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第2章 -少女期 復讐の決意-
73.一筋の光
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リリーナ達がコアスの森の祖父達の下を訪れて暫く経った。
一家で王都に行っていたこともあり、ガンディールやエマが溜まった執務をこなしつつ、今度はエディとナーデルも(ガンディールは不参加だったが)一緒に祖父達の所に会いに行った。
祖父であるマローはエディとナーデルもそれはそれは可愛がった。
特に兄弟で一番エマに似ているナーデルを、一番幼いこともあるだろうが猫可愛がりしていた。
「お祖父ちゃん、今後お家に遊びに来て!一緒にお菓子食べよ!!」と言われて、すぐに承諾していた。
「おいおい、あんなに森から出ることを嫌ってた長が…」「自分が現役の内は何があっても一族から離れないって言ってたのに…」「恐るべし天使パワー」「ナーデルちゅわん可愛す」・・・などなど、一族の人達が驚いていた。
実の娘であるエマは、ガンディールと結婚した時式にも来てくれなかった父親に複雑な視線を送っていた。
───このチャンスを機に(?)一族の次の長候補である男を中心とした体制が整い、マローと数人が屋敷に遊びに来れるようになったそうだ。
今は拠点の移動がある為、まだ屋敷に来てないがバジル家一同その時を心待ちにしている。
エディとナーデルはまだ日にちも決まっていないのに、ザインにアレコレと当日のメニューを口出ししていた。
ガンディールを中心に、バジル家の主力達はマローからの話で明らかになった”特玉”なるものを取るために色々と行動に移し始めた。
その”特玉”が確実に手に入ることができるものが”長年生きていた獣”だということで、コアスの森の巡回に対象の獣の捜索を加えた。
その獣の討伐は難しいが、老衰しないか・どれほどの数いるのかなどを調査する為だ。
コアスの森以外でと考えると、この王国内では入手は難しいかもしれないと、次に国境関係なく活動する冒険者や一部商人にも協力を求めた。
この世界にはいわゆる”ギルド”の様な機関がない。商人であれば”商人協会”なる組合があるので、信用のおけるバジル領の協会を中心に対象の獣の情報を集めている。
冒険者へのアプローチは主に酒場や肉の卸業者・商店を中心に行っているようだ。
ザインや数人の使用人も、旅をしていた頃の知り合いなどに鳥便を使って連絡を取り精一杯働きかけてくれている。
──────なんだか申し訳ないけど嬉しいなぁ、と感じている当の本人リリーナは若干体調は悪いものの寝込む程ではない日々を送っていた。
そんな中、プレデビュタントでうやむやに別れたルーカス王子がバジル領に遊びに来た。
本当はクリス王子も来たがったらしいが、王太子としての教育とプレデビュタントの日の罰として外出許可が出なかったらしい。
テラスで日光を浴びお茶をしながら、その話をルーカスから聞いていた。
ルーカス王子は本当にフェミニストらしい、年上とはいえまだまだ少年ながらリリーナを労り椅子を引いたりと紳士でスマートなエスコートを受け、衝撃を受けていた。
(ちょっとちょっと!!本当イイ感じじゃない!それに優しくて…幼いながらにイイ男!リリーナ、この子は逃がしちゃダメよ!こんな良い物件中々ないわ!!)
イヤイヤ、そりゃ王子様だもの。確かにビックリしたけど、これがロイヤルの力なのかも…。
クリス王子も数年したらルーカス王子みたいになるのかなぁ?王家の教育は本当凄い。
リベアはルーカス推しのようだ。
普段恋バナなんか滅多にしないリベアだが、ルーカスがいる時は中々テンションが高い。
そんなリベアは現在お引越しをして、髪飾りに付いている。
グレンから誕生日プレゼントにもらった小粒の白い花々が付いている、可愛らしく可憐な髪飾りはリベアのお眼鏡に適ったようだ。
「…まだまだ体調が悪いと聞いたが、思ったより大丈夫そうで良かったよ。リリー、俺がいるからと無理はしないでくれ。遠慮なく体調が悪くなったら休んで欲しい。お願いだ、いいね?」
何だか心なしかキラキラしたエフェクトが見える様な王子様オーラに、リリーナは思わず頬を染めた。
「だ、大丈夫ですわ。お言葉に甘えて、自分の体調に嘘はつきませんので。・・・お気遣い、ありがとうございます。」
リリーナの返事にどこかホッとした様子で、ルーカスはニッコリと笑みを浮かべた。
「そうか、良かった。・・・母上の様に寝たきりになったらどうしようと・・・。」
思わずこぼれてしまったのか、ルーカス王子の口からリリーが推測していた通りの言葉が出てきた。
やはり……側妃様は同じ体質なのか。何だか納得だ。愛する母親と同じ症状の少女がいれば、そりゃ気になるに決まってる。
(あら、そういうこと?なぁんだっ残念!王子様とリリーが結婚したら、可愛い人形とか綺麗な宝石がいっぱい見れると思ったのに!まあ、リリーの可愛さなら他のイイ男も引っ掛けられるわよ!次行きましょ次!)
え??私振られた??と思う様な慰めをリベアから受け取ると、ちょうどいい機会なのでは?と思い至る。
側妃様が同じ体質だとしたら、色々と聞きたいことがある。
この際一番近くで見ていたであろうルーカス様に色々と聞いてしまおう。
「あの…ルーカス様。お母様というと……もしかして側妃様も私と同じ体質なのでしょうか?」
「あっ・・・聞こえてしまったか?すまない…これは誰にも言ってはいけないと言われていたんだが…ここは安心できて、つい気が緩んだようだ。ガンディールやマシュー達は知っているし、リリーと同じということで色々と協力もしてくれてるんだ。リリーはそんなことしないと思っているが、絶対に誰にも話してはいけないよ?勿論、従者の方々もだ。」
「分かりました。絶対に誰にも言わないと誓います。従者の者も、バジル家の名に懸けて秘密を漏らさないと私が誓いますわ。────ルーカス様、同じ体質を持つ者として、色々と教えていただきたいのですが……側妃様の症状や生活についてお聞きしてもよろしいですか?」
少し驚いた様子ではあったが、ルーカス王子は肯定してくれた。
側妃のことも、一貴族令嬢なんかに話したくないと思うがコクリと頷いてくれたので、早速質問する。
「側妃様は幼いころから病弱だったのですよね?その……いつくらいから起き上がれない状態になったのでしょうか?」
「そうだな、これから起こるかもしれないことだもんな…。母上はプレデビュタントくらいまでは時々体調を崩しつつも通常通り生活出来ていたようだ。それから学園に入るまでに、週に2日は身体を休めないといけなくなり、学園卒業~父上と結婚する時までには週の半分をベッドで過ごしていたそうだ。その後俺を出産して暫くはベッドで週の大半を過ごしていたが…俺が6歳の頃には完全にベッドで寝たきりになっていた。それからは意識がある時間がどんどん短くなっていって…。すまない。」
将来そうなるかもしれない張本人に、残酷なことを言っている気がしてルーカスは思わず謝罪した。
しゅんとした様子のルーカスに、リリーナは慌てて首を振った。
「いえ!むしろ私が無理に聞いてしまったので!ルーカス様は何も悪くありません!謝らないでください!」
恐縮するリリーナを見ても、哀しそうな顔で反省し謝罪を続けるルーカスに、リリーナは困っていた。
こうなったら、ちょっと踏み込んだ質問をして罪悪感を消してもらおう。
「その、では…とても失礼なことをお聞きしてもよろしいでしょうか?本当は一番聞きたかったのですが、尋ねるのも憚れてしまって…。その質問に答えていただくことで、この件は手打ちにしていただけませんか?」
