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第五話 冬暴君とあれやそれ
20(side三初)
しおりを挟むプンスカと肩を怒らせて去っていった御割先輩の背中を見つめ、それが消えてから車を出して帰路につく。
先輩は俺を体力オバケだと言うが、狭い車内で抱かれた挙句にあれだけ騒いだあとでヨロヨロとしつつも普通に帰宅する先輩も、相当バケモノだろう。
イルミネーションされた街路樹が照らす道路をスイスイと進み、なんとなく、トン、と指先でハンドルを叩く。
──そういえば、明日はクリスマス・イブなんだったか。
我ながらわかりやすい海馬だこと。
残業前に有象無象の同僚たちと話した時もそれが話題に出たのに、先輩に言われるまで頭からさっぱり消えていた。
周馬先輩と自販機前でだべっていた時になぜか集団で絡まれた、アレだ。
まだ若いくせに彼女がいないらしいアイツらは、どう勘違いしたのやら俺がモテると思い込んで、女の口説き方なるものの教えを乞いにきた。
まー仕事遅い上に暇なやつらだよ。
クソ真面目にポチポチキーボード叩いてる先輩の爪の垢、煎じて鼻で飲んでほしいところだわ。
他部署もいるからなんも言わんけども。
顔も目つきも態度もサイズもイカついヤのつく御割先輩には、天地がひっくり返っても集らねぇのになぁ。
比べて、俺は物申しにくいタイプなだけで話しかけにくいタイプではない。
だからだろう。
集団ならイけると思ったらしい。うーわ、必死かよ。
でもま、職場の人間に恩は売っておいて損はないでしょ?
交友関係拡大を頑張らない。
利のためには気が向けば動く。
シンプルなシステムにより、先輩を待つ間暇だと思ってペンキ塗りたくるイカゲーをしていた俺は、アホで暇を潰すことにしたのだった。
あとは各々の情報をさりげなーく仕入れて、困った時に使う算段もありますけど。それは秘密。
閑話休題。
で、あぁなったものの、女にモテる技とかってはいどーぞって教えられるものじゃないから呆れた。
中身勝負なら俺はモテないし。
フリーなら付き合うけど一年未満でフラレるんだよね。いやー賢明な判断ですこと。
そんな人間に聞いてなんとかなるものじゃないでしょ。
とりあえずそう言って適当にあしらう。
興味持たせるだけなら、顔とスタイルとファッション。会話を始める度胸と余裕。ねーと始まんない。
それから話術とセンス。
で、金。奢れってより、金にみみっちくなんなよっつー話。余裕だよな、つまり。
男は見栄。女は空気。そこを気にするから、努力するなら空気を読んで動くことかね。
してほしいことをするために求めてることを察するスマートさを身につけときゃ誤魔化せる。たぶん。
けど、それって標準装備だろ?
落としたい相手に合わせてやることも態度もある程度変えるべき。その瞬間はそいつのことだけ考えてますーってわかるようにアプローチするもんだし。
結局、人に聞いて解決することじゃねーって話だ。不特定多数にモテたいなんて烏滸がましい。
そう言ったらおお~と感嘆。
や、当たり前のことだから。
落とすために相手を見極めて与えないでなんで選んでもらえると思ってんの。
ま、尽くすだけじゃなく自分の譲れないところはしっかり伝えるべきだが。そこんとこガンバ。
俺も含めてバカだよなぁ。
あ、男ってのはこういうアホな生き物だからね、世の中の女の子さん。一生子どもだしプライドも高いし夢を見ている。
裏でこうやってモテたいって愚痴って、赤信号みんなで渡れば怖くない精神のもと『モテ方教えろください三初様!』って集団お辞儀するのが成人男性な世界線だ。
なお童貞か素人童貞多め。
合コンセッティングは有料だから、って言ったら数人集まった。頭湧いてんな。
ちなみにその合コンのメンツは俺の元カノやらそれ関連の人たちなので、新しい男押し付けて円満に縁切りと恩を売る一石二鳥システムである。
これを言うと全員青ざめた。
知ったこっちゃない。同期の鈴木田が『良いヤツだと思ったのにやっぱり怖いわ!』と勝手に失望してた。
百万倍知ったこっちゃねー。
失言多いから彼女できないんじゃないのかね。余すところなく愚かしいものだ。
「クク……なぁんで皆々様は俺がなんでもできるイイコに見えてんのかねぇ……マジクソファック。全夢ぶち壊してやんよ」
今はあまり気にしていないが、好きでもない昔を思い出して若干めんどうな気分になり、独り言を車中にツイート。
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