転生した復讐女のざまぁまでの道のり 天敵は自分で首を絞めていますが、更に絞めて差し上げます

はいから

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第1章 -幼女期 天敵と王子に出会うまで-

53.閑話 Side国王 王家の秘密

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 ここはハーブリバ王国の王宮内にある後宮だ。
 丁寧に手入れをされた庭には、市場にあまり出回っていない貴重な花々が咲き、目を楽しませる光景が広がっている
 そんな華やかな場所ではなく、少し薄暗い・・・まるで寝ている誰かを起こさないように光が調整された部屋のベッド脇にこの国の国王は座っていた。


 「テレサ・・・年々弱ってきている。どうにかならないのか?マシューが効果があるかもしれないと言っていた、深海にあるという宝石は見つからんのか?」
 国王の問いに、言いづらそうに控えていた宰相は答えた。

 「──商船を持っている商会や信用できる国には通達し、見つかり次第至急献上するよう通達していますが今のところなにも・・・。」

 「クソッ・・・!あぁ、テレサ・・・!折角周囲の反対を押し切って、側妃であっても結ばれることが出来たというのに・・・!なぜ、なぜそなたに”王家の呪い”が継がれたのだ!!」

 国王アーサーは、悲痛な表情で眠るテレサの手を握りしめ運命を恨んだ。





 これはハーブリバ王国の貴族でも王族に近い一部の者しかしらない、この国”最大の秘密”である。


 昔々、神々によりハーブリバ王国が創られ暫く立った頃・・・この国は災害が次々に起こった為、王国滅亡の危機にあっていた。
 その時、一人の神がハーブリバ国王に一目惚れした。
 「我と結ばれるのであれば、この国を救ってあげよう。」そう言われた国王は、その神と結婚した。
 するとあれ程頻繁に起こっていた災害がパタっとなくなり、王国の危機は去っていった。

 その後は嫁となった神と仲睦まじく暮らし、王が崩御した際その後を追うように神も亡くなった。

 それから時は過ぎ、彼等の息子が病で若くしてこの世を去った時・・・王の隠し子が現れた。
 神嫁とは別の女性との間に生まれた子どもだった。
 その子どもは孫よりも年上で「自分こそが正統な次の王である」と主張し、内戦が起きた。
 結果は神嫁との子である孫が勝利し、国を治めていった。

 しかしその後王族内で、病弱な子どもが頻繁に生まれるようになった。
 ある時は王子、ある時は姫、ある時は降嫁した者の子が・・・その子は立派な色素の薄い子で見眼麗しい者が多いのに、幼い頃から病弱で薬が効かない体質であり病を治せないのだ。

 王の不貞の子が出てきた後から続いたこの事態に、次第に”神嫁の呪いではないか”と囁かれ始めた。
 あれだけ愛し合っていた夫である王の裏切りに、死してなお恨みを抱きそんな王の子孫である王族達を呪っているのではと。


 それから、王族や王族が嫁いだ先の王族に近しい者に病弱で薬が効かない子が生まれることを”王家の呪い”と言われるようになった。

 この東大陸で有数の力を持つハーブリバ王国に、その様な悪習があるなど知られてはならないとこの件について話すことは固く禁じられた。



 そして、どこからが事実なのか分からなくなる程時が過ぎた今日では、一握りの人間しかしらない事実となっていた。

 現在その”王家の呪い”を持つ者は少なくなってきた。
 数年ぶりに現れたのが、国王アーサーの傍で眠っている側妃テレサであった。
 テレサはその昔王族が嫁いできた由緒正しき侯爵家の生まれで、アーサーの幼馴染だった。

 幼い頃からアーサーと想い合い、しかしその病弱体質では一緒になることはできないと言われてきた。
 そこに政略的な婚約者として、他国の姫である現在の正妃ティアラと出会い、二人の想いを汲みつつアーサーの人柄に触れ婚姻し、且つテレサを側妃として正妃命令で置いたのである。

 絶対に無理だと言われた二人の子も、ルーカスという家族思いの愛しい息子を産めた。
 これだけ奇跡が続けば、治るはずもないと言われているこの”王家の呪い”も解けるかもしれないと・・・希望を持っていた。