「あぁ!何でも聞いてくれ!俺が答えられることなら、何でも教えてやる。……リリーナ、気を遣わせたようですまない。そなたは本当に優しい女性だ。」
「いえ、そんなことはないんですが…。では、お言葉に甘えて。その…私の様な体質の人は短命な方が多いと聞いたのですが、側妃様はその噂とは裏腹に長命だと思いまして。申し訳ありません、この様な不躾なことを。何か、この体質に抗うことの出来る事をされていたのかと気になって…。何か知っていることがあれば、是非教えてくれないかと。」
リリーナは非常に申し訳なさそうに、不安そうにチラチラとルーカスの反応を見ながら質問した。
その様子にルーカスはくすりと笑いながら(本当に可愛らしい子だ)と思いほっこりしていた。
「確かに、俺もその噂は耳にした。リリーナが知りたいと思うのはもっともだ。そう恐縮しないでくれ。そうだな…父上の権力を使ってありとあらゆる秘薬や霊媒師によるお祓いをしたと聞いているが…。正直”コレだ”というものは分からないらしいが、色々と手を尽くした結果が実ったのではと思っている。詳細が気になるなら、一応後で情報をまとめて持ってこさせようか?」
「いえ!そこまでしていただかなくて結構です!その情報だけでも有難いので!…特別効果のあるものが無かったと感じられたのであれば、もしかすると側妃様の普段の習慣にその秘密が隠されているのかもしれません。側妃様が毎日することや好んで食べる物やずっと身に着けてるものなど…何でもいいです!教えていただけませんか?」
リリーナの言葉になるほど・・・と思案顔になったルーカスは、思い出しながら快く答えてくれた。
「そうだな…母上は果物が好きで、毎食召し上がっていたと思う。だが毎食同じ物ではなく、色んな種類の果物だったな。毎日すること…父上や俺を中心に、クリスや正妃にも挨拶とチークキスをしてくれていたな。今は寝たきりで久しくされていないが…。───あぁ、あと後宮内の庭に植えた楓の木に水をやったり世話をよくしていたな。何でも俺を妊娠していることが分かった時から植えて、無事に生まれてくるように祈りながら一緒に育てていたらしい。あと身に着けている物か……母上は大半をベッドで過ごすからな、ドレスや宝飾品には全くといっていいほど興味がないんだ。あっ、父上が結婚する際に送った珍しい琥珀のネックレスはずっと身に着けているな。華奢なデザインで邪魔にならないから、寝てる時もずっと肌身離さず着けている。・・・俺が知っているのはこれくらいだ。参考になっただろうか?」
なるほど…側妃様は無意識に”祈り”を日常的に行っていたのね。
”祈り”って本当に効果あるんだなぁ…あとは琥珀かな?でも琥珀って樹液が長い年月をかけて出来る宝石だったよね?逆に魔素が排出されるイメージだったんだけど・・・?
(あぁ、一つは場所が関係してるんじゃないかしら?王都はこの間見た感じ若い植物が多かったわ。勿論完全に魔素が無いわけじゃないみたいだけど、バジル領よりはるかに薄いからそのお陰でもあるわね絶対。)
成る程…確かに王都は植物自体少なかったしね。そんな中心で暮らしてたら、そりゃ溜まる魔素も少ないわな。
(そうそう!あとは琥珀ね!特殊なって言ってたし、多分”獣”が同化してた琥珀の一部なんじゃない?老衰した獣がそのまま樹液と同化して長~い年月をかけて琥珀になると、獣の特玉と同化して性質が変わるのよ。逆に魔素を吸い上げる性質になるから、あの王子の母親は運よくその特殊な琥珀に当たったのね~。華奢なデザインって言ってたし、小ぶりだから効果が切れ始めてるんじゃない?)
ほ~、性質変化もあるなんて流石ファンタジー。奥が深いわね~!
・・・・・ん??え、え???!!!その獣が固まってる琥珀があれば、私も側妃も助かるの?!?!
(まぁそうなるわね~。え?なに?まさかその琥珀を身に着けるつもり??ダメダメダメダメ!ぜーったい嫌だからね!獣と同化した琥珀なんて全然可愛くないもの!だって虫とか獣の姿そのまま残ってるものとかあるのよ?!琥珀は綺麗だけど・・・そんなの見たら私は入れないわ!無理無理!どうせならダイヤモンドみたいな特玉にしましょうよ!見つけるのは大変だけど、その間は何とか祈りを頑張ったら乗り越えられるわよ!)
そんな!!バカな!!話!!ありますかーーーーー!!!!!
リベアは私や側妃が具合悪くても平気だっていうの?!そういう重要なことは早く言ってよー!!
琥珀が嫌ならそのまま髪飾りにいてくれればいいじゃん!!リベアのバカ!!
(ちょっと!!そんなこと思ってないわよ!!琥珀の存在なんて忘れてたに決まってるじゃない!ただ…近々特玉が取れそうな獣がいるって妖精に聞いたからっ!!悪かったわよ!私の我儘だったわ、本当にごめんなさい!だって…髪飾りもいいけど、やっぱりリリーの一番近くにいたいんだもの!私に相応しいジュエリーがあったらって・・・ひっく、ごめん!ごめんなさい~~!!)
わぁ~ん!!と泣き出したリベアに、こっちも泣きたいわ…と思ったリリーナだったが、いじらしい相棒の我儘にすぐに許してしまった。
分かったわ!ごめん、私も言いすぎたわ。でも命に関わることだったから・・・。
忘れてるのはしょうがないけど、思い出したらすぐに教えて欲しいわ。今度から絶対よ??
(ん、分かったわ。ひっく、ご、ごめんなさい。私のことばっかり考えて、自己中だったわ。今度から絶対に伝えるわ。本当にごめんなさい。)
うん、仲直りね。側妃様は一刻を争うようだし、すぐに琥珀の確保に動きましょう。
側妃様が一部持ってるなら、他の部分がどこかに必ずあるはずだし。
・・・琥珀を確保出来たら、その妖精が言ってた獣を探してみましょう。もし特玉が取れたら、それをネックレスにしてもらいましょうね?
──────二人で怒涛の会話をしていたが、傍から見ると王子の問いかけにも答えず何やら熟考している美少女である。
「あの・・・リリー?大丈夫か??」
とうとう耐えきれずにルーカスが再度リリーに問いかけた。
その言葉に、やっと意識が戻ったリリーナは慌てて王子に返事をした。
「はい!大変参考になりました!ルーカス様、本当にありがとうございます!!ちょっと色々と試してみようと思います!期待しててくださいね!」
リリーナは今日一番のニッコリ笑顔を見せ、その瞳をキラキラと輝かせた。
一家で王都に行っていたこともあり、ガンディールやエマが溜まった執務をこなしつつ、今度はエディとナーデルも(ガンディールは不参加だったが)一緒に祖父達の所に会いに行った。
祖父であるマローはエディとナーデルもそれはそれは可愛がった。
特に兄弟で一番エマに似ているナーデルを、一番幼いこともあるだろうが猫可愛がりしていた。
「お祖父ちゃん、今後お家に遊びに来て!一緒にお菓子食べよ!!」と言われて、すぐに承諾していた。
「おいおい、あんなに森から出ることを嫌ってた長が…」「自分が現役の内は何があっても一族から離れないって言ってたのに…」「恐るべし天使パワー」「ナーデルちゅわん可愛す」・・・などなど、一族の人達が驚いていた。
実の娘であるエマは、ガンディールと結婚した時式にも来てくれなかった父親に複雑な視線を送っていた。
───このチャンスを機に(?)一族の次の長候補である男を中心とした体制が整い、マローと数人が屋敷に遊びに来れるようになったそうだ。
今は拠点の移動がある為、まだ屋敷に来てないがバジル家一同その時を心待ちにしている。
エディとナーデルはまだ日にちも決まっていないのに、ザインにアレコレと当日のメニューを口出ししていた。
ガンディールを中心に、バジル家の主力達はマローからの話で明らかになった”特玉”なるものを取るために色々と行動に移し始めた。
その”特玉”が確実に手に入ることができるものが”長年生きていた獣”だということで、コアスの森の巡回に対象の獣の捜索を加えた。
その獣の討伐は難しいが、老衰しないか・どれほどの数いるのかなどを調査する為だ。
コアスの森以外でと考えると、この王国内では入手は難しいかもしれないと、次に国境関係なく活動する冒険者や一部商人にも協力を求めた。
この世界にはいわゆる”ギルド”の様な機関がない。商人であれば”商人協会”なる組合があるので、信用のおけるバジル領の協会を中心に対象の獣の情報を集めている。
冒険者へのアプローチは主に酒場や肉の卸業者・商店を中心に行っているようだ。
ザインや数人の使用人も、旅をしていた頃の知り合いなどに鳥便を使って連絡を取り精一杯働きかけてくれている。
──────なんだか申し訳ないけど嬉しいなぁ、と感じている当の本人リリーナは若干体調は悪いものの寝込む程ではない日々を送っていた。
そんな中、プレデビュタントでうやむやに別れたルーカス王子がバジル領に遊びに来た。
本当はクリス王子も来たがったらしいが、王太子としての教育とプレデビュタントの日の罰として外出許可が出なかったらしい。
テラスで日光を浴びお茶をしながら、その話をルーカスから聞いていた。
ルーカス王子は本当にフェミニストらしい、年上とはいえまだまだ少年ながらリリーナを労り椅子を引いたりと紳士でスマートなエスコートを受け、衝撃を受けていた。
(ちょっとちょっと!!本当イイ感じじゃない!それに優しくて…幼いながらにイイ男!リリーナ、この子は逃がしちゃダメよ!こんな良い物件中々ないわ!!)
