転生した復讐女のざまぁまでの道のり 天敵は自分で首を絞めていますが、更に絞めて差し上げます

はいから

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第1章 -幼女期 天敵と王子に出会うまで-

18.閑話 Side天敵 妄想

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 「なんでなんでなんでなんで・・・!!!!」
 爪を噛み、ブツブツと何か言いながら苛立った様子でアイリーンは自分の部屋に戻っていた。

 前世で死んでこの世界に転生して約5年。
 自分が思い描いていた”完璧な異世界転生生活”と全く違う現状を、アイリーン・・・アイリは受け入れられずにいた。


 死んだと思ったら真っ暗な空間に愛理はいた。
 何だか不思議な感覚に、死後って思ってたより面白味がない所だと感じていた。
 神様も変な光だったし。ラノベみたいにイケメンな神様が見たかった。

 でも!聖子が死んでくれたのは本当にラッキーだった!
 聖子はいつも私に嫉妬して、口うるさく怒ってくる地味な女だったから本当に嫌いだった。
 でも転生特典が聖子のおかげで増えたから、優しい私は許してあげる!


 そうして念願の!異世界転生に成功した。
 神様は約束通り、ピンク髪青目の美少女にしてくれたみたいっ♪
 初めて鏡を見た時、あまりの可愛さにうっとりしちゃった♪
 ゆくゆくはこの甘い顔に爆乳でしょう?どんな男もアイリを好きになっちゃうわっ!

 でも、今度転生する時は大人になった状態で転生させてもらおうっと。
 赤ちゃん時代は本当、つまんなかったわ~。
 世話しにくるのは女ばっかだし。お父様も会えないし。本当、退屈で死にそうだった。
 そんな時、”女が世話してる時に嫌がったら美男子が世話してくれるんじゃない?”と考えた。

 もっと早くに気付けばよかった!
 すぐに男の人たちが世話をしてくれるようになって、本当目の保養だったわ~♪
 さすが公爵家、使用人のレベルも高いわ!本当、公爵令嬢って希望してよかった!

 しばらくすると、一人の美青年が私の専属になったの!
 カイトを一目見た瞬間に、その王子様みたいな佇まいに見惚れたわ!!
 そんなカイトが私の専属なんて・・・夢みたい!
 しかも、カイトはもう私を好きみたい。誰かが私の世話をすると、奪い取って自分がやりますって嫉妬しちゃうの!
 もう溺愛されちゃって、将来的にヤンデレにならないように注意しなくちゃ。
 いつかみたラノベみたいに、従順な僕をもう手に入れることができて、私は大満足だった。




 そして時が過ぎ、別邸に移動することになった。
 最初は嫌だったけど、”本邸の改修工事”と聞いて気分が上がった。
 だって、それって私の為でしょう??
 お父様ったら、まだ一度も会えてないけれどやっぱり愛娘を溺愛されているのね!
 アイリが危なくないように、本邸を工事するなんて・・・。あんな大きな屋敷、工事が終わる頃にはアイリ大分成長してると思うんだけど!もう、しょうがないんだから。
 お母様も呆れてるみたい。そうよね、そんなことにお金かけなくてもよかったのにっ。


 お母様は病弱みたいで、お部屋からあまり出てこない。
 さすが私のお母様中々の美女だったけど、性格がきついみたい。
 いつもアイリを忌々し気に見つめるの。きっとお父様の愛情をアイリが一身に受けてるのが気に食わないのね、可哀想に。
 でも安心して!私が年頃になったら王都学園で将来の夫となる方と出会うんだから、それまでの辛抱よ。


 この国には王都学園という16歳から3年間通う学園があるんだって!
 素敵!そこで王子様とか隣国の王子様とかが私を取り合ってしまうのね・・・。と思いをはせる。
 でも、そんな学園があったら絶対にライバルが出てくるわよね。
 私は公爵令嬢だから、恐らく平民の。もしかして・・・ざまぁを狙っている同じ転生者かもしれない!

 アイリは思い至った可能性が、さも実現する未来のように妄想が止まらない。

 神様は「聖子は別の世界に記憶をなくして転生した」と言ってただけで、他に転生者がいるともいないともいってない。
 その可能性は十分あるわ・・・。それなら私が今やるべきことは一つ!!!
 カイトという従順な僕はいるから、あとは貴族仲間と・・・メイドは今はいいわ。カイトに惚れられたら面倒だし。
 とにかく仲間を増やさないと!大丈夫。私は公爵令嬢よ、不可能なことなんて何もないわ!

 アイリは勝手に妄想し、勝手に意気込んでいた。









 順調だったのは、その時までだ。


 あれだけ私の世話をしていたカイトが、全然私に会いに来なくなった。
 私がカイトをどれだけ呼んでも来なくて、メイドが淡々と食事を運んでくる。
 その姿に苛立って、食事をそのメイドに向けて投げる。はっ、いい気味。カイトを呼んでこないからよ!

 その後も食事の度に反抗してやったが、それでもカイトが来ることはなかった。
 苛立った私は、自分でカイトを探しに行った。
 すると、先程皿を投げてやったメイドがカイトに色目を使っているのを見かけた。
 私は頭に血が上ったが、カイトの前なので怒りを鎮め、上目遣いでカイトに抱き着いた。

 「カイト~!!もぅ、どこ行ってたの??なんでアイリの傍にいなかったのよ!カイトは私の専属なんだから、どんな時でもアイリの傍にいなきゃダメよっ!」
 頬をぷぅっと膨らませながらカイトに注意した。もう、今回だけは許してあげる。


 するとカイトは照れたのか、すぐに私を引き剥がしてメイドにさっさと行けとばかりに目で合図していた。
 やっぱりカイトも迷惑してたのね!あのブス後で注意してやるんだから!

 「お嬢様。私はタンジ公爵家の執事見習いです。これからみっちり執事教育を受ける必要がございます。お嬢様は先日、お一人でお食事できていらっしゃいましたね。そのことから、私の補助は不要と判断しましたので今後私がお嬢様のお世話に常駐することはございません。・・・・先日執事長からも通達があったはずですが?」

 「えぇえ??アイリ知らないよ~!っていうか、カイトは執事になんかならなくていいよ!執事教育なんかより、アイリの従者として戦闘訓練しなきゃ!そっちの方が大事よ!!」

 カイトはアイリーンの物言いに頭痛がした。
 バカだバカだとは思っていたが、ここまでくると人間かも危ういな。

 「・・・・とにかく。私は執事教育を受けている身です。男手が必要な事態にならない限り、お嬢様付きの仕事は今後ないと考えてくださって結構です。では、執事長がお待ちなので私はこれで。あぁ、お嬢様にお伝えすることがあります。今後、食事は出されたもの以外はお出ししませんので。ご自分でダメにされたものも、メイドは片づけませんのでそのおつもりで。では、失礼します。」
 一気にまくし立て、逃げるようにカイトは去っていった。


 (・・・・・なんですって??この私に意見したの???)
 カイトから初めて反抗され、アイリーンは苛立ちながら突っ立っていた。

 メイドが眉をひそめながら通り過ぎるのをみて、アイリーンは気づいた。

 ・・・そっか。カイトは従者内の地位を上げる為に頑張ってるのね!
 そうよ、さっきもメイドの色仕掛けに抵抗できていなかったじゃない。
 きっと新人だから嫌と反抗できないんだわ・・・。
 嫉妬したメイドからのあんな嫌がらせ、私に言わなきゃいけなくて・・・・それであんな苦しそうな顔して去っていったのね・・・。

 アイリーンは一瞬でも怒りを感じてしまったことに反省し、あのメイドへのお仕置きを考える。

 あんな性悪婆、痛い目に合わないと反省するわけないじゃない。
 (・・・そうね、痛めつけたら悪役令嬢みたいになっちゃうし、髪を切るくらいで手を打ってあげる!)
 そうしてアイリーンはどこかの部屋にあったハサミを持ち出し、あのメイドがいる従者室へ入った。

 入ってくるはずのない存在に、従者室にいた者たち全員が眉を顰める。
 「・・・・お嬢様、ここは従者室です。お部屋にお戻りください。」

 「ふんっ、知ってるわよそんなこと!ちょっとその女に用があるだけよ。ねぇ、アンタ、さっきカイトに色目使ってたけど、全然相手にされてなかったわね!カイトは新人だから拒絶できないけど、嫌がられてるの分からないのかしら?それにあんな嫌がらせを私にするなんて・・・。アンタは今日で解雇よ、罰を受けてさっさとこの屋敷から出ていきなさい!」
 そう言いながらアイリーンはハサミを取り出し、メイドに襲い掛かった。

 「キャーーーー!!!」
 「コイツっ!!押さえつけろ!!」

 メイド達が悲鳴をあげ、間一髪逃げたメイドにまた襲い掛かろうとするアイリーンを他の従者が取り押さえた。

 そして悲鳴を聞き駆け付けた執事長により、”お仕置き部屋(地下牢)”へと投げ込まれたのである。


 それからは何か気に入らないことがあっても”お仕置き部屋(地下牢)”という脅しがある為、自由に行動することが出来なくなった。
 忌々しい・・・!私は公爵家の、この家の公爵令嬢なのよ?!どうして使用人如きに行動を制限されなきゃいけないの・・・!!お父様がいないからバレないと思って粋がって・・・!虐げていい存在じゃないでしょ?!
 ・・・ん?虐げる・・・・・・・・・そうか!!!!


 今まで苛立った様子で部屋に向かっていたアイリーンは、これまでのことを思い出しながら考えに至った結論に納得した。


 分かったわ・・・!私、虐待されてる令嬢設定なのね?!
 そうよ・・・道理で思い通りにいかないわけだわ・・・!!
 お母様が嫉妬のあまり、私の存在を虐げてもいいと使用人に言ったに違いないわ!
 なんて恐ろしい女!女の嫉妬はこれだから・・・。
 あぁ、カイトは私を助けられなくて葛藤してるのね・・・分かって上げられなくてごめんね!

 じゃあ、学園に入る前に王子様が私を見つけに来るかもしれないわね・・・!
 「こんな酷い環境で、頑張ったね。」なんて言って抱きしめてくれるんだわ・・・・!
 あぁ、なんてことっいつ助けが来るか分からないわ、しおらしく部屋で待っていないと!


 そうして、先程とは打って変わった、どこか嬉しそうな表情でアイリーンは部屋に戻っていった。



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