転生した復讐女のざまぁまでの道のり 天敵は自分で首を絞めていますが、更に絞めて差し上げます

はいから

文字の大きさ
上 下
85 / 99
第2章 -少女期 復讐の決意-

105.閑話 Side天敵 復讐の足音

しおりを挟む
 Side 天敵達の牢


 悪魔は牢屋に入れられ震える”玩具(アイリ)”達ぐらいから戻っていた。
 折角の面白い場面(牢に入れられる場面)を見逃したと気付いた時は、”仕込み”に手間取ったことを少し後悔したものだ。

 ギャーギャーと五月蠅く自分達の地位に酔いしれ、他者を見下していた奴等が日に日に弱っていく姿は大層滑稽だったし、ステイン元伯爵一人の処刑が決まり別の牢に移る時なんか本当に最高だった!

 「助けてくれえええぇぇぇぇええ!!」と泣き叫ぶ夫・父・祖父に、”処刑(死ぬの)はあの人だけだ”と分かり安堵する女共。
 さっきまで一緒に縮こまり、オッサンを頼りにしてたのに!家族なのに!

 本当、人間って面白れぇ!!!


 因みに、悪魔はアイリに姿を見せないまま過ごしていた。
 悪魔は気づいたのだ。ギャーギャーと五月蠅い奴の相手なんかしないでも良いと。
 アイツがポンコツ過ぎてサッサとこの劇が終わって(死んで)しまおうとしても、自分が影からちょこちょこ動いていい具合に回避すればいい話だ。
 馬鹿正直にアイツの相手になんかならなくても、いくらでもやり方があるのだと。

 それからは堂々と、アイツの相手もせず…勝手に自滅していく様を面白可笑しく観察していた。


 そして今日、やっと自分の”仕込み”が実ったらしく動きがあった。


 「いやぁ!!!嫌よ、どうしてっどうして私があんな醜い男の元へっ!!!絶対に、絶対に嫌!!!なぜ格下の子爵で、それも変態と名高いブ男の妻にならなきゃいけないのよ?!?!
 私は、公爵…っ!マシュー様の元妻よ?!?!この際貴族じゃなくても、それなりに資産のある見てくれの良い商人や騎士に嫁いだ方がマシよ!!!誰か、その条件の縁談を持って来なさいよ!!!」

 「モリー!!!いい加減になさいっ!!お父様が処刑される今、頼れるのは貴女の再婚しかないのよ?!それに、モタモタしていたら私達まで処刑されるかもしれないわ!!早く貴族籍を取り戻さなければ…!!!こんな状況でも、子爵クラスから後妻とはいえ縁談が来ていることが奇跡!!

 しかもあの気持ちの悪い子も、そして義母になる私も引き取ってくれるなんてっ…!!こんな良い条件の縁談、他にないわ!!
 …それに、持参金もなく、後ろ盾も無い犯罪者の娘である貴女なんか、庶民からですら他に縁談など来るはずがないでしょう。噓偽りなく、今来ている縁談はこの子爵のみです。
 こんなことなら、タンジ公爵家なんぞに拘らずサッサと有力貴族と再婚させておけば良かったわ…!!あぁ、腹立たしい…!!!
 貴女に拒否権などありませんっ!!変態だろうと格下だろうと貴族には変わりないわ!!子爵には早々に了承の旨返事を出して、さっさとこの薄ら寒い牢から出してもらいますっ!!!」

 「はぁ、一時はどうなることかと思ったけど、やっぱり最終的にはヒロインは助かる様に出来てるのよ!
 お母様、いい歳こいて駄々こねるなんて本っ当情けないわよ!さっさとお金持ちの貴族様と再婚して、アイリを可愛い部屋に連れて行ってよ!」


 イヤイヤッ!と両手で頭を抱えその目に絶望を抱えながら発狂するモリーに、折角の申し出を断ろうとする馬鹿娘に憤怒するモリーの母、そしてそんな母達の様子など知ったことではないと言わんばかりにあっけらかんと調子の良いことを言うアイリ…。