イヤイヤ、そりゃ王子様だもの。確かにビックリしたけど、これがロイヤルの力なのかも…。
クリス王子も数年したらルーカス王子みたいになるのかなぁ?王家の教育は本当凄い。
リベアはルーカス推しのようだ。
普段恋バナなんか滅多にしないリベアだが、ルーカスがいる時は中々テンションが高い。
そんなリベアは現在お引越しをして、髪飾りに付いている。
グレンから誕生日プレゼントにもらった小粒の白い花々が付いている、可愛らしく可憐な髪飾りはリベアのお眼鏡に適ったようだ。
「…まだまだ体調が悪いと聞いたが、思ったより大丈夫そうで良かったよ。リリー、俺がいるからと無理はしないでくれ。遠慮なく体調が悪くなったら休んで欲しい。お願いだ、いいね?」
何だか心なしかキラキラしたエフェクトが見える様な王子様オーラに、リリーナは思わず頬を染めた。
「だ、大丈夫ですわ。お言葉に甘えて、自分の体調に嘘はつきませんので。・・・お気遣い、ありがとうございます。」
リリーナの返事にどこかホッとした様子で、ルーカスはニッコリと笑みを浮かべた。
「そうか、良かった。・・・母上の様に寝たきりになったらどうしようと・・・。」
思わずこぼれてしまったのか、ルーカス王子の口からリリーが推測していた通りの言葉が出てきた。
やはり……側妃様は同じ体質なのか。何だか納得だ。愛する母親と同じ症状の少女がいれば、そりゃ気になるに決まってる。
(あら、そういうこと?なぁんだっ残念!王子様とリリーが結婚したら、可愛い人形とか綺麗な宝石がいっぱい見れると思ったのに!まあ、リリーの可愛さなら他のイイ男も引っ掛けられるわよ!次行きましょ次!)
