転生した復讐女のざまぁまでの道のり 天敵は自分で首を絞めていますが、更に絞めて差し上げます

はいから

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第2章 -少女期 復讐の決意-

91.件の琥珀

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 リリーナは自室にて、数日前に届いたルーカス王子からの手紙を読み返していた。

 前回のなんちゃって情報収集をした後、隣国の公務を終えて立ち寄られた際に”お祈りの時の様な、精神統一してると楽になるからお祈り効果あるかもよ!”といった旨を伝えていた。
 お父様から国王陛下に宛てて、お爺様から伺った話と特玉と思われるものの捜索&調達を早速始めているという報告もしているらしい。

 そんなこともあり、ルーカス王子からの手紙は側妃様の話が大部分を占めていた。


 ”「リリーにアドバイスしてもらったお祈りを、母様にお伝えしてみた。何分、寝込んでおられる時間が長いからそう頻繁には出来ていないが…以前よりは心なしか体調がいい様に見える。」”

 と書いてある文を見て、ホッとした。

 いくら特玉を長年身に着けていたとしても、私なんかより遥かに長い間床に臥せられているのだ…最悪の事態も近いかもと思っていたが、何とかまだ持ちこたえている様子に安堵する。


 幸い私は毎日意識がある為、欠かさず”お祈り”が出来ているが…意識のない日もある側妃様の場合だと、もっと長く掛かってしまうかもしれない。
 知らなかったとはいえもっと早くに力に慣れていたら…と後悔が募るリリーナだったが、ルーカス王子の手紙には読んで熱意が伝わる程の感謝の言葉が連なっており、落ち込む心を慰めてくれた。

 
 ”「最近父上達が多忙でこっちにも公務が沢山回ってくる様になった。バジル領近くの領地に用が出来たので、そちらにまたお邪魔する予定だ。エディも忙しそうだが、久々に鍛錬でもしようと伝えておいてくれ。──君の元気な姿を見れる様、俺もお祈りを始めよう。会えるのを楽しみにしているよ。」”

 とあったので、今度会った時にでも”お気遣い溢れるお言葉、ありがとうございます。”とお礼を言おうと思う。


 手紙が来た日からの計算と、副執事長からの伝達から明日か明後日には到着する様だ。
 最近父様の代わりに忙しくしている(といっても、小さな仕事だが)兄も、久々に気心知れる友人との時間を過ごせるのだ。良いリフレッシュになるとウキウキしていた。

 それに、もしかしたらそろそろ帰ってくるというダラス(モレッツ商会の商会長)達とタイミングが合うかもしれない!

 もしダラスが持ってきてくれた琥珀が、”特玉”に匹敵する力を持っていてくれれば…寝たきりとなっている側妃様もすぐに元の体調に戻られるだろう。
 私の為にと頑張ってくれているお父様達にはちょっと申し訳ないが、毎日お祈りできる私と危うい側妃様どっちが最優先か何て誰が見ても明らかである。



 (あら、いくらリリー大好き人間達でも、側妃のこと考えてないとは思わないけど~?
 多分半分にしてリリーと側妃どっちにも身に着けてもらうとか考えてるんじゃない?)

 まぁ、そうだろうね~。
 でもさ、どんな大きさかも、ましてやどれくらいの期間効果があるのかも分からないんじゃ…不安じゃない?
 だから今回確保した分は側妃様に持っててほしい。…病弱でも、ルーカス王子を出産されたんだよ?
 相当な頑張りと覚悟をしてらっしゃったと思うんだ。元気になって、いっぱい家族と過ごしてほしいよ。

 (…そうね。とっても強いカッコイイ”お母さん”だわね!元気な姿、私も見たくなっちゃった!
 元気になって、ニコニコ笑ってるお爺お婆になった王様達を見るのも、悪くないわね!)

 ふふふっ!でしょ?私もとっても素敵だと思う!
 ──それに、私”お母さん”にはずーーーっと幸せになって、ニコニコ笑っててほしいからさ。

 (…リリー。)



 どこか寂しそうに笑うリリーナに、リベアはいつも回る口は動かず何も言えなかった。
 こんな時、以前の様に実体があれば抱きしめてあげられるのにな…とちょっぴり悔しかった。



 二人でしんみりしていると、コンコンッとドアがノックされた。

 「リリーお嬢様、ダラス商会長がお戻りになりました。前触れもなく申し訳ないが、至急ご挨拶だけでもと仰っておりますが…いかがされますか?一応、サロンの方に通してありますが…。」

 まさに噂をすれば、な展開にビックリした。
 シャルがリリーナの体調を伺う様に尋ねてきたので、速攻でOKを出してサロンに向かった。



 ◇


 
 「リリーお嬢様!お久しぶりです。…いやぁ、一時お会いしてない間に益々お美しくなりましたね。
 久々の麗しいお姿、ちょっと衝撃受けますね。今回は行ったことのない北方地方へ滞在しましたが、やはりお嬢様より美しい人もモノもありませんでしたよ。」

