誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です

04(side竹本)

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 戦慄する俺はニコッ! とあからさまに無理した笑顔を見せ、気分はアメリカンなテンションでコミカルに両手を広げる。


「はっはっは。いやいや俺はお前と違ってイケメンじゃないからな」

「あ、竹本先輩が俺にビビってんのも幸村をあわよくばで狙っててデートにすら誘ってないのも割と前から知ってますんで安心して虚勢やめてどうぞ」

「はっはーッ!?」

「映画デートねぇ。引き出しの中には期限切れのペアチケットかぁ……シュレッダーならあちらですよ」


 ねぇもうやだこの後輩怖い! 怖過ぎる!

 ニコ、と俺と同じように、だけど比べ物にならないくらいイケメンオーラを出して、暴君は上品に笑う。


「で。さっき御割先輩となに話してたんですか?」

「ひぇ……」


 いや、なんでそんなこと聞くんだよ。

 というかなんか怖ぇんだけど、あ、いやすみません。なんかすみません。理由は不明ですけど全然目が笑ってないです。全然目が笑ってないんですッ!

 これだから苦手なんだよ三初 要──ッ!

 なんて。

 恐怖に青ざめる俺とニマン、と考えの読めない意味深スマイルで俺を追い詰める三初が向き合った、一瞬あとだ。


「なに人の席に座ってんだよ三初ェッ」

「おっと」


 ヒュンッ! と空を切る音がすると同時に三初が身を躱すと、三初の頭があった空間に資料の束が現れる。

 それと同時に唸るような声が聞こえ、俺は眼光鋭く仁王立ちする声の主──御割のご帰還に、内心でファンファーレを送った。

 よっ、満場一致の永年教育係!
 待ってました心の代弁者!

 なにを隠そう、御割は対三初リーサルウェポンなのだ。

 単体だと周りをどよめかせることしかしないこの二人だが、二人揃うと三初の興味が御割に集中するので、周りに飛び火しないのである。

 解放された俺はホッとして、そそくさとパソコンに向き直る。
 えーっと、どこまでタイプしたかな……。


「危ないねぇ。先輩、俺の許可なくどこ行ってたんですか? もうミーティングの準備、資料以外終わってますけど」


 三初はパシッ、と資料で殴ろうと振り下ろされた御割の腕を軽く受け止め、御割を見上げて小首を傾げた。

 そのまま手にある資料をもう片方の手で引き抜いて、煽るように「ミスってんね」と告げる。うんうん。速読と違和感察知からの問題発見な合わせ技な。三初の特殊技能な。

 いつも通りのやりとりの気配を感じつつ、俺はカタカタタイピング。


「うるせぇ。もうそのミスは修正させてっからとっとと避けろ! つーか午前に頼んだ件、生産工場に打診したのかよッ?」

「増産でしたよね。工場ライン回す寸前でスケジュール押さえてるんで、数決めたら速攻生産開始できますがなにか」

「話まとめんの早すぎるわッ!」


 御割がガオウッ! と吠えれば、三初はクックック、と喉を鳴らす。

 うーん……そろそろ四年になるけど、これって毎度喧嘩なのか?

 別に午前ノータッチで溜めてしまったクライアントと下請けへのメールを返すのがめんどくさいという現実逃避じゃないが、考えてみると不思議な関係だ。

 御割はすぐ噛みつくからキレてるとして、三初はいつも薄ら笑いに軽薄な発言をしてるから、わかりにくいよな。

 いつも仏頂面で常に怒ってるように見える御割。
 そしていつもニンマリとキャットスマイルなので、機嫌がよくわからない三初。

 なんでいつも二人でじゃれてんだろ。
 改めてまとめてみると、全く共通点ねぇよ。




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