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第2章 -少女期 復讐の決意-
81.ボディーシャボン
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少し時を遡ったとある日。
キース達が出発し、獣人達を含む兵士達がポートマン家へ少数精鋭を送る前。
久しぶりにダストンではなく妻でありリリーナの乳母でもあったマリアが、ララとジェシカ、そして今年2歳になるジェシカの息子のダッシュ達を連れて報告会がてら遊びに来ていた。
何でも副商会長であるダストンは、今は北方に出張している商会長の兄に代わって業務をしているだけでなくお父様からの頼まれごとがあるらしく、とっても忙しいのだそうだ。
そんなこともあって、普段はモレッツ商会の事務方をしているマリアと育休中の元・ワグナー商会バジル支店長であるジェシカが代わって報告会にやってきてくれたのだ。
今日はお母様もいるし、何だか女子会みたいでワクワクする。
ナーデルはプレデビュタントの時に同年代の男の子たちと仲良くなってから、私やお母様よりもお兄様やお父様の後ろについて行くようになった。
少し・・・いや大分寂しいが、こうして男の子は成長していくんだなぁと嬉しくもある。
「ワフッ!」
落ち込んでいるように見えたのだろうか、シルバが”俺がいるだろ!”とでも言うように膝を突いてくれた。
本当に、こっちの弟も可愛らしい。
「ふふふっ、そうね!シルバがいるから寂しくないわ、ありがとうね。」
パタパタと尻尾を振って、上機嫌にじゃれてきたのでワシャワシャと撫でてあげる。
「相変わらず、ご兄弟仲がよろしいですね。お嬢様も思ったよりずっとお元気そうで、安心しました。」
マリアがくすくすと笑いながら、優しい声色で労わってくれた。
小さい頃から耳に馴染んでいるその声に、どこかホッとするから私はマリアが大好きなんだなぁとしみじみ思った。
「本当、私も勿論ですが夫も出張先からお嬢様のお加減はどうだと毎回手紙に書いてくるんですよ?ふふ、大丈夫だと今度返事に書いてあげなきゃ。」
もうすっかりお母さんの顔になったジェシカも、おかしそうに笑っている。
「私も!ダッシュと兄弟じゃないけど、お嬢様たちと同じくらい仲が良いですよ?ねぇ~ダッシュ!」
「あぅあ~!な~よ!な~よ!キャッキャッ♪」
ドライヤーや最近はトースターの様なものも、レイナの父である男爵と一緒に次々と開発していっている天才少女のララと、従姉弟になるダッシュも仲良しそうで何よりだ。
「あらあら、ララとダッシュは本当の兄弟みたいね。・・・それにしても、皆に心配かけてたみたいね?リリー。」
「はい・・・皆、心配してくれてありがとう。少しづつ良くなってるから、安心してね!」
(あら!!私だってシルバに負けないくらいリリーと仲いいわよ??)
「根本的に治ったわけじゃないけれど、ここ最近は安定しているものね。・・・私の父にも協力してもらえるようになったし。これから頑張りましょうね?リリー。」
お母様の言葉もそうだが、皆からこんなに心配されてたとは・・・。
何だか申し訳ないような、でもどこかくすぐったい感情で胸がいっぱいになった。
リベアも、張り合わなくても大丈夫だから!相棒なんだからヤキモチ焼かないで堂々としててね!
(あら!!当然よね♪一応言ってみただけよ~ん♪)
「もちろんです!これから絶対に元気になって、皆に心配されないように頑張ります!」
「ワフッ!アォーン!」
リリーとシルバが見事にタイミングが合って、特にシルバが得意げにしている。
そんな可愛らしい姿を見て、皆でホッコリした気持ちになった。
「さぁ!皆でお茶しながら、報告会を始めましょ!」
◇
基本的に大人組が報告会、子ども組はダッシュのお世話をしていた。
ちょっと離れたところに敷物を敷いて遊んでいるので、報告会の話も丸聞こえ状態。
今回の目玉は”ボティーシャボン”のサンプル紹介だ。
いつの間に?!と思うかもしれないが、結構昔から今日までに色々とあったのだ。
花油が商品として安定的に生産・販売出来てきた頃に、またまたポロっと言ってしまったのが始まりだ。
「シャボンの葉っぱが固体や液体になってたら、もっと使いやすいのにね~。」
花油やごま油、そして生クリームにアイスクリームなど・・・調子に乗って色々と発案をしていた時期だったこともあり、子どもの独り言とはいえ商人の耳はリリーナの呟きを聞き逃さなかった。
「お嬢様???ちょっと詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?・・・具体的にはどんな感じとかイメージなどありますか?これが良いんじゃないかという材料は?何でもいいですのでご意見をお聞かせいただきたい!!!」
ちょっと・・・(いや本当はかなり)ビックリしたけど、不自然にならない程度に意見を言ってみた。
「ん~、油って冷えたら固まるでしょう?植物は美容にイイものが多いし・・・花油とシャボンの葉っぱ煮詰めたりしたら、固形にならないかなぁ~?あと、ザインがジャガガをすりおろした物をスープに入れたらトロトロした液体になったの!ジャガガ以外にそんな特性があるものと混ぜたら、液体にならないかなぁ~?」
それからすぐに、花油の工場近くにちょっとした研究所を作って色々と試行錯誤してくれたみたいだ。
・・・滅茶苦茶忙しかっただろうに、申し訳ない。
でも!!!前世の石鹸やボディーソープに慣れてる身としては・・・どうしても欲しかったりするんだ!
それに葉っぱだとゴミ出るし、大家族だとその量も凄いことになるし!ね!!
しばらくすると、石鹸は早い段階でサンプルも上がりその出来は問題なく、石鹸(シャボン)として商品化も早々に行った。
販売してすぐに大人気商品となり、一時期生産が追い付かず入荷待ちの状態が続いたくらいだ。
特に医療現場や飲食業など、日常的に何度も手を洗う人達からの熱狂が凄すぎた。
「ゴミが出なくてイイ!!」「医療関係者に優先的に販売を!!」「使っても使っても全然無くならない!!これがこの安さ?!ありがとう!!」「うちの食堂の無料券上げるから!!こっちに融通して!!」
コイツはえらいこっちゃ、と他領の花油生産で業務提携している所に助けを求め、今では花油生産をしている所で石鹸生産も一緒にやってもらっている。
バジル領だけでなく、他領でも生産ラインが整い・・・ようやく需要と供給が追い付いてきた。
使いどころによっては、シャボンの葉のままの方が使いやすい所もあるが・・・今では一家に一つは石鹸が置いてあるようになった。
今後は他国への輸出に重点を置き、また他国でも花油と石鹸生産はセットで業務提携していくみたいだ。
──────そんなドタバタで、ボディーシャボンの開発は大幅に遅れていた。
しかし、ようやく・・・ようやく石鹸の混乱が落ち着きしばらくたった今、第一弾のサンプルが完成したのだ!
リリーナは今までの(主にモレッツ・ワグナー商会の人達の)苦労を思い浮かべ、内心感激の涙を流していた。
メイドが桶に水を張ってタオルを持って待機している様子を見守る。
キャッキャッとはしゃいでいるお母様達の様子を見ると、今のところ成功の様だ。
今夜からサンプルを使うことになってるので、お風呂が楽しみである。
実は石鹸の大成功後、”液体の石鹸・・・今更いる?”という雰囲気になったのだが、そこはゴリ押しして通してもらった。
ただ固体を液体にするだけだと、固形より消費が早い事もありインパクトが弱いな・・・と思ったので、”いっそのこと美容に振り切って高級思考にすれば良いのでは?”という意見に至った。
それからは早かった。
溶けると液体化するという植物の樹液を見つけ、ラベンダーやバラなど美容にイイと思われる花オイルを抽出して混ぜ、とてもいい匂いのする”ボディーシャボン”が完成した。
モレッツ商会には珍しく、女性向けの商品で・・・お母様達もテンションが高めだ。
ララと「成功したみたいで良かったね~」と笑い合った。
ダッシュはシルバの尻尾がお気に入りみたいで、ララの開発してる話を聞きつつ報告会の話も聞いたりととても充実した一時を過ごした。
◇
─────報告会の途中からカヨとチャコ、大人組にはレイナも加わって本当に女子会と化していた。
今はレイナが持ってきたザイン作のおやつを食べてまったりタイムだ。
「はぁ~、やっぱり美味しいです♪本当、バジル領に嫁いでよかった~♪幸せです♪」
「やだ、ジェシカったら!・・・でも分かるわぁ~、ザインさんのおやつは私も屋敷で働いてる時からとっても楽しみにしてたから。もう別のお店のお菓子が食べれなくなって・・・大変だったわ。」
「そうですよね、私も初めはビックリしました!あのオッサンが作ってるなんて信じられなかったけど。・・・最近ザインさんのおやつに慣れてしまった自分が怖いですわ。」
他領からバジル領に移った面々が、おやつを食べながらしみじみと言葉を漏らしていた。
「おいち~♪」
「美味しいね~!初めはザインさん怖かったけど、こんなに美味しいもの作れるんだもん!すぐに好きになっちゃった!」
「確かに、ララはいっつも私の後ろでお礼を言ってたよね~!懐かしいなぁ♪」
(私見てたわよ!アンタ達がいなくなって、あのオジサンちょっと涙目になってたもの!)
それは初耳だ、ザイン・・・まぁ今は大丈夫だし、うん。
「それにしても困ったわ~、今回のボディーシャボン・・・石鹸(シャボン)の時の二の舞になる気がするわ!!とーーーーってもいい匂いで、泡立ちも凄いんですもの!割高でもこれはすぐに売れちゃうわ・・・私達が使う分の在庫がなくなったらどうしましょう。もうコレ無しでお風呂に入れなくなりそうだわ。」
頬に手を当て、「はぁ、」とため息を吐きながら本当に心配そうにエマが呟いた。
その様子を見て、マリアとジェシカも同意する。
「はい、エマ様。私達もそれを危惧しておりまして・・・。ですが男性達はまったくと言っていい程、このボディーシャボンの価値を分かってないんです!!私の夫なんて「ん~、確かにいい匂いだけど・・・。匂いがして液体なだけで、石鹸よりこんなに値が張るんだよ?一部の見栄っ張りな貴族にしか売れないと思うなぁ。」などと言ったんですよ!?信じられない・・・。「それでも副商会長ですか」と大喧嘩になりました。」
「あ~、分かるわ~!うちはそこまで露骨じゃなかったけど、「今すぐ生産ラインを倍確保すべきよ!!」って言っても乗り気じゃなかったわね~。」
二人の商会長、副商会長である旦那の様子を耳にしたエマは、わなわなと震えた。
「何てこと!!!この価値を分からない男達に任せていたら、私達がボディーシャボンを日常的に使うことが出来なくなってしまうわ!!こうしちゃいられないっすぐにガンディールに直談判してきますっ!!!」
──────こうしてこの日の報告会(もとい女子会)はお開きとなり、翌日ガンディールより直々にモレッツ商会・ワグナー商会へ”ボディーシャボン”の生産ライン拡大を指示されたのである。
◇
Side モレッツ商会員
モレッツ商会の幹部の一人は数人の部下とバジル家の護衛を連れて、南方の国へ出張に出ていた。
今北方へ出張しているダラス商会長も勿論だが、バジル家御用達であるモレッツ商会が出張する際はこうしてバジル家が心強い護衛を付けてくださる。
普通御用達商会だからといってここまでするものではないのだが、急激に商会規模が大きくなりセキュリティの面まで正直手が回っていなかった所を、「昔から世話になっているし、これからもバジル領になくてはならない商会だからな。」と当たり前に手を差し伸べてくれたのだ。
商会長は勿論、俺達平商人も含め「あぁ、バジル家と商売をしていてよかった」と心から感動したのを今でも鮮明に覚えている。
副商会長の愛娘で商会のアイドルであるララお嬢様とリリーお嬢様が誤って誘拐された時も、顔を真っ青にして土下座で謝る俺達に「ララが無事で本当に良かった、これから同じことは起きないから安心しなさい。」と怒ることなく・・・逆に労わってくれた。
初めは辺境の地で商売なんて・・・と思っていた者達もいたが、今となっては一人残らずバジル家の皆様が大好きになった。
それに従業員のことを見捨てず、質の悪い相手だったら自ら矢面に立って守ってくれる商会長も副商会長も尊敬しているし、同僚との絆も深いと自負している。
──────何が言いたいかと言うと、俺達はバジル領が、バジル家が・・・モレッツ商会が大大大大好きだってことだ!!
今回の出張は珍しく、エマ様の強い要望で生産ラインを拡大することになった”ボディーシャボン”の件が関わっている。
王国内では花油の産地で石鹸を生産しているのだが、現在花油と石鹸で手一杯の状態だ。
追々ボディーシャボンの生産もする予定だが、やっと石鹸の需要と供給が追い付いてきた今は・・・正直手も時間も足りない状態だ。
エマ様を初め、女性陣の強い勧めもありまずは他国にて生産し国内に流通することに決まった。
ちょうどシャボンの葉の仕入れ先を増やそうと話し合っていた所だったため、並行してボディーシャボンの工場を他国に構えることにしたのだ。
他国だと王国よりも人件費や土地代が格安で済むので、その分利益も見込めるだろう。
正直、ボディーシャボンがそこまで売れると思っていないので、低コストで済むのであればそれに越したことは無い。
王国よりは格安で、しかし現地調査した結果よりは大分上乗せした賃金と労働条件で求人をかけたところ、想像よりも優秀な人材がかなり集まったらしい。
今回の出張で確認することになっているので、今から楽しみだ。
今日は月が綺麗に照っているな~などと話して、これから行く新たな工場に胸を膨らませていた。
キース達が出発し、獣人達を含む兵士達がポートマン家へ少数精鋭を送る前。
久しぶりにダストンではなく妻でありリリーナの乳母でもあったマリアが、ララとジェシカ、そして今年2歳になるジェシカの息子のダッシュ達を連れて報告会がてら遊びに来ていた。
何でも副商会長であるダストンは、今は北方に出張している商会長の兄に代わって業務をしているだけでなくお父様からの頼まれごとがあるらしく、とっても忙しいのだそうだ。
そんなこともあって、普段はモレッツ商会の事務方をしているマリアと育休中の元・ワグナー商会バジル支店長であるジェシカが代わって報告会にやってきてくれたのだ。
今日はお母様もいるし、何だか女子会みたいでワクワクする。
ナーデルはプレデビュタントの時に同年代の男の子たちと仲良くなってから、私やお母様よりもお兄様やお父様の後ろについて行くようになった。
少し・・・いや大分寂しいが、こうして男の子は成長していくんだなぁと嬉しくもある。
「ワフッ!」
落ち込んでいるように見えたのだろうか、シルバが”俺がいるだろ!”とでも言うように膝を突いてくれた。
本当に、こっちの弟も可愛らしい。
「ふふふっ、そうね!シルバがいるから寂しくないわ、ありがとうね。」
パタパタと尻尾を振って、上機嫌にじゃれてきたのでワシャワシャと撫でてあげる。
「相変わらず、ご兄弟仲がよろしいですね。お嬢様も思ったよりずっとお元気そうで、安心しました。」
マリアがくすくすと笑いながら、優しい声色で労わってくれた。
小さい頃から耳に馴染んでいるその声に、どこかホッとするから私はマリアが大好きなんだなぁとしみじみ思った。
「本当、私も勿論ですが夫も出張先からお嬢様のお加減はどうだと毎回手紙に書いてくるんですよ?ふふ、大丈夫だと今度返事に書いてあげなきゃ。」
もうすっかりお母さんの顔になったジェシカも、おかしそうに笑っている。
「私も!ダッシュと兄弟じゃないけど、お嬢様たちと同じくらい仲が良いですよ?ねぇ~ダッシュ!」
「あぅあ~!な~よ!な~よ!キャッキャッ♪」
ドライヤーや最近はトースターの様なものも、レイナの父である男爵と一緒に次々と開発していっている天才少女のララと、従姉弟になるダッシュも仲良しそうで何よりだ。
「あらあら、ララとダッシュは本当の兄弟みたいね。・・・それにしても、皆に心配かけてたみたいね?リリー。」
「はい・・・皆、心配してくれてありがとう。少しづつ良くなってるから、安心してね!」
(あら!!私だってシルバに負けないくらいリリーと仲いいわよ??)
「根本的に治ったわけじゃないけれど、ここ最近は安定しているものね。・・・私の父にも協力してもらえるようになったし。これから頑張りましょうね?リリー。」
お母様の言葉もそうだが、皆からこんなに心配されてたとは・・・。
何だか申し訳ないような、でもどこかくすぐったい感情で胸がいっぱいになった。
リベアも、張り合わなくても大丈夫だから!相棒なんだからヤキモチ焼かないで堂々としててね!
(あら!!当然よね♪一応言ってみただけよ~ん♪)
「もちろんです!これから絶対に元気になって、皆に心配されないように頑張ります!」
「ワフッ!アォーン!」
リリーとシルバが見事にタイミングが合って、特にシルバが得意げにしている。
そんな可愛らしい姿を見て、皆でホッコリした気持ちになった。
「さぁ!皆でお茶しながら、報告会を始めましょ!」
◇
基本的に大人組が報告会、子ども組はダッシュのお世話をしていた。
ちょっと離れたところに敷物を敷いて遊んでいるので、報告会の話も丸聞こえ状態。
今回の目玉は”ボティーシャボン”のサンプル紹介だ。
いつの間に?!と思うかもしれないが、結構昔から今日までに色々とあったのだ。
花油が商品として安定的に生産・販売出来てきた頃に、またまたポロっと言ってしまったのが始まりだ。
「シャボンの葉っぱが固体や液体になってたら、もっと使いやすいのにね~。」
花油やごま油、そして生クリームにアイスクリームなど・・・調子に乗って色々と発案をしていた時期だったこともあり、子どもの独り言とはいえ商人の耳はリリーナの呟きを聞き逃さなかった。
「お嬢様???ちょっと詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?・・・具体的にはどんな感じとかイメージなどありますか?これが良いんじゃないかという材料は?何でもいいですのでご意見をお聞かせいただきたい!!!」
ちょっと・・・(いや本当はかなり)ビックリしたけど、不自然にならない程度に意見を言ってみた。
「ん~、油って冷えたら固まるでしょう?植物は美容にイイものが多いし・・・花油とシャボンの葉っぱ煮詰めたりしたら、固形にならないかなぁ~?あと、ザインがジャガガをすりおろした物をスープに入れたらトロトロした液体になったの!ジャガガ以外にそんな特性があるものと混ぜたら、液体にならないかなぁ~?」
それからすぐに、花油の工場近くにちょっとした研究所を作って色々と試行錯誤してくれたみたいだ。
・・・滅茶苦茶忙しかっただろうに、申し訳ない。
でも!!!前世の石鹸やボディーソープに慣れてる身としては・・・どうしても欲しかったりするんだ!
それに葉っぱだとゴミ出るし、大家族だとその量も凄いことになるし!ね!!
しばらくすると、石鹸は早い段階でサンプルも上がりその出来は問題なく、石鹸(シャボン)として商品化も早々に行った。
販売してすぐに大人気商品となり、一時期生産が追い付かず入荷待ちの状態が続いたくらいだ。
特に医療現場や飲食業など、日常的に何度も手を洗う人達からの熱狂が凄すぎた。
「ゴミが出なくてイイ!!」「医療関係者に優先的に販売を!!」「使っても使っても全然無くならない!!これがこの安さ?!ありがとう!!」「うちの食堂の無料券上げるから!!こっちに融通して!!」
コイツはえらいこっちゃ、と他領の花油生産で業務提携している所に助けを求め、今では花油生産をしている所で石鹸生産も一緒にやってもらっている。
バジル領だけでなく、他領でも生産ラインが整い・・・ようやく需要と供給が追い付いてきた。
使いどころによっては、シャボンの葉のままの方が使いやすい所もあるが・・・今では一家に一つは石鹸が置いてあるようになった。
今後は他国への輸出に重点を置き、また他国でも花油と石鹸生産はセットで業務提携していくみたいだ。
──────そんなドタバタで、ボディーシャボンの開発は大幅に遅れていた。
しかし、ようやく・・・ようやく石鹸の混乱が落ち着きしばらくたった今、第一弾のサンプルが完成したのだ!
リリーナは今までの(主にモレッツ・ワグナー商会の人達の)苦労を思い浮かべ、内心感激の涙を流していた。
メイドが桶に水を張ってタオルを持って待機している様子を見守る。
キャッキャッとはしゃいでいるお母様達の様子を見ると、今のところ成功の様だ。
今夜からサンプルを使うことになってるので、お風呂が楽しみである。
実は石鹸の大成功後、”液体の石鹸・・・今更いる?”という雰囲気になったのだが、そこはゴリ押しして通してもらった。
ただ固体を液体にするだけだと、固形より消費が早い事もありインパクトが弱いな・・・と思ったので、”いっそのこと美容に振り切って高級思考にすれば良いのでは?”という意見に至った。
それからは早かった。
溶けると液体化するという植物の樹液を見つけ、ラベンダーやバラなど美容にイイと思われる花オイルを抽出して混ぜ、とてもいい匂いのする”ボディーシャボン”が完成した。
モレッツ商会には珍しく、女性向けの商品で・・・お母様達もテンションが高めだ。
ララと「成功したみたいで良かったね~」と笑い合った。
ダッシュはシルバの尻尾がお気に入りみたいで、ララの開発してる話を聞きつつ報告会の話も聞いたりととても充実した一時を過ごした。
◇
─────報告会の途中からカヨとチャコ、大人組にはレイナも加わって本当に女子会と化していた。
今はレイナが持ってきたザイン作のおやつを食べてまったりタイムだ。
「はぁ~、やっぱり美味しいです♪本当、バジル領に嫁いでよかった~♪幸せです♪」
「やだ、ジェシカったら!・・・でも分かるわぁ~、ザインさんのおやつは私も屋敷で働いてる時からとっても楽しみにしてたから。もう別のお店のお菓子が食べれなくなって・・・大変だったわ。」
「そうですよね、私も初めはビックリしました!あのオッサンが作ってるなんて信じられなかったけど。・・・最近ザインさんのおやつに慣れてしまった自分が怖いですわ。」
他領からバジル領に移った面々が、おやつを食べながらしみじみと言葉を漏らしていた。
「おいち~♪」
「美味しいね~!初めはザインさん怖かったけど、こんなに美味しいもの作れるんだもん!すぐに好きになっちゃった!」
「確かに、ララはいっつも私の後ろでお礼を言ってたよね~!懐かしいなぁ♪」
(私見てたわよ!アンタ達がいなくなって、あのオジサンちょっと涙目になってたもの!)
それは初耳だ、ザイン・・・まぁ今は大丈夫だし、うん。
「それにしても困ったわ~、今回のボディーシャボン・・・石鹸(シャボン)の時の二の舞になる気がするわ!!とーーーーってもいい匂いで、泡立ちも凄いんですもの!割高でもこれはすぐに売れちゃうわ・・・私達が使う分の在庫がなくなったらどうしましょう。もうコレ無しでお風呂に入れなくなりそうだわ。」
頬に手を当て、「はぁ、」とため息を吐きながら本当に心配そうにエマが呟いた。
その様子を見て、マリアとジェシカも同意する。
「はい、エマ様。私達もそれを危惧しておりまして・・・。ですが男性達はまったくと言っていい程、このボディーシャボンの価値を分かってないんです!!私の夫なんて「ん~、確かにいい匂いだけど・・・。匂いがして液体なだけで、石鹸よりこんなに値が張るんだよ?一部の見栄っ張りな貴族にしか売れないと思うなぁ。」などと言ったんですよ!?信じられない・・・。「それでも副商会長ですか」と大喧嘩になりました。」
「あ~、分かるわ~!うちはそこまで露骨じゃなかったけど、「今すぐ生産ラインを倍確保すべきよ!!」って言っても乗り気じゃなかったわね~。」
二人の商会長、副商会長である旦那の様子を耳にしたエマは、わなわなと震えた。
「何てこと!!!この価値を分からない男達に任せていたら、私達がボディーシャボンを日常的に使うことが出来なくなってしまうわ!!こうしちゃいられないっすぐにガンディールに直談判してきますっ!!!」
──────こうしてこの日の報告会(もとい女子会)はお開きとなり、翌日ガンディールより直々にモレッツ商会・ワグナー商会へ”ボディーシャボン”の生産ライン拡大を指示されたのである。
◇
Side モレッツ商会員
モレッツ商会の幹部の一人は数人の部下とバジル家の護衛を連れて、南方の国へ出張に出ていた。
今北方へ出張しているダラス商会長も勿論だが、バジル家御用達であるモレッツ商会が出張する際はこうしてバジル家が心強い護衛を付けてくださる。
普通御用達商会だからといってここまでするものではないのだが、急激に商会規模が大きくなりセキュリティの面まで正直手が回っていなかった所を、「昔から世話になっているし、これからもバジル領になくてはならない商会だからな。」と当たり前に手を差し伸べてくれたのだ。
商会長は勿論、俺達平商人も含め「あぁ、バジル家と商売をしていてよかった」と心から感動したのを今でも鮮明に覚えている。
副商会長の愛娘で商会のアイドルであるララお嬢様とリリーお嬢様が誤って誘拐された時も、顔を真っ青にして土下座で謝る俺達に「ララが無事で本当に良かった、これから同じことは起きないから安心しなさい。」と怒ることなく・・・逆に労わってくれた。
初めは辺境の地で商売なんて・・・と思っていた者達もいたが、今となっては一人残らずバジル家の皆様が大好きになった。
それに従業員のことを見捨てず、質の悪い相手だったら自ら矢面に立って守ってくれる商会長も副商会長も尊敬しているし、同僚との絆も深いと自負している。
──────何が言いたいかと言うと、俺達はバジル領が、バジル家が・・・モレッツ商会が大大大大好きだってことだ!!
今回の出張は珍しく、エマ様の強い要望で生産ラインを拡大することになった”ボディーシャボン”の件が関わっている。
王国内では花油の産地で石鹸を生産しているのだが、現在花油と石鹸で手一杯の状態だ。
追々ボディーシャボンの生産もする予定だが、やっと石鹸の需要と供給が追い付いてきた今は・・・正直手も時間も足りない状態だ。
エマ様を初め、女性陣の強い勧めもありまずは他国にて生産し国内に流通することに決まった。
ちょうどシャボンの葉の仕入れ先を増やそうと話し合っていた所だったため、並行してボディーシャボンの工場を他国に構えることにしたのだ。
他国だと王国よりも人件費や土地代が格安で済むので、その分利益も見込めるだろう。
正直、ボディーシャボンがそこまで売れると思っていないので、低コストで済むのであればそれに越したことは無い。
王国よりは格安で、しかし現地調査した結果よりは大分上乗せした賃金と労働条件で求人をかけたところ、想像よりも優秀な人材がかなり集まったらしい。
今回の出張で確認することになっているので、今から楽しみだ。
今日は月が綺麗に照っているな~などと話して、これから行く新たな工場に胸を膨らませていた。
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「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
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