 普段は弟であるダストン副商会長が言う様な軽口を叩くダラスに、相当お疲れの様だ…と勘繰る。
 そんなに疲れているのに…きっと休まず屋敷に直行してくれたのだろう、本当に申し訳ない。

 「久しぶりです、ダラスさん。そんなお世辞まで言わせてしまってごめんなさい…疲れているのに真っ直ぐ屋敷に来てくれたのでしょう?本当にありがとうございます。今日はジェシカとダッシュとゆっくり休んでね。」


 確かに疲れていて、自分でもガラじゃない事をしたが…言ったことは本心であったダラスはポリポリと頬を掻きながら、シャルや自身の部下と視線を合わせて苦笑した。

 
 「…いえ、すいません柄にもないことをしました。お嬢様も相変わらずの様で安心しました。
 キース様方だけでなく、ガンディール様もご不在とは知りませんで…突然のご訪問失礼しました。
 リリーお嬢様もご存じでいらっしゃると聞きましたので、先に例のモノをお持ちしました。
 ──こちらになります、どうぞお手に取ってご確認ください。」

 控えていた部下が持ってきた箱を開け、恭しくリリーナの前に置いた。

 ベルベット生地のクッションに佇むのは、所々薄黄色がありつつも透明に輝く黄金…とても美しい琥珀の腕輪であった。
 てっきりネックレスや指輪の様な、小さい物だとばかり思っていたリリーナは驚いたが、そぅっとその美しい黄金色を手に取った。

 すると、自身の内側から何かが抜けていく感覚を覚える。
 少し気怠かった体が熟睡した後、朝日を浴びて起きた様な清々しさすら感じる。



 ──これは、本物だ。本物の特玉だ!!!
 しかもこの大きさ…確実に数十年は効果がありそうだ!!

 (やったわね!リリー!!しかもめちゃくちゃ綺麗じゃない!大獣と同化した琥珀って聞いたから、てっきり趣味の悪いアクセサリーだと思ってたのに!!私が入りたいくらいよ!!)

 二人で内心興奮していたが、何だかリベアの熱量に無いとは思うが危機感を感じたので早々にダラスにお礼を言う。


 「素晴らしいわ!!何て綺麗なんでしょう!!ダラスったら、私なんかよりはるかに美しいモノを持っておいてあんな冗談を言ったのね!!
 本当にありがとうっ私が、お父様が探していたのはこれで間違いないわ!!本当にありがとう!!
 国王陛下も、ルーカス王子も喜ばれるわ!!お父様に費用は勿論、お礼として倍のお値段を差し上げる様に言っておくわね!流石モレッツ商会、本当に素晴らしいわ!!」

 腕輪を置いてダラスの両手を握り、興奮のままにブンブンとその手を振るリリーナの姿に…微笑ましい視線を送る者、うっとりする者、顔を赤くする者、「お嬢様可愛いぃぃぃ!!」と小声で発狂する者など様々だ。


 微笑ましくリリーナの興奮する姿を見つめ、”(あぁ、無事にお届けできて良かった)”と思っていたダラスだったが、よくよくリリーナの発言を思い出し慌てる。

 「お、お嬢様?こちらのお品はお嬢様のモノになるのではなかったのですか?なぜ国王陛下やルーカス王子の名前が…。ガンディール様からは何も…。」

 「あぁ、そうよね。ごめんなさいっこれは秘密だったの。万が一、求めていたモノが手に入らなかった時、国王陛下達からの依頼だと分かっているとモレッツ商会の方々にご迷惑がかかると思って…。
 これはね、国王陛下とルーカス王子が内緒で側妃様にプレゼントしたいと仰っていたモノなの!
 何でも以前陛下が側妃様にプレゼントされたこの琥珀のネックレスを、大変気に入られたみたいでね?
 他国にも広く支店を持っているモレッツ商会に頼みたいって、王子から私経由でお父様に依頼されてたのよ。
 ふふ、驚かせてごめんなさい!勿論、該当のモノが手に入らなくても大丈夫だったわ!
 ”出来れば”っていうご依頼だったから。事後報告になってごめんね?
 ちょうど明日明後日にルーカス王子がいらっしゃるから、その時にお渡しするわ!
 モレッツ商会のこと、ちゃーーーんと褒めて宣伝しておくからねっ!」

 「そ、そうだったんですか。それは良かったです、側妃様も気に入られると嬉しいです。」


 まさかの展開に流石のダラスも少し驚いた様子だったが、本当に嬉しそうなリリーナの姿を見て最後はふんわり微笑んで終わった。


 本当は側妃様へ渡すのはリリーナの独断なのだが…ガンディールとリリーナしか事情を知らない為、ここにいる者達はすんなり流してしまった。
 
 リリーナは一つの大きな心配事が解決して、るんるんっ♪と上機嫌になりルーカス王子の訪問を今か今かと期待するのであった。




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