え??私振られた??と思う様な慰めをリベアから受け取ると、ちょうどいい機会なのでは?と思い至る。
側妃様が同じ体質だとしたら、色々と聞きたいことがある。
この際一番近くで見ていたであろうルーカス様に色々と聞いてしまおう。
「あの…ルーカス様。お母様というと……もしかして側妃様も私と同じ体質なのでしょうか?」
「あっ・・・聞こえてしまったか?すまない…これは誰にも言ってはいけないと言われていたんだが…ここは安心できて、つい気が緩んだようだ。ガンディールやマシュー達は知っているし、リリーと同じということで色々と協力もしてくれてるんだ。リリーはそんなことしないと思っているが、絶対に誰にも話してはいけないよ?勿論、従者の方々もだ。」
「分かりました。絶対に誰にも言わないと誓います。従者の者も、バジル家の名に懸けて秘密を漏らさないと私が誓いますわ。────ルーカス様、同じ体質を持つ者として、色々と教えていただきたいのですが……側妃様の症状や生活についてお聞きしてもよろしいですか?」
少し驚いた様子ではあったが、ルーカス王子は肯定してくれた。
側妃のことも、一貴族令嬢なんかに話したくないと思うがコクリと頷いてくれたので、早速質問する。
「側妃様は幼いころから病弱だったのですよね?その……いつくらいから起き上がれない状態になったのでしょうか?」
「そうだな、これから起こるかもしれないことだもんな…。母上はプレデビュタントくらいまでは時々体調を崩しつつも通常通り生活出来ていたようだ。それから学園に入るまでに、週に2日は身体を休めないといけなくなり、学園卒業~父上と結婚する時までには週の半分をベッドで過ごしていたそうだ。その後俺を出産して暫くはベッドで週の大半を過ごしていたが…俺が6歳の頃には完全にベッドで寝たきりになっていた。それからは意識がある時間がどんどん短くなっていって…。すまない。」
将来そうなるかもしれない張本人に、残酷なことを言っている気がしてルーカスは思わず謝罪した。
しゅんとした様子のルーカスに、リリーナは慌てて首を振った。
「いえ!むしろ私が無理に聞いてしまったので!ルーカス様は何も悪くありません!謝らないでください!」
恐縮するリリーナを見ても、哀しそうな顔で反省し謝罪を続けるルーカスに、リリーナは困っていた。
こうなったら、ちょっと踏み込んだ質問をして罪悪感を消してもらおう。
「その、では…とても失礼なことをお聞きしてもよろしいでしょうか?本当は一番聞きたかったのですが、尋ねるのも憚れてしまって…。その質問に答えていただくことで、この件は手打ちにしていただけませんか?」
「あぁ!何でも聞いてくれ!俺が答えられることなら、何でも教えてやる。……リリーナ、気を遣わせたようですまない。そなたは本当に優しい女性だ。」
「いえ、そんなことはないんですが…。では、お言葉に甘えて。その…私の様な体質の人は短命な方が多いと聞いたのですが、側妃様はその噂とは裏腹に長命だと思いまして。申し訳ありません、この様な不躾なことを。何か、この体質に抗うことの出来る事をされていたのかと気になって…。何か知っていることがあれば、是非教えてくれないかと。」
リリーナは非常に申し訳なさそうに、不安そうにチラチラとルーカスの反応を見ながら質問した。
その様子にルーカスはくすりと笑いながら(本当に可愛らしい子だ)と思いほっこりしていた。
「確かに、俺もその噂は耳にした。リリーナが知りたいと思うのはもっともだ。そう恐縮しないでくれ。そうだな…父上の権力を使ってありとあらゆる秘薬や霊媒師によるお祓いをしたと聞いているが…。正直”コレだ”というものは分からないらしいが、色々と手を尽くした結果が実ったのではと思っている。詳細が気になるなら、一応後で情報をまとめて持ってこさせようか?」
「いえ!そこまでしていただかなくて結構です!その情報だけでも有難いので!…特別効果のあるものが無かったと感じられたのであれば、もしかすると側妃様の普段の習慣にその秘密が隠されているのかもしれません。側妃様が毎日することや好んで食べる物やずっと身に着けてるものなど…何でもいいです!教えていただけませんか?」
リリーナの言葉になるほど・・・と思案顔になったルーカスは、思い出しながら快く答えてくれた。
「そうだな…母上は果物が好きで、毎食召し上がっていたと思う。だが毎食同じ物ではなく、色んな種類の果物だったな。毎日すること…父上や俺を中心に、クリスや正妃にも挨拶とチークキスをしてくれていたな。今は寝たきりで久しくされていないが…。───あぁ、あと後宮内の庭に植えた楓の木に水をやったり世話をよくしていたな。何でも俺を妊娠していることが分かった時から植えて、無事に生まれてくるように祈りながら一緒に育てていたらしい。あと身に着けている物か……母上は大半をベッドで過ごすからな、ドレスや宝飾品には全くといっていいほど興味がないんだ。あっ、父上が結婚する際に送った珍しい琥珀のネックレスはずっと身に着けているな。華奢なデザインで邪魔にならないから、寝てる時もずっと肌身離さず着けている。・・・俺が知っているのはこれくらいだ。参考になっただろうか?」
なるほど…側妃様は無意識に”祈り”を日常的に行っていたのね。
”祈り”って本当に効果あるんだなぁ…あとは琥珀かな?でも琥珀って樹液が長い年月をかけて出来る宝石だったよね?逆に魔素が排出されるイメージだったんだけど・・・?
