378 / 454
第九話 先輩後輩ごった煮戦線
02
しおりを挟む兎にも角にも、だ。
相方ではないのに俺や三初を見た理由はわからないが、この再結成は覆らないだろう。諦めろ。
会社の決めたことには従うしかないのである。それがリーマンの悲しい性だ。
ふう、と息を吐く。
初夏が思ったより暑くて、早めの夏バテがきただけだしな。
一応、この組み分けの理由がわからないことはない。
俺が今までしてきた仕事は、あまり人前に出ないものだ。
販促や営業的なイベントの企画ではなく、新商品やキャンペーンをネットや店頭でアピールする企画が多かった。
しかし竹本の企画はバレンタイン然り、春祭りの企業出品然り、実際に物を買う顧客へ試食会やイベントを打ち出す仕事が多い。
お互いの仕事がお互い経験不足なので、違う視点から仕事をさせてみようということだろう。
そして俺と同じく裏方企画を熟していた三初は、企画課全体の補佐をしながら手の足りないところを助ける役目をしていた、山本と組ませられた。
これも、上司の意図は〝再結成を機会に持て余していた三初を合法的にオペレーターとして起用し、全体の仕事をさせよう〟というものだ。
でなきゃ全員が忙しかった時のために常に恒常企画担当として実質リーダーになっていた山本と、組ませるわけがない。
アンケートをまとめるだけが山本ではなかった。
(これもまあ、理にかなってんだよな。……うん。別に、やっぱなにもおかしなことはねぇから、従うしかねぇけどよ)
上司の意図をちゃんと理解して納得しているはずの俺は、それでも朝礼の最中で腕を組み、思考回路をグルグルと巡らせる。
そうしていると不意にトン、と三初の肩が俺の肩に当たった。
「? ンだよ」
「あー……別に?」
「今忙しいってのに、わけわかんねぇやつだな」
首を傾げる俺から目を逸らすので、俺も視線を前に戻す。
朝礼もそろそろ終わりだろう。
各々仕事の引継ぎがあるだろうということで、新チームの始動は来週からだ。
うまくいくのかはわからないし、一社畜に覆せることではない。
それに、七月中までは家に帰れば会える。
そうじゃなくとも出勤すれば隣のデスクにいることは変わらないし、企画を練りあったり助け合うことができないだけで、仕事の話もできる。
なにも問題なんかねぇんだ。
そうだ。よく考えればそれほど今と変わる気がしない。
(なんだ、全然拗ねるこたねぇぜ。物足りなくなんかねぇ)
そうに決まっている、のに。
自分に言い聞かせながらなんだかモンモンとする俺は、ほんの少しだけ寂しいような、謎の喪失感に駆られていた。
プライベートの距離が詰まったと思えば仕事に引き離されるなんて、俺はやっぱり絶妙に次から次へと振り回される呪いにかかってんのか?
「……どうしよっかなー」
割と真剣にそう思った俺は、隣で先々を懸念してぼやく三初の姿なんて、気が付くわけがないのだ。
18
お気に入りに追加
1,390
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる