400 / 454
第九話 先輩後輩ごった煮戦線
24
しおりを挟む「うし、冒険に行くか。目標、お母さん呼び出しセンターな」
「おうっ」
「おー」
だけど放っておくことはできない。
インフォメーションセンターに届ければ、放送をかけてくれるはず。
その間に歩いていれば、親がショウを見つけるかもしれないだろう。
そうしていざ歩こうとした時のことだ。
「──ショウッ!」
「!」
焦燥に駆られた女性の大声が聞こえて振り向くと、買い物袋を持ってこちらにむかって走ってくる若い女性がいた。
「ッその子私の息子です! か、返してください!」
「うおッ!」
「ふあっ、あっママ、っうわぁあああんっ!」
「えぇ!?」
「ショウ、ごめんねっ!」
「ママぁ~っ!」
かなり混乱している様子の女性は、ショウの母親らしい。
俺の腕の中からショウを懸命に抱き取るものだから、俺は驚いてしまった。
ショウはショウで迷子から解放された安心感で再度泣き出し、母親の腕の中で大号泣。
一度は収めた騒動もまた泣き声で視線を集めてしまい、俺は眉間にシワを寄せ、一見して機嫌の悪そうな顔になってしまう。
となると、もうだめだ。
「っアナタ、ゆ、誘拐犯っ……!?」
「はッ!? いや俺は違ッ」
狼狽していた母親はなぜか自分の息子を抱いていた男の顔を見て、思いっきり青ざめ、思わずといった具合で逃げ出してしまった。
残されて立ち尽くす俺は、通りすがりの客たちや並ぶ客たちの視線を一身に浴びる。
「え、なに? 子ども泣かせてたの?」
「わかんない。すっごい迷惑そうにしてたから、怒ってたのかも」
「えぇー……言い方ってもんがあるじゃん」
通りすがりの客は途中からしか見ていないので、俺を非難した。
確かに最後だけ見れば俺は子どもを餌付けして攫おうとした、不審者である。
母親が危機一髪、駆けつけたようにしか見えない。癖でしかめた表情が余計に拍車をかけたのだ。
だけど空になった手をギュっと握り締めた俺の気分は、ちゃんと理解しているのに、寂しい気分になった。
「……。あー……お騒がせして、申し訳ありませんでした!」
くるりと振り向き、店に並ぶ客たちに頭を下げ、愛想笑いをする。
遅れて店の中に入ると、スタッフたちは俺から距離を取った。
当然のように、雑務は行われていない。ショーケースのストックはギリギリだ。
(バックの冷凍庫にAストックあんの、入れる余裕なかったのか。全然列さばけてねぇけど、いっぱいいっぱいだったんだろうな)
俺がゴミ出しに行く前と後でそれほど列がさばけていないが、スタッフたちは疲れた様子で仕事をしているのを横目で確認する。
それでもまずは、待たせている客に謝罪をしながら、できるだけ早く対応するのが先決だ。
客前では慌てているように見えないよう気を付けて、俺は仕事に戻る。
頭にモヤをかけることは、全部一時的に追い出した。
やりきると言ったらやりきる。
そうじゃないと、いけない。
だが、背後で鳴った電話を取った時──俺の全ては空回って、終わりを告げた。
17
お気に入りに追加
1,380
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる