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第八話 シスターワンコとなりゆきブラザーズ
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しおりを挟むされた分は大事にしてやりたいと思いながら、時間をかけて汗と雨を拭き取り、三初の体を綺麗にしてやった。
「ん、ありがとうございます」
「ん。服取ってくるから動くなよ」
桶とタオルを片付けるために一旦退室し、いつも着ているルームウェアを持って部屋に戻る。
三初は言ったとおり大人しくベッドの縁で寝そべっていたので、俺はせっせと寝間着を着せてやった。
(ふう。これでいいな)
時計を見ると、三初を見つけてから三十分程度が経っていることに気づく。
昼時はとっくに過ぎているが、腹が減っていたのも忘れていたくらい、俺の心は三初に向いていたらしい。
きちんと真ん中へ横にならせて、しっかりと肩まで布団を被せる。
三初の口数は、元気な時よりもいくらか減っていた。
ありがとうございます、とは言うが、この状況は不本意なんだろう。
布団をかけた上からポンと軽く叩くと、赤い頬で黙りこくった。
なるほどな。
どういうわけか……こいつは相当、弱った姿を誰かに見せることに、慣れてねぇんだ。
「よし、熱さまシート貼ってやる」
「ゴホッ、そのくらいは、自分で貼りますって」
「うるせぇな。じゃあ俺がやりてぇって言ってんだよ」
「はぁ……やだ、けど、先輩押しのける力出ねーしなぁ……感染源殺したいわ……ゲホ……」
持ってきたシートのフィルムをペリ、と剥がして前髪をかきあげてやる。
もうどうにでもしてくれ、とばかりに目を閉じる三初に俺がやりたいということにして押し通し、熱さまシートを貼った。
それから備品場所資料を見て、体温計を持ってくる。
熱を測ると、なんと三十八度八分。
平熱の低い三初としては、結構な高熱だ。
免疫と徹底抗戦しているらしい。なかなか活きのいいウイルスを貰ってきたようだ。
だからこそ、このウイルスはサイボーグ疑惑のあった三初を倒せたのだろう。
細菌兵器相手でも生きてそうなこいつを弱らせるとは、最強の風邪菌だ。
風邪菌グと呼んでやる。
風邪の王様。
(チッ……俺はそんなに、頼りねぇのかよ)
そうやってふざけていないとモヤモヤイライラする程度には、俺はドロついた感情を保有していた。
とりあえずのことを終わらせた時には、三初は咳も出始めて、不調が顕著に現れた。
体温計を置いて加湿器をつけて部屋を加湿した俺は、ゴロリと横になる三初のベッドサイドに腰掛け、熱い頬に手を当てる。
すげぇ熱。頭も痛ぇよな。大したことない態度をとるが、相当辛いはずだ。
なのになんで、大したことないって態度を崩さないのか。
三初には本気で、本当に、天邪鬼がこびり付いていた。
「ん……なに……? ゲホッ、もう平気ですよ」
「ンな一瞬で治ったら医者要らねぇわアホ」
「ゲホッ、はいはい。じゃ……大人しく寝てるんで、先輩は好きなことしててくださいよ」
どうしたってそんなことを言う大バカ野郎は、やはり無視する。筋金入りだ。
なにが好きなことしててください、だよ。
お前がうつ伏せになってた時、俺は一瞬すげぇ心配したじゃねぇか。
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