誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
上 下
303 / 454
第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力

22

しおりを挟む


  ◇ ◇ ◇


 三初との散々な休日を終えた俺は、またしてもマゾヒスト呼ばわりされてしまった。

 おかげであの日から、SMとは? という哲学的なところにまで、思考を深みに沈めていたりする。不本意ながら。

 仕事をこなしつつも隙間時間にウィキを見たり、コソコソと人間観察をしてサドっぽいやらマゾっぽいやら考えてみたりな。

 こんなに人生でSMについて考えたことはねぇぞ。マジで。

 痛めつけたいという気持ちも痛めつけられたいという気持ちも、俺の人生には覚えがない。

 そんな俺が悩み悩んで出した結論。

 三初はサディスト、サドだ。
 本人は否定するが、おおむね確定で間違いない。ソースは俺。

 よし、わかりやすく説明してやる。
 過去回想にでも入るとするか。

 曰く、別に俺が痛がる姿や苦しむ姿だけが好きなわけではないので、サドじゃないと言い張る三初である。

 ならばなにがいいんだよ、と尋ねると、だ。


『なに? んー……頭の中を俺向けの感情だけでいっぱいにさせた時、とかですかね』


 だとかなんとか。
 抽象的だ。殴りたい。なんのヒントにもなりやしねぇじゃねぇか。

 三初は嫌いな人に対しても容赦のない嗜虐を与えられる。
 しかしそれだと好きな人に対して与える行為も、苦痛、暴力と変わりない。

 それはあまりに無差別な愛情だ。


『なら根底に快感と興奮がないとただのイジメでしょ。興味ない。まあ、そうじゃない人の根底をそうにするのは調教でして。それはそこそこ面白おかしいですが』


 仕事をする俺の隣で取引先のピックアップと下請けの生産工場の目星をリストアップしながら、お答えあそばされた。

 なので俺は下請けに渡す仕様書等と会議用の全体フローチャートを必死に作成しながら、対抗心アップ。

 じゃあサドじゃないお前的に俺に普段してることはなんなんだコラ、と尋ねると、だ。


『ん? あれは……嫌だろうけど本気で無理ってとこまでじゃない、っていう嫌がらせを見極めて、その絶妙なゾーンを広げていく遊び、かなぁ……』


 かなぁ、じゃねぇんだよ。人様で遊んでンな暴君サディスト野郎が。

 そう言ってやると、三初は機嫌よく笑って俺を見つめる。


『あはは。俺はサドじゃねーって言ってるでしょ? 俺はね、先輩をかわいがってるんですよ』

『あ? 嘘つけ。いたぶってるだろうが』

『それは先輩がいたぶられるのが好きだから。ただ自分の嗜虐心を満たすために虐めてるわけじゃ、ないんですよねぇ。ま、普通に嫌がってるの前提でもする時ありますが』


 意味わかんねぇ。
 虐めるのが好きなのはサドじゃねぇか。

 もしくはマゾに尽くすのがサドなんだろ? まぁテメェはこのタイプじゃねぇだろうけどよ。

 俺は性根がド腐れな三初の見解が理解不能すぎで、首を傾げて眉間にシワを寄せる。

 いたぶられるのは好きじゃない。と思う。断固そう思う。うん。マゾじゃねぇし。ならかわいがるってのは的外れだろ。

 普通のやつは人を調教したりしねぇ。

 泣かせたり、開発したり、縛ったり、叩いたり。
 野外でも公共の場でも普通のやつはしねぇんだよ、無自覚ドS。

 んでいい加減一発殴らせろってんだ鬼畜暴君アンポンタン。




しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

処理中です...