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第七話 先輩マゾと後輩サドの尽力
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しおりを挟むおはようから俺の思考を埋めつくしていた、三つの事柄がある。
──マゾじゃねぇのにマゾだからセックスの展開がワンパターンでつまんねぇって言われっとムカつくッ!
──んで抱かれ慣れてきた俺に調教しがいがねぇっつぅのは男として癪だッ!
──となりゃあ俺を虐める以外の楽しみを与えてやりゃ満足するってことだろ首洗って待ってろやこの人でなしサド暴君ッ!
これらのモヤと怒りの炎を振り切るために、俺は走り込みに出て、更にジムでひたすら泳いでいたわけだ。
せっかく二人で迎えた土曜日。
本来俺の機嫌が悪くなければ、一応恋人の
三初をどこかへ連れて行ってやるか、このまま家でゆっくり過ごすか、とにかく俺はそれらしい過ごし方をした。
三初はあぁ見えて、俺より遊びの趣味がガキっぽいのである。
そう見えなくてもそうなんだよ。
行動力はあるのに基本は室内でなんやかんやしていることが多い。
料理やらゲームやら映画ドラマ見放題やら、今どきの若者らしいインドア派。
まぁ急に思い立って出たりする。
外遊びもガキで、スポッチャンとかゲームセンターとかサバゲーとかが好き。
俺は動くのが好きで、ランドとかイベントとか山登りとかやってんな。
俺といると三初はわりかし出かけたがるぜ。文句ばっかり言うけどよ。
なんにせよアイツは一緒にいることに意味があると思ってるような思ってないような、なんかそういう感じだと思う。たぶん。知らんけど。
となると勝手な一人行動はよろしくないわけだが……昨晩のアイツの発言をモヤモヤ抱えていた俺は、まず脳みそをスッキリさせたかったわけだ。
ジムに行ったあとは、最近噂のオシャレで美味いイタリアンでランチ。
女子が好きそうな店だったのに割と量があったので、運動で空になった腹が満足した。まだ食えたけどよ。
ひとつ残念なことがあるとすれば、尻の中に挿れられたローターが気を抜くと振動して、勃起する程じゃないが無視もできない疼きをもたらしていたことか。
犯人は対面の席で、笑ってあーんとパスタを差し出していた。
できることならフォークを持つ手のほうに思いっきり噛みついてやりたかったぜ。
──……いや。
現在進行形で、噛みついてやりたい。
「……ッ……ン、フッ……」
体内でランダムに振動するローターにせっつかれ、口元を押さえる。
五百円玉二つ分くらい。
ひょうたん型のローター。
さほど大きくないそれが腹の中に入っているだけならこうはならなかっただろう。
けれど一度振動すると、擽ったい強さだとしても途端に凶器となりえる。
画面に集中していればいいという単純な話ではない。集中なんてできるわけない。
異物感。違和感が強すぎる。
無駄に敏感な襞が絡みついて息をするたびにヒクッ、ヒクッ、と収縮して内部を圧迫する。力抜いて拡げとけ? 腹ン中でブルッてンだぞできるかアホ。
ピンポイントで入り口数歩に引っ掛けられたそれを動かそうと身じろぐものならひと呼吸のミスでケツがギッチリ締まり、前立腺をぷちんと潰された。
口が出せないのだから当然手も足も出る余裕がない俺は、なるべくなにも考えないように悪趣味な遊びを耐え忍ぶ。
「んゔ……ッ、ん……んッ、……んッ」
それでもヴヴヴヴヴとモーター音を響かせながら高速で左右に半回転して暴れるローターにやわっこい肉を小刻みに叩かれ、反射的に締めつけてしまった。
途端、腰が痺れて辛くなる。
奥歯を噛んで我慢するほど脂汗が服の下で吹き出して気持ち悪い。暑い。
足をカクカクと微かに揺すって床を鳴らす。指でトントンと肘置きをつつく。
普通の男には多少感じたとしてもただ不愉快なだけの異物が、俺にとっては熟れた中の柔毛を一粒残らずジュクジュクに疼かせる最低最悪の起爆剤だ。
だから唇を噛み締めてでも、この甘ったれた声を殺さなければならなかった。
照明の落とされた暗いシアター内。
上映されている作品は、戦闘シーンが見ものの洋モノ映画。
おかげでローターのバイブ音や俺の息遣いが周囲の客にはまるで聞こえていないらしいのが、せめてもの救いだろう。一番後ろの席だというのもある。
けれど前後と左右に人がいなくとも、すぐ隣には素知らぬ顔で映画を楽しむ恋人様が一人いた。
言わずもがな、三初だ。
コイツの思うとおりになりたくなくて、肘置きにゴツンと肘をつき、その手で口元を押さえて睨むように画面を見つめた。
せっかく金を払って話題の映画を見に来たのに、なぜそれを無駄にするような嫌がらせをするのやら。
理解不能だが、これも最近つまらないなとほざくコイツの考えた、愉快で刺激的なアソビなんだろうよ。
テメェが一番刺激的な思考回路してんだよってのにこの歩く危険物が。爆ぜろッ!
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