誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
上 下
346 / 454
第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ

14

しおりを挟む


 された分は大事にしてやりたいと思いながら、時間をかけて汗と雨を拭き取り、三初の体を綺麗にしてやった。

「ん、ありがとうございます」
「ん。服取ってくるから動くなよ」

 桶とタオルを片付けるために一旦退室し、いつも着ているルームウェアを持って部屋に戻る。

 三初は言ったとおり大人しくベッドの縁で寝そべっていたので、俺はせっせと寝間着を着せてやった。

(ふう。これでいいな)

 時計を見ると、三初を見つけてから三十分程度が経っていることに気づく。

 昼時はとっくに過ぎているが、腹が減っていたのも忘れていたくらい、俺の心は三初に向いていたらしい。

 きちんと真ん中へ横にならせて、しっかりと肩まで布団を被せる。

 三初の口数は、元気な時よりもいくらか減っていた。

 ありがとうございます、とは言うが、この状況は不本意なんだろう。

 布団をかけた上からポンと軽く叩くと、赤い頬で黙りこくった。

 なるほどな。

 どういうわけか……こいつは相当、弱った姿を誰かに見せることに、慣れてねぇんだ。

「よし、熱さまシート貼ってやる」
「ゴホッ、そのくらいは、自分で貼りますって」
「うるせぇな。じゃあ俺がやりてぇって言ってんだよ」
「はぁ……やだ、けど、先輩押しのける力出ねーしなぁ……感染源殺したいわ……ゲホ……」

 持ってきたシートのフィルムをペリ、と剥がして前髪をかきあげてやる。

 もうどうにでもしてくれ、とばかりに目を閉じる三初に俺がやりたいということにして押し通し、熱さまシートを貼った。

 それから備品場所資料を見て、体温計を持ってくる。

 熱を測ると、なんと三十八度八分。
 平熱の低い三初としては、結構な高熱だ。

 免疫と徹底抗戦しているらしい。なかなか活きのいいウイルスを貰ってきたようだ。

 だからこそ、このウイルスはサイボーグ疑惑のあった三初を倒せたのだろう。

 細菌兵器相手でも生きてそうなこいつを弱らせるとは、最強の風邪菌だ。

 風邪菌グと呼んでやる。
 風邪の王様。

(チッ……俺はそんなに、頼りねぇのかよ)

 そうやってふざけていないとモヤモヤイライラする程度には、俺はドロついた感情を保有していた。

 とりあえずのことを終わらせた時には、三初は咳も出始めて、不調が顕著に現れた。

 体温計を置いて加湿器をつけて部屋を加湿した俺は、ゴロリと横になる三初のベッドサイドに腰掛け、熱い頬に手を当てる。

 すげぇ熱。頭も痛ぇよな。大したことない態度をとるが、相当辛いはずだ。

 なのになんで、大したことないって態度を崩さないのか。

 三初には本気で、本当に、天邪鬼がこびり付いていた。

「ん……なに……? ゲホッ、もう平気ですよ」
「ンな一瞬で治ったら医者要らねぇわアホ」
「ゲホッ、はいはい。じゃ……大人しく寝てるんで、先輩は好きなことしててくださいよ」

 どうしたってそんなことを言う大バカ野郎は、やはり無視する。筋金入りだ。

 なにが好きなことしててください、だよ。
 お前がうつ伏せになってた時、俺は一瞬すげぇ心配したじゃねぇか。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

ドSな義兄ちゃんは、ドMな僕を調教する

天災
BL
 ドSな義兄ちゃんは僕を調教する。

穴奴隷調教ショー

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 穴奴隷調教済の捜査官が怪しい店で見世物になって陵辱される話です。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

処理中です...