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第十話 誰かこの暴君を殴ってくれ!
19※
しおりを挟む「あーあ……たまんない。躾れば躾るほど、あんたの中は男にとって気持ちよくなるんだから……」
三初は少し顔をあげ、俺の額にコツン、と自分のそれを当てながら、薄く笑った。
「ふっ……めちゃくちゃやらしくて恥ずかしい、御割修介、三十歳、ですね」
それから、意地悪な響きを含んでいながら、甘さを滲ませる熱っぽい声が聞こえる。
いつもそうだ。
こうやって肉棒の先端を指であやされながら、尻の穴を犯されて、酷く感じるカラダがやらしいって、言うんだ。
恥ずかしくって、泣きたくなって、いつか三初が俺のこういう淫乱なところが嫌になったらどうしようと、思う。
だけど気持ち良すぎると泣きながら逃げ出す俺でも、三初は気持ちいいんだ。
俺の中が気持ちいいって。
恥ずかしくなれば、たぶん、もっと。
そう思うと、淫猥な色に染まった真っ赤な顔で、唾液で濡れた唇が開く。
「みはじめ……俺……はずかし、いの……好きに、なった……」
「っ……そーですか」
「ん、ぅ……」
ちゅう、と吸い付くように唇を覆うキスに、腰がビク、と痺れた。
やっぱり、三初はキスが好きなんだ。
足を離したらやめる、と言ったのに、結局、俺が離したら落ちる前に俺ごと支えて抱き寄せた。
それが、嬉しい。
後、かわいい。大好き。
ひねくれたドSな暴君でも、俺は、不思議なくらいハマってる。
変なの、だ。
全然ひでぇ男なのに、ううん、いいんだって思っちまう。最低なのによ。
今日だって媚薬をたっぷり使って、理性をもいでやらないと、俺に甘えてくれなかった。
余裕をもぎ取ったのだが、思っていたのと、かなり違う。
俺が息をしていると興奮すると言い、謝っても全然許してくれなくて、俺は散々抱き潰された。
一応、結果としては、なりふり構わず求めてもらえている。
なので、本懐は遂げたことになるのだろう。
唇が離れて、三初は俺の鼻にガブッと噛み付く。痛い。情けなく眉を垂らす。
「さて。今の間に、改めまして……お誕生日おめでとうございます。先輩」
「ぅあ、あ、ぅ……」
「気の利いたことは言えませんが……俺ね、タイムマシンができたら、さ。まず最初に、二十九年分の誕生日の日の先輩を攫って、初めてのキスを奪います」
「ん、っ……き、す……?」
話しながら抱き寄せた肌をなで、胸元の突起を弄んだ。
涼しい顔で薄ら笑いをうかべる三初は、俺の全てを暴きたいワガママな強欲男。
「生まれたその日にあんたを見つけなかった自分を、悔やむくらいには……この唇、好きなんですよね」
だけどそれを真っ直ぐに言えない天邪鬼だから、俺の唇にキスをする。
離れがたくて甘えたくなった俺は、「俺のほうが、もっと好きだ」と鳴いて、三初の背に腕を回した。
破れ鍋に綴じ蓋。
酒と薬でもないと素直になれないねじれた恋人同士でも、案外、ピタリと抱き合えるものである。
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