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第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です
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しおりを挟むああくそ、頭痛が悪化したぜ。
テーブルに備え付けられていた紙ナプキンで口元を拭い、背後にいる三初を睨むために上向く。
「テメェいちいち飯の邪魔すンな! 普通に現れられねぇのか普通に! 隣座れよ!」
「や、ランチはもう食い終わったんでいいや。通りすがりに二日酔いの理由を詳しく聞こうかと思いましてね」
「オイコラ礼儀知らず星人ッ!」
せっかく無礼な登場を許して隣の席を勧めたのにサクッと拒否され、反射的に頭突きをかました。避けられた。
クソが。爆ぜろ。木っ端微塵に爆ぜろ。
怒り心頭の俺である。
けれどこの男の挙動にキレても仕方がないのもわかっているので、中指を立てるに留めた。なんにもしねェのは癪だからな。
それでええと、なんだ。二日酔いの原因? なんでそんなこと気にすんだ?
「ンだよ、中都と飲み行っただけだぜ」
「へぇ。ま、そりゃ別にいいですけど。どえらい急だったなって」
ぶすくれて返事をすると、三初は薄ら笑いを浮かべたままコテンと首を傾げる。
なんだよコノヤロウ。
全然いいと思ってねぇだろ。自分は他の男連れ込むクセに束縛しようってか?
だいたい急って、そりゃバレンタインが明日に控えてるからだろうが。
悩んでるうちに差し迫ってたんだよ。
誰かさんのためにな。
「わざわざ有給使って飲みに行って二日酔いとか、無様ですよね。そんなんで新年会行けるんですか?」
「あぁ? 行けるに決まってんだろ。こんなもん酔ったうちに入んねぇし」
なにが気に食わないのかわからないが、探りを入れている? 確認? のような気配だけは感じて、俺はワンッと吠えた。
下戸だとバカにされているのもムカつくので、強がりも混ぜてみる。
本当は酒の残っている今、追いで飲むのは勘弁したい気分。
そこは強がりと煽り耐性の低さが仇となった。
「そ? じゃ、明日休みだし……今日は終わったあと、俺んち行きましょ」
肩に置かれた腕がするりと滑り、俺のネクタイを指先で弄る。
誘うような声と仕草にイコールの先を察して、俺は「ぅぐ」と声を詰まらせた。
──ふ、二日連続飲み会のあとにセックスは体力的にヤベェぞ……!
酒が入っていると鈍くなって過激なプレイには耐えられるかもしれないが、そのあと死ぬ。いろいろと死ぬ。俺の休日は丸一日潰れるに決まってんだ。
しかしセックスは嫌、というか寝たきりになるのは嫌だが、三初の家に行くことはちょうど良かった。
明日は休みなのにバレンタイン当日なので、泊まるならカバンの中に隠してあるマフィンをさりげなく渡すのに都合がいい。
……あとはまぁ、普通に二人で過ごすのが悪くねぇってことだけどよ。
男の影を感じている今、そういう予定は結構イイ。
お誘いを受けて、自分が縄張り意識の強い三初のテリトリーに気兼ねなく入れるらしいということを実感すると、心持ちホワホワとしてくる。
「勝手にしろ。潰れたら置いて帰るからな」
「残念ながら酒に酔った記憶がないもので。期待ハズレでごめんね?」
「ンむ」
イエスともノーとも取れない返事を返しそっぽを向くと、三初は俺の顎を強引に鷲掴み、耳元に唇を寄せた。
「今夜はどっかのポメに唾つけられてないか全身隅々確認して、上書きしてあげますよ。ね、泥酔させたら愉快なことになるシュウスケセーンパイ?」
「ふむぁッ?」
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