 しかし────。
 アーサーは以前見た時よりもやせ細ったテレサを見つめる。
 そのテレサは見ただけで・・・命の灯が消えそうな、危うい姿だった。


 「──いや、まだだ。テレサ・・・ルーカスが結婚して、孫を見るまで死なないと言っていたではないか。我はまだ諦めぬ。だからテレサ、お主も諦めずにあがいてくれ。」

 そんな切実なアーサーの祈りが通じたのか、握っている手にキュッと力が入った。

 その答えの様な仕草に、アーサーが知らないうちに笑みを浮かべていると宰相であるシュタインが口を開いた。
 「お話が出た結婚の件で、確認したいことがございます。ルーカス様ではなくクリス様ですが・・・。あと1年でクリス様も10歳となります。その際のプレデビュタントで、将来の妃候補である貴族の息女達を集めたいと思っております。────貴族間できな臭い噂を聞く者もございます。早めに動いて、子どもが”まともなうちに”妃教育も始められればと思っているのですが・・・タンジ家の息女について、招待をするかどうか迷っております。」

 「あぁ・・・ここ最近王家は他国の者との婚姻が続いたからな、クリスには悪いが致し方なかろう。・・・マシューの所の娘か?もう離縁してタンジ家で無くなったのではないのか?」

 「いえ、つい最近マーリン学長が戻られただけで、離縁はまだ成立しておりません。ですので・・・陛下のご意見が聞きたいと思いまして。後1年で離縁できればいいですが、出来なかった場合招待した方がよろしいでしょうか?仮にも筆頭公爵であるマシュー様の娘と”書類上では”なっております。────しかし、奇抜なピンクの髪色をしているのだとか。その様な小娘を王家主催で、妃候補を呼ぶ会に招くのは・・・いささかどうかと思いまして。」

 「────そうだなぁ、いや困った。・・・しかし、その奇抜な色の者を呼ぶことで、王家はまだまだ”穏健派”であるとアピール出来そうだ。”髪の色など関係ないのだ”とな。最近はガンディールのヤツがバジル領周辺も睨みを利かせているお陰で減ったが、まだまだ異民族や獣人に対しての偏見が無くならん。まったく、たかが髪や瞳の色が濃ゆいからなんだと言うのだ。獣人も、特徴があるだけでそれ以外は我々と変わらないのに・・・。話がそれたな、タンジ家の息女も招こう。ただし、伯爵家となった場合は外しなさい。──ショーンから、ステイン家の悪い噂を聞いたのでね。それまで公爵家であれば、王家のアピールの為に頑張っていただこう。話に聞くと、奇天烈なのは髪だけじゃないようだ。彼女に同調するような者がいれば、妃候補から外す目安になるしな。」

 「なるほど・・・しかし、私もマシュー様から聞いていますが・・・本当に呼んでもよろしいのですか?」

 シュタインが念を押す様に真剣に尋ねるが、アーサーは軽い口調でこう言った。

 「ハハハ、大丈夫だ。仮にも貴族の子だぞ?そんなに非常識な態度取るはずもなかろう。・・・それに、たかが”プレデビュタント”だ。子どもしかいないのだから、そんなに張り詰めないでいい。何かあれば、”デビュタント前で確認出来て良かった”と思えば良かろう。」

 アーサーの言葉に、まぁ確かにそうだなと思いシュタインは肩の力を抜いた。
 そして思い出したかのようにまた話し始めた。


 「そういえば、そのガンディール様のご息女もクリス様と同い年ですね。────こちらは聞くところによると、良い意味で大物みたいです。大層美しく、そして心優しい天使の様な子であると。しかも柔軟な思考を持っているとのことで、あの”花油”も陛下が大好きな”マヨン”もそのご息女の発案で使用人達と一緒に作られたそうですよ。・・・王家もそうですが、使用人や御用達商人とも仲睦まじく溺愛されてるそうです。あのマシュー様が微笑みながら話されてたんですよ?!・・・信じられなくて二度見しました。」

 まるで恐ろしいものを見た過の様にシュタインは両手で自分を抱きしめた。

 「ハハハ、あの仏頂面のマシューがか!!それは是非間近で見たかったものだ。・・・そうか、彼女も来るのか。────今一番勢いのあるモレッツ商会も、バジル家御用達だったな。彼等は他国にも支店を置こうとしているらしいじゃないか。例の海底の宝石も、彼等なら見つけられるかもしれんな。しかもそんなに良い子なら、クリスも気に入るかもしれん。・・・あのガンディールが黙って愛娘を王家に差し出すなど無いと思うが。楽しみが増えた、贔屓はいかんがくれぐれも、そのご息女の機嫌を損ねないでくれ。会の後に我直々に例の件を頼んでみる。時間を取っておくように、バジル家には別で連絡しておきなさい。」


 「はっ、かしこまりました。あの辺境から王都に出てくるなんて、こんなチャンス滅多にありませんからね。キチンと、たっぷり時間を取っておきます。」



 こうしてクリス王子のプレデビュタントは、着々と準備が進められていった。









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