 3人の姿は髪もボサボサ、頬もこけ顔色も悪く既にボロボロだ。
 そりゃあそうだろう。今まで温室でしか生活してなかった貴族令嬢達には、今の状況は堪えるだろう。

 モリーの母の言うことは最もだ。モリーも頭では分かっているが、心が追い付いていない様子だ。

 少し前までは公爵夫人であり、冷酷ながらも美大夫なマシューの妻だったのだ。
 お茶会では格下に嫁いだ女達を見下し、見目の悪い相手に嫁いだ女達を憐みつつも嘲笑っていたのに…今となっては、自分がその立場になっている。

 モリーにとっては実の父親が処刑されるよりも、よっぽど酷な出来事であった。


 いつまでも泣き喚き恨み言を言うモリーの様子に我慢出来なくなったモリーの母は、鉄格子の向こうで待機している子爵家の使者に「是非、お受けする。一刻も早く手続きをお願いいたします。」と本人を後目に返事をした。

 そんな母の言葉を聞き、益々泣き喚くモリーであったが…どこかで諦めたのだろう、反論することは無かった。

 そんなモリー達の様子を冷めた目で見ていた子爵家の使者は、恭しく礼をして早々に去って行った。
 


 「あぁ、やっと!これでまともな環境に身を置けます。モリー、今は泣くしかないでしょうが、落ち着いたら母様の美しい容姿を引き継いで生まれたことに感謝するでしょう。
 私も、母様の様に美しく生まれてくれたお前に心底感謝してますよ。あぁ、男児でないと初めは嘆きましたが…公爵家にも嫁げてこうして危機も乗り越えられて…本当に良かったわ。」

 「あーー!さっさとこんな所出たいわーー!!アンタ達も聞いたでしょ?アイリは子爵家の令嬢になるの!もう犯罪者の孫娘じゃない、本物の貴族に戻るのよ!!分かったらさっさとこんな牢屋から出して、温かいベッドと食事を用意しなさいよ!!あとお風呂も!!全く、気が利かないわね!
 新しいお父様に会ったら、いの一番にアンタ達を処罰してもらうんだから!貴族のアイリ達をこんな目に合わせたんだもの、さっさという通りにしないと処刑するように言っちゃうんだからね!」


 絶望にむせび泣く娘や母の心情などどうとも思ってないのだろう…。
 厚かましく、図太いその姿は流石祖母と孫。とても良く似ていた。


 あぁ~~~あ、折角の捕まって絶望して弱っていく面白い所も、見納めかぁ~。

 一筋の光が差してしまった奴等は、体の方はまだしも目がランランと輝いていた。
 これは今からまた五月蠅くなるだろうな~と悪魔はつまらなそうに考えた。


 ────だが、本当にコイツ等と”あの家”の縁が結べて良かった。


 悪魔はその文字通りの存在らしく、ニタァッと嫌な笑みを浮かべ…実は人知れず気分が上がっていた。


 いやぁ、あの当主の犯罪内容知らなかったとはいえ、一緒に捕まったから一緒に処分されるかもと焦ったが良かったぁ~。
 ”処刑”なんてつまんねぇ最後にさせるとか、本当勿体無ぇもんな!
 次のステージとして色々物色して、折角イイトコロ見つけたのに無駄になるんじゃ…とか柄にもなく焦ったけど良かったぜ。
 
 出来る限り玩具(アイリ)とあの家の縁結んでやったけど、俺の玩具(アイリ)以外の人間は完全に干渉出来ねぇからどっちに転ぶか分かんなかったもんなぁ。

 本当、どこの誰だか知らねぇが後押ししてくれた奴に感謝しかねぇぜ!



 悪魔は鼻歌を歌いながら、上機嫌に寝転がり今後の展開を思って笑う。



 あぁ~~~♪玩具(アイリ)の歪む顔、早く見たいぜ♪サッサと迎えに来ねぇかなぁ~♪

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。