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第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ
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しおりを挟む三初は、意外とガキっぽい。
どうにも、小学生のような恋愛の仕方をしているようだ。
自分が鈍感で構ってほしさを押し付けていたところを反省する気持ちと、頑なな三初に対する苛立ちのモヤが、簡単に薄れていく。
「くく、なんだよ」
「ゴホッ、なに……、は、重いですし……」
「あははっ、やべぇ、くっくっ」
髪がはみ出るくらいを残して布団の塊になっている三初を、潰さない程度に上から抱き込んだ。
抱き込まれた三初が布団の中で嫌がるが、なんのその。
俺は今、すこぶる機嫌がいい。
もっと言えば、めちゃくちゃこいつをかわいがりたいんだ。
「わかったぜ。一緒に暮らしてンのにこの一週間、俺を一切頼らなかったのはそういうことかよ。だせぇやつだな、要ェ~」
「っ? や……名前やめて……」
「今更だろ、名前くらい。要。要くん? カナちゃん。ふっあははっ、カナちゃんは怖かねぇわ。くくく、まぁ、今日は俺の天下だぜ」
「ラリってんですかね。……なにがヒットしたのか、ゲホッ、も、暑苦しいなぁ……」
三初は名前を呼んで急にテンションが上がり始めた俺に、少し困惑した様子だった。
それも気にせず、布団の塊をぎゅうぎゅう抱きしめる。
カナちゃんは似合わねぇ。笑っちまう。でもそのくらい、かわいいと思ってしまった。
いつも俺だけが先輩らしく、年上らしく、格好つけたがっていたのかと思っていたのだ。
いつも俺の世話を焼き後始末をつけてなにかとサポートしてくれるこいつが〝弱った姿がかっこ悪いから見せたくない〟なんて思考を持っているとは、初耳である。
構わねぇのによ。
俺は結構、今嬉しいんだぜ。
「うん。これから俺たちはちゃんと、共同生活していくんだよ。わかったら、今は俺に愛でられてろ。仕事じゃねぇんだ。いろいろ、一緒にしていこうぜ」
ワシャワシャとはみでた頭をなでた後、その髪にキスをした。
そのくらい俺は浮かれてる。
しかしキスをされた三初の頭は布団の中に完全に引っ込んで、伸びてきた手が俺の頭を叩く。
おいコノヤロウ。嫌がるなよ。せっかく甘やかしてんのに。
無理強いは良くないか、と思って仕方なく離れてやり、軽く布団の塊を叩く。
すると熱い手が再度伸び、俺の手を緩く握った。
「ま……嫌なわけじゃ、ないからね……ゴホッ……」
「でもよ、手ぇ叩いただろ?」
「……普通に、俺はこういうの、慣れてないんで……わかんないですよ。ゲホッ……困るなぁ。どうしていいのやら」
ボソボソと呟きながら、三初は握った手に指を絡める。
そんなことを言われながらそんなことをされると、当然、反射的にギュッと強く握り返してしまった。
いや、だって、なぁ?
「テメェ、マジでデレ期かわいい系かよ」
「は……? イカれてますね……クソ老眼耄碌アホかわ系には、負けますよ」
「今のはわかったからな、毒舌クソ野郎。テメェ、それ照れ隠しだろ」
つい思ったことを口に出してしまい、三初が反射の勢いで俺を罵った。
しかしへろへろの三初の攻撃力では、ちっとも俺にダメージがない。
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