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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力
33※微
しおりを挟むふざけんなド変態野郎ッ! 俺を背後から視線でなぶっている間森マネージャーの声に、内心怒声を浴びせかける。
自分だけ変声機付きのマスクを被って訴訟対策をしているが、モロバレのモロバレだ。しかも監視カメラと整合性取れば明らかだろ小賢しい。
しかし小賢しい間森マネージャーから一刻も早く脱しなければ、俺は握られた弱みを三初にバラされる可能性がある哀れな子羊なのだ。
この状況の写真でも送られてしまえば、どんな恋人でも修羅と化す。
俺だって三初のそういう画像を見せられたなら、なぜそんなところに秘密裏に行ったのかと夜通し問い詰める。
問い詰めた後は、他の男とこんな部屋でこんな状況、まさか許されると思ってねぇよなコラと激昂する。
恋人相手なのだ。
当然誰しも感情的になるが、それを三初にされると、俺は困るのだ。
マンネリ回避のためゲイバーに来ていることがバレるより断然困る。浮気だと言われても仕方がない。
バレたら命はないことは確かだろう。怒った三初が俺をどうするか、検討もつかなかった。
──ぜ、絶対殺すだろアイツ……!
焦る俺が動けないながらも必死にグルル、と唸り声を出して威嚇すると、間森マネージャーはパァンッ! と俺の尻を鞭で打った。
「ふぁ……ッ!」
「かわいい声……さてさて、御割さんがマゾがどうか、試して差し上げますね」
穏やかなテンポで機械音声が告げる。
それはすこぶる不穏なセリフで、全身から血の気が引く。
そして逃げることは叶わず──無邪気な嗜虐ショーが開幕してしまった。
「ゔッ……ッ、ふッ……ッ」
バチッ、バチッと続けざまに鞭で打たれ、俺は切れ切れと悲鳴を上げて身悶える。
暖色のルームライトが照らすムーディな室内には、俺の悲鳴と破裂音が混ざりあって響く。
「ッ、……ッ! ッぐ、……ッ」
──クソ……ッ、痛ぇし、全然気持ちよくねぇし、全然暴れてぇ……ッ!
鞭打たれながら俺は悲鳴を噛み殺し、ただ殴られるだけの暴虐に耐えた。
三初にもよく鞭で打たれている俺だが、間森マネージャーには何度打たれても痛みと殺意しか感じない。
真っ赤に染まっていく尻が、裂かれるような痺れをもたらす。
それでもいつもの自分にも多少落ち度があって叱られている、という全力では逆らいがたい負い目もなければ、ただの理不尽な暴力としか思えなかった。
叩き方も、三初のやり方とは違う。
力任せじゃ無意味な蚯蚓脹れを生み、単調な繰り返しでそれが裂けつつある。そんな闇雲な殴り方ではただ痛いだけで、それ以上の感情を引き出さない。
人様を無理矢理なぶって見せるならせめて思いっきりなりきってやればいいのに、お遊び感覚なんだろう。
上手くやれないなら加減すればいいものを、本人だけは上手くできてるつもりで噛み合わない。
そういうのが余計にムカつく。
打たれ損だ。
そのくせ「痛いのがいいんですよね」と嘲られるのが心底屈辱的で、悲鳴ごと口枷を食い締めた。
マゾってのはキツくやられんのがイイんだろ? それを確認するなら、半端な態度は意味がねぇじゃねぇか。
アイツはもっと遊びのような顔をして、俺を嬲ることは容赦しない。本気でやる。
そしてアイツはいたぶる相手である俺を、身が焦がれるほどよく見ているのに。
「ぅッ……ふ、ぅ……ッ」
──心が、満ちない。
一服盛られて約束と違うことをされる怒りとはまた違う、もどかしさ由来の怒りが湧き上がってきた。
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