(あぁ、一つは場所が関係してるんじゃないかしら?王都はこの間見た感じ若い植物が多かったわ。勿論完全に魔素が無いわけじゃないみたいだけど、バジル領よりはるかに薄いからそのお陰でもあるわね絶対。)
成る程…確かに王都は植物自体少なかったしね。そんな中心で暮らしてたら、そりゃ溜まる魔素も少ないわな。
(そうそう!あとは琥珀ね!特殊なって言ってたし、多分”獣”が同化してた琥珀の一部なんじゃない?老衰した獣がそのまま樹液と同化して長~い年月をかけて琥珀になると、獣の特玉と同化して性質が変わるのよ。逆に魔素を吸い上げる性質になるから、あの王子の母親は運よくその特殊な琥珀に当たったのね~。華奢なデザインって言ってたし、小ぶりだから効果が切れ始めてるんじゃない?)
ほ~、性質変化もあるなんて流石ファンタジー。奥が深いわね~!
・・・・・ん??え、え???!!!その獣が固まってる琥珀があれば、私も側妃も助かるの?!?!
(まぁそうなるわね~。え?なに?まさかその琥珀を身に着けるつもり??ダメダメダメダメ!ぜーったい嫌だからね!獣と同化した琥珀なんて全然可愛くないもの!だって虫とか獣の姿そのまま残ってるものとかあるのよ?!琥珀は綺麗だけど・・・そんなの見たら私は入れないわ!無理無理!どうせならダイヤモンドみたいな特玉にしましょうよ!見つけるのは大変だけど、その間は何とか祈りを頑張ったら乗り越えられるわよ!)
そんな!!バカな!!話!!ありますかーーーーー!!!!!
リベアは私や側妃が具合悪くても平気だっていうの?!そういう重要なことは早く言ってよー!!
琥珀が嫌ならそのまま髪飾りにいてくれればいいじゃん!!リベアのバカ!!
(ちょっと!!そんなこと思ってないわよ!!琥珀の存在なんて忘れてたに決まってるじゃない!ただ…近々特玉が取れそうな獣がいるって妖精に聞いたからっ!!悪かったわよ!私の我儘だったわ、本当にごめんなさい!だって…髪飾りもいいけど、やっぱりリリーの一番近くにいたいんだもの!私に相応しいジュエリーがあったらって・・・ひっく、ごめん!ごめんなさい~~!!)
わぁ~ん!!と泣き出したリベアに、こっちも泣きたいわ…と思ったリリーナだったが、いじらしい相棒の我儘にすぐに許してしまった。
分かったわ!ごめん、私も言いすぎたわ。でも命に関わることだったから・・・。
忘れてるのはしょうがないけど、思い出したらすぐに教えて欲しいわ。今度から絶対よ??
(ん、分かったわ。ひっく、ご、ごめんなさい。私のことばっかり考えて、自己中だったわ。今度から絶対に伝えるわ。本当にごめんなさい。)
うん、仲直りね。側妃様は一刻を争うようだし、すぐに琥珀の確保に動きましょう。
側妃様が一部持ってるなら、他の部分がどこかに必ずあるはずだし。
・・・琥珀を確保出来たら、その妖精が言ってた獣を探してみましょう。もし特玉が取れたら、それをネックレスにしてもらいましょうね?
──────二人で怒涛の会話をしていたが、傍から見ると王子の問いかけにも答えず何やら熟考している美少女である。
「あの・・・リリー?大丈夫か??」
とうとう耐えきれずにルーカスが再度リリーに問いかけた。
その言葉に、やっと意識が戻ったリリーナは慌てて王子に返事をした。
「はい!大変参考になりました!ルーカス様、本当にありがとうございます!!ちょっと色々と試してみようと思います!期待しててくださいね!」
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いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
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