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第1章 -幼女期 天敵と王子に出会うまで-
19.閑話 Side天敵 この母ありて
しおりを挟むアイリーンが去った後、その場所近くの部屋から叫び声が聞こえた。
「ちょっと!!最後の仕立てからどれだけ経ったと思ってるの?!新着ドレスを仕立てると言ってるのよ!お針子や商人を呼びなさいと何度言ったら分かるの!!!」
元奥方、現伯爵令嬢であるモリーがメイドに叫ぶ。
「モリー様。申し訳ありませんが、こちらが呼べるのは公爵家御用達の者たちのみです。ご実家である伯爵家の御用達である者たちとは交流がありませんし、その者たちは許可証がないのでこの屋敷内に入ることは出来かねます。それでもドレスを仕立てるというのであれば、伯爵家へお戻りいただかなければ。」
「な・・・・何て口を聞いているの!!私は公爵家の女主人よ!!口を慎みなさいっ!!!モリー様でなく奥方様と呼べと何度言ったら分かるの!!!!・・・・私が呼べと言っているのはその公爵家の御用達の者たちです!なぜ私が今更伯爵家へ帰らなければならないのです・・・!!メイド長!!この無礼なメイドを解雇しなさい!いいえ、罰としてむち打ちの刑にしてからよ!!」
血走った目で万が一の為に控えていたメイド長に命令する。
「それはできかねますモリー様。何度も申し上げている通り、旦那様の命でモリー様のご希望は受けないように申し付けられております。どうしてもご希望であれば、旦那様の許可をお取りになってくださいまし。」
蔑んだメイド長からの視線に耐えきれず、泣きわめく。
「じゃああの人をここに呼んでちょうだい!!!どうしてあの人は来てくれないの?!私はあの人の妻よっ!!!」
「旦那様にはモリー様が面会ご希望の旨お伝えしております。・・・・何度も、再三申し上げている通り、”自分からお前に会いに行く時間も意思も利もない”とのご返答がございました。・・・・一度、伯爵家へ戻られた方が、御身の為にもようございます。」
「うそよ・・・・嘘よ嘘よ嘘よ!!!!!信じない・・・アンタ達が勝手に言ってるだけだわ・・・!・・・・出てって、早く出ていきなさいっ!!!」
花瓶やクッションを投げながらモリーは叫んだ。
メイド長とメイドが部屋から出た瞬間、モリーは頭を掻きむしった。
「こんなはずじゃなかった・・・・!何のために旦那様と同じ金髪青目の男を探したと思ってんのよ・・・・!どうしてあんな髪色の子が!!!」
公爵家のような水色の瞳は中々いないから、薄い青を持つ者を探すのにどれだけ時間がかかったことか・・・!
その努力も時間も、全部水の泡だ!!
そう、何を隠そうモリーは金髪青目の男と不貞していた。
モリーと婚姻はしたものの、あの麗しい公爵家当主は今も死んだ婚約者を想っていた。
初夜以降も契りを交わしていたが、さも”義務”ですと言わんばかりに最低限の数であった。
モリーは美女ではあったが競争意識の高い、気の強い女だ。
これまでもいくつもの縁談が舞い込んでいたが、自分にふさわしいと思える男がいなかった。
そんな時、あの美丈夫でしかも公爵家嫡男であるマシューとの縁談が舞い込んだ。
運命だと思った。一目見た時から心底惚れこみ、この男と一緒になれることに喜んだ。
(やっぱり一流の女には一流の男がついてくるものよ・・・!)
モリーは得意げに、時にはバカにしたように見てきた先に婚姻を結んだ令嬢達を鼻で笑った。
しかし、いざ結婚してみたらどうだ、あの男は全然私を愛していない。
どんなに着飾ろうと、どんなに言葉を交わそうと、私を”公爵家夫人”としか見なかった。
悔しかったし、悲しかったが子どもが出来ればその態度も変わろうと、必死だった。
旦那様との数が少ないなら、他で増やせばすぐに授かるだろうと秘密裏に男を手配した。
結果、無事に妊娠し、旦那様も前より家により着くようになって安堵していたのに・・・・!!
あんな色を持った子が生まれるとは・・・!
だが他の”あり得る色”でなく、あの色であって助かった。
離縁されそうになったが、あの色のおかげでまだ猶予が出来た。
他の”不貞の証拠”になりそうなものはすべて排除した。
あの男も、手配したものも、知っていてアリバイ工作していた使用人も何もかも・・・全て殺した。
我が実家側の使用人を排除したことで、現在の生活がとても息苦しいものになってしまったが・・・やむを得まい。
私はこの公爵家の地位も、旦那様の妻という地位も、手放す気はさらさらない。
モリーは現在の状況を打破すべく、また考えに没頭していった。
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