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第十話 誰かこの暴君を殴ってくれ!
01
しおりを挟む──御割 修介、記念すべき三十回目の誕生日の当日。昼間。
居候中の三初の家のインターホンがピンポーン、と鳴って届いたのは、妹である美環からの誕生日プレゼントだ。
有給をとっていてよかった。
日付は指定したようだが、今日は平日なのにお届け時間を指定しなかったあたり、詰めの甘い妹である。
まぁそういう抜けているところが、俺の妹であり、かわいいところだろう。
三初と二人で揃って、本日二度目の開封式を行う。
ハッピーバースデーのカードを添えられた箱の中身は、バレーボールより少し小さめの、白くて丸い機械。
アイスクリームメーカーだった。
……わかってるじゃねぇか、美環。
ホラゲは今度ちゃんと買ってやるよ。
「やべ、アイスの口になった。作ろうぜ」
「でもこれ、容器を十二時間冷やさないといけないみたいですよ」
「焦らし過ぎだろッ!」
意気揚々と球体のアイスクリームメーカーを抱えた俺に、説明書を読む三初が現実を教える。
一瞬でアイスクリームの口になった俺に、十二時間の待ち時間は拷問にも等しい。
時刻はあと半時もすれば正午か、という微妙な時間帯だ。
朝食が遅くなった俺は昼食を欲するほど空腹ではないが、オヤツ、ひいては甘いものなら、全力でいただきたいくらいである。
家でアイスを作るというのは、初めてだ。
どうやってできるのか皆目検討もつかないが、できたてのアイスクリームというのが気になる。
いそいそと容器を冷凍庫に収めつつ、俺の気持ちはすっかり冷たくて甘いあんちくしょうを求めていた。
そんな俺を、箱や包装を片付け終えた三初が、アホを見る目で突き刺す。
「買って食べればいいでしょ。先輩が疲れてなければどこか連れていこうと思っていましたが、〝平和的に家でゴロゴロしつつ、癒しを重視してモフる〟らしいんで……。今日だけはアホ犬特集の駄犬がごとく自堕落を極めても、お咎めなしにしてあげますし」
「言いたいことは山ほどあるが、取り敢えず俺は作りたてのアイスが食いてェんだよ。万年毒舌野郎め」
バタン、と冷凍庫を閉めて睨み返すが、なんのその。
十二時間後ともなると明日になることがわかりきっている俺の悲しみなんて、こいつには一生わからねぇんだ。
そう言うと三初は少し考えて、口を開く。
「駅前のケーキ屋の予約を取りに行くついでに、スーパーに行きますよ。誰かさんが家でいたいらしいんで、晩飯は俺が作ります」
「ぐっ、……アリガトウゴザイマス」
「いーえ。んで、そのまたついでに、ロヘトでかき氷機を買います」
「いやついでがおかしいだろ!」
思わず反射の勢いで突っこんでしまった。
夕飯の買い出しのついでにかき氷機を買うなんて、聞いたことがない。
なんでだ。なにがどうしてそうなった。バグったのかコノヤロウ。
突然どうしてかき氷機が出てきたのか理解できず、俺は胡乱気な視線で三初に訴える。
「かき氷ならすぐに作れるじゃないですか。今日はそれで我慢して」
──が。
腕を組んで、ん? と反応を待つように首を傾げられると、黙って外出の準備をすることしかできなかった。
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