ってる通り、私のことをとっても溺愛してくれてるからね!アンタが気に入らないと言って、”せっかく”私が譲ったドレスを着てなかったら…どう思うかしらね??フハハハッ!!おっかしぃ~!!!」

 
 先程までは辛うじて、貴族令嬢の皮を被ってそれなりに見えていたグリーゼだが、アイリを指さして大笑いする様はどう取り繕っても”性悪女”にしか見えなかった。

 逆に煽る様に笑われる羽目になったアイリは、もう先程の様に笑うことは出来なかった。

 
 「馬鹿はアンタよ、本っ当!舐められたもんだわ、この私が!!何の理由もなくこんなダサいドレス着ると思ってんの??
 ふ、ふふふっ!!思った通り見た目だけじゃなくて性格も可笑しくて本当、最高だわ!!これから退屈しそうにないもの!!!使用人じゃイマイチ反応悪いし、というかそもそもが下の立場だから楽しくなかったのよね~!

 アンタみたいに、自分が大好きで尊ばれて当然だ!って思ってるヤツを相手にする方が100倍楽しいわ!!
 あぁ、本当は最初からちょっかい掛けたかったけど、ちょっと我慢して良かったわ~。お陰でアンタから”奪う”機会も増えそうだし♪
 そうそう、お父様に「本当はお姉様に虐められたの」とか言っても無駄よ?あ、でもそうね…そっちの方がより面白いことになるかも…ふ、ふふふっ!!やっぱいいわ!お父様にチクってもいいわよ!お好きにどうぞ♪

 ────あぁ、楽しいったらありゃしない♪」


 グリーゼはお付の者達を引き連れ、高笑いしながら去って行った。


 アイリはグリーゼの言った通り初めの頃は伯爵家の時と同じ様に”我儘放題やりたい放題”していたのだ。
 しかし…こっちを油断させておいて、あの性悪女は父親や来客に十分アイリの醜態を晒した後”仕掛けて”きたのだ。


 「お父様…お母様からいただいた…大事なドレスを…!!あの子が、勝手に奪っていきました…!!」などと泣きつき、更には「いいのです…あの子はもう私の妹。私は…お姉ちゃんだから、我慢します!っう、うぅ!」と”健気に妹を受け入れる姉”を演じたのだ。

 同い年ではあるが、先に生まれていた為”あんな素行の悪い妹”の姉になっても辛抱強く、健気に振舞うグリーゼを見たら…実父は勿論、”たまたま”その場面に遭遇した来客達がどっちの味方になるかなど赤子でも分かること。

 どうせさっき言った様に、父親に泣きついてもアイリの言う事など信じてもらえるわけがない。
 むしろ嬉々とグリーゼの”健気な姉劇場”が繰り広げられるに決まっている。



 まんまと(そもそもはアイリ自身のせいだが)立ち位置をグリーゼの、オヒシバ子爵家の最低層へと追いやられたアイリは、その日から耐えられない屈辱の日々が始まった。

 父親に叱りつけられ、「アイリの我儘に付き合う義務はない」と屋敷中の使用人達へ通達された為、使用人から助けもされない…むしろ馬鹿にされる日々となった。
 
 何とか地位を返上しようと、父親に取り入ろうとするが…いつもいつもグリーゼに先手を取られ上手くいかない。
 お母様とは初日以来会ってないし、お婆様は”お情け”で身を置いてる身分、何の役にも立たない。というかお婆様には時々会うが、これといった会話もしていない。


 「クソックソッなんでっ!!!なんでアイリがこんな目にあってるのよ?!?!次から次へとイベントみたいに展開変わるくせに、全然王子様もイケメン騎士も助けに来ないじゃない!!!!
 神様までいなくなるし……!!!!どういうことよ!!!!!!!」

 先程までお気に入りだった破れたドレスを、自身の手でビリビリに引き裂きながら叫び続けるアイリを、寝っ転がりながら見ていた悪魔は爆笑しすぎて窒息死そうだった。


 「!!!!!ウ、ウケる!!!!面白すぎる!!!あんなに威張ってたクソガキがっ、同じような女にいい様にヤラれてやがるっ!!!!」

 ブハハハハハッ!!!と爆笑する悪魔の姿を、アイリが見つけることは出来ない。


 この悪魔こそ、あのアイリの様な性悪女を見つけ出し、縁を引き合わせた張本人である。
 アイリが圧倒的に弱い立場で、あの女と一緒に生活することになったら……想像するだけで面白かった。



 そして────リリーナも、悪魔と同じような事を考えていた。

 ダストンから聞いた、オヒシバ子爵家のご令嬢の”噂”を聞き…処刑でなく再婚を推したのだ。
 グリーゼは外部へも上手く振舞っているが、辞めた使用人等余り大っぴらに聞かない話も、今や国内…いや世界でも有数の情報機関になりつつあるモレッツ商会には届いていた。


 前世から今まで、何の罪悪感もなく人のモノを奪い搾取し続けたアイリが、今度は逆の立場になる。

 これまで自分が他人にやってきたことを、次は自分が受ける番になれば少しは罪悪感も生まれるのではと考えたのだ。
 

 正直どこまでヤツに効くかも、反省するかも、続くかも分からない。
 しかし、今リリーナが出来る精一杯の”復讐”にはなるのではないか、と考えた。

 

 そして、悪魔とリリーナの思惑通り────これからアイリには耐えられない、屈辱の日々が続いていく。
 

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