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第四話 後輩たちの言い分
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しおりを挟む柔らかな刺激に身悶えていると、手の動きが止まる。
黙り込む俺の耳元で、三初は囁き尋ねた。
「男と恋しちゃいけない? 後輩だとダメ?」
そうは言ってねぇ。
「一緒にