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第九話 先輩後輩ごった煮戦線
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しおりを挟む「ビビった……タイムラグはこう、受け止める準備してねぇから、威力倍増すぎんだろ……」
「ね、イイ土産話だったでしょ。空回り雑技団長も報われてよかったじゃないですか」
「失礼極まりないあだ名付けんな。あと指やめろ」
「やです」
「コノヤロウ」
不意打ちのつもりでパッと腕の隙間に差し込まれていた指を掴もうとしたが、難なく逃げられ顔を顰める。
顰め面の俺は赤らんでいた頬の熱も落ち着いて、気持ちだけが晴れやかだった。
「んで?」
「あ?」
「あの鳴き声がミハジメセンパイオネガイシマスな向上心と責任感と取り繕うオツムもない新入社員を、全員教育してやるとか……長男気質も極まりすぎでしょ。同じ兄とは思えないわ」
「むしろ俺はテメェを一人っ子だと思ってたわ長男詐欺め」
「あーらら。偏見ですね」
テーブルに肘をついてクツクツと笑う三初をジロリと睨む。
俺の疑問を解決したら、次は三初のターン。
俺の前では笑っている三初だが毒素がにじみ出る言い方を考えると、あのチャランポランな新入社員たちは予想通りバッサリ切って捨てていたらしい。
冷血漢である暴君の横暴な言いぶりはあんまりだと思うが、今回ばかりは納得する対応だ。
事情を知る俺は、むしろ同意する。
恋人としても先輩としても、誰よりもできるからってなんでもかんでも押しつけられていたことを、気づいて黙るわけがない。
しかし強引な手段で解決した理由は聞かれたくなかったので、食事を再開してごまかす。
「別に。教育したのは、世話を焼いたとかお人好しじゃねぇ。シンプルにムカついただけだかんな」
「そ? くくく、やっぱ狂犬じゃないですか」
三初は本当にもう連中に興味がないようで、それ以上突っ込んでこなかった。
(まぁ、嘘は言ってねぇけどよ)
俺はくだらない話題を振って目玉焼きを咀嚼しつつ、あの日の出来事を思い返す。
──始まりは、休日出勤をした土曜日のことである。
土曜の俺はなる早である黄色付箋の仕事をどうにか片付けた後に、ふと気がついた。
デスクの山のほとんどが、緑付箋──つまり業務外の頼まれもの、だったのだ。
そりゃあおかしいと思うだろ?
あの三初が一週間使ってちゃんと下準備を終わらせて挑んだ総括の業務で、西新宿のオフィス街を建設するわけねぇ。
しかもよく見ると、資料ファイルと発注書、計画書、まではあるのに、それに付随する会議資料や最終データはない。
つまりこれは、最終確認のチェックや資料作成のみを委託しているのではなく、企画することが決定した原案以外のほとんど全ての出だしを委託している、ということ。
それも、案件六つ分。ここで俺のこめかみに一つの青筋が浮かんだ。
三初のメモによると、このふざけた総括への依頼、ではなく押しつけは、新入社員の六人が大本だった。
最終確認の終わった書類を処理する地獄レースをしている課長を捕まえて問い詰めると、なんと新入社員たちは受け持ちの企画を終えたらしい。
そりゃそうだ。
俺たち先輩はみんな、実行をつつがなく終えるまで見守るような最終段階で、泣く泣く新入社員がいるチームへ引き継いだのだから。
課長曰く、手が空いた新入社員たちに、忙しくて手が回らない恒常企画を預けたそうだ。
恒常企画は定期的に打ち出している基本的な企画なのでマニュアルもあるし、十分できるだろうと判断した、と。
ここで俺のこめかみに二つ目の青筋。
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