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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力
13※
しおりを挟む目を閉じていたために不意打ちを喰らい、心臓の鼓動が速度を増す。
──俺が……俺がやらしいんじゃねぇ。
三初に触られると感じる体に躾けた、三初がやらしいに決まっている。
けれど火照った体と期待をごまかせず、俺は身をよじって弱々しい抵抗をした。
黙ってはいられないが暴れることもできない言葉なき抵抗だ。
蜜で溶けた屹立を握る腕を掴み、引き離すために僅かに揺する。
「ふっ……ン、……んぅ……」
そうすると手のひらと擦れあって、尿道口がヒク、と収縮した。
クスリと笑みが耳を詰る。
「俺の手でオ✕ニーしたいの? くく……いいですよ」
「ぅ……っ、っ……」
そんなつもりはない。
触ってほしくないという意味だ。ここでは嫌だ。困る。できない。
けれど三初は言うことを聞けば気持ちよくイかせてやる、と言って、耳たぶを唇で食み、項にキスをした。
思わず目を開く。
暗闇から画面の光を浴びた視界がぼやけ、三初の手の体温が鮮明に感じた。
黒のトートバッグからレザーケースを取り出し、軽くボタンを弾くと、中身を手にバッグから手を引く。
耳の後ろでビニールが破れる音がして、取り出したものがなんなのかを察した。
「自分でケツ締めて、中でちゃんと感じて。どうしたら気持ちいいか、教えた通りに自分で練習して? そしたら思いっきりイッていいですよ。でも……絶対、声は出さないでくださいね」
「ッ……ん…ぐ、……ッ……ッ」
硬く勃起した屹立にヌルリとゴムがハメられ、耳孔を舐めながら命令が下される。
オイコラテメェ、なんでンなもん持ち歩いてんだ。俺をいたぶる準備万端かよッ!
なんて文句を言おうとしたが、体内に埋め込まれたローターのうねりが激しさを増し、慌てて唇を噛み締めた。
コイツは、強制的に後に引けない快感を与え、逃げ場を奪う気だ。
そして俺はそれに、まんまとハマっちまっている。
嫌になるくらいわかっていた。
三初の行う新たな遊びに、自分がいつだって最後はハマってしまうから。
「ッく、……ッ、……ゔッ、……ッ!」
三初の手が薄いゴムを纏った屹立を包み、強弱をつけて再度扱き始めると、より快感が増して腰が椅子から浮かんだ。
可動式の骨組みが軋む。
人にされるほうがマズイ。しかもこんな暗闇で。頭の奥が痺れてきた。
ヴヴッヴッヴヴヴッ、というランダムなバイブ音が肉や骨を伝い、体の中から鼓膜を揺らす。
「ぅ…く、……っん…ふ……、ッ…んッ……んッ……」
ちくしょう。
三初の野郎、わかってるくせに。
そんなに強く中を叩かれると俺はもうダメになるんだってことを、知ってるくせに。──この、ドS暴君が……ッ!
頭ではそう思っている。
筋金入りの意地っ張りな俺だ。
心は折れず、底意地の悪い性悪なドラ猫に死んでも従ってなるかと反抗心が燃え盛っている。
「……く、ん……、ッ…んッ……ふ……ッ」
けれど調教された体は、目先の快楽にゴマをすって媚びを売るのだ。
俺は無意識に三初の命令通りに内壁を収縮させ、小ぶりなローターでも満遍なく締めつけられるよう筋肉を動かしていた。
「……っ……んっ……」
下手に動いて人に気づかれないよう裏筋や反りをクチュクチュと扱く手に身を委ね、追いかける。
薄目を開けて呼吸を乱し、声だけは殺して三初の手に吐き出す。
声を出せない状況で、人に見られるかもしれないと思いながら淫行に耽る自分が、死にたいくらい恥ずかしい。
だがそう理解しながらも三初に身を任せると、どうしたことか、性感帯の感度が上がっている気がした。
──チッ……アホらしい。
気のせいに決まっている。
俺は羞恥に興奮するマゾじゃねぇ。
反抗心がムクムクと頭をもたげると、不意に尿道口へ僅かに指先を挿入されて「ヒ……ッ」とうめき声が漏れた。エスパーめ。
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