154 / 454
第五話 冬暴君とあれやそれ
23
しおりを挟むそうすれば素っ気ないのも辻褄が合う。
合う……、いや合わねぇかもしんねぇ。
「…………」
よく考えると、三初は俺をバカだと思ってるからって黙ったりしないことに気がついた。
ここぞとばかりに口数が多くなる。楽しんでるからな。俺イジメを。
とすれば、様子がおかしい上に素っ気ない理由はなんなのだろう。
ほじくり返せば朝からずっと俺にだけ静かで、絡んでも来なかった気がする。
……もしかして、俺はいつの間にか、三初に興味を失われつつあるのだろうか。
ビクッ、と僅かに指先が震えた。
どれだ。心当たりがあり過ぎるぞ。
特に昨日はそれなりに暴言を重ねた記憶があるしな。同じくらい重ねられてるけどな。裁判なら戦えるくらいにはな。
しかし冷や汗がタラリと首筋を伝うのは、なぜか。
それは俺が焦ってるからだ。
否めない。やべぇ、考えりゃ本気で思いのほか焦ってきた……!
俺は自分が全部悪いなんて思わないがもし自分がやらかしたことがアイツの地雷なら? という可能性が否めず、ソワソワと焦る。
仕事を手伝ったのは、俺の仕事が遅すぎて呆れて手ぇ出しただけなんじゃねぇか?
だからあんなに素っ気なかったんだ。
ほとんど喋らなかったのは、いちいち噛みつく俺の説教がうるせぇから鬱陶しくなったんじゃねぇか?
話すのもめんどくさいくらいだから、無言の訴えを起こしてたんだ。
つか、喋る気分にもならなかったんだ。
「……一日中気づかなかった……ッ」
まずい、まずいぞ。
サァ、と青ざめながら、俺は必死に原因を遡る。
三初がおかしくなる前、確か最後に言った言葉は。
『帰り道単独で事故れッ!』
だめだ。うん。
三初相手だと居心地いいからって、最近あけすけ過ぎた。このくらい気にしないだろうって思うがまま過ぎたのだ。
年下の後輩ってことを忘れていた。
俺の口が悪いってのも忘れていた。
いつも悪気なく言い過ぎちまうって忘れてたぞ。普段は気にしなくっても、乱暴なことを言われ続けて嫌な気分にならないわけがない。
──あ、謝るしかねぇ!
「それで沙耶は素朴でいい子でさ~」
「ちょっ俺、電話するわッ」
「ん?」
歩きざまずっと彼女の話を語っていた冬賀へ矢継ぎ早に断りを入れ、ポケットから取り出したスマホをトトトッ、と操作した。
思い立ったがすぐ行動。
誰しも謝るのは苦手だろうが、例に漏れず俺もそうだ。
それでもあんな黙りこくって言いたいことを言わない三初なんて、三初ではない。
他の誰がなんと言おうとプラスやマイナス問わず感情を抱く相手に物を言わないことは断じてないのだ。
必ずコケにする。必ず嘲る。必ず面白おかしく引っ掻き回して、必ず自分の思うとおりにする。それが三初 要という生き物。
なのに黙るなら。
素っ気なくあしらい存在を薄めるなら。
それはそれだけ機嫌を損ねたか、俺への興味が皆無なのだ。
あくまで俺の見解だけども。
(マジか、マジか~……! 様子が変とか全然忘れて普通に買い物してたぞ俺ぇ……!)
三初をよく知らない頃のただの先輩後輩の時なら、こんなことは喜びこそすれ、焦ることはなかっただろう。
今は違う。アイツと交わすくだらない言い合いが本当は好きなのだ。蓄積した苛立ちで話してくれなくなるほど傷つけたのならまずい。
どうでもいいとは思われたくない。
「おい、シュウ?」
「しー……ッ!」
電話帳から三初を見つけ、脇目も振らずに通話ボタンを押した。
プルルル、プルルル、と断続的な通信音が鳴り、三コール目ほどでザザッ、と応答された気配を感じる。
「みっ」
ブツッ。
「……は!? なんで切ったッ!?」
ところがなんのつもりか、なぜか通話をコンマで切られてしまった。意味がわからない。タイミングが悪かったのか?
20
お気に入りに追加
1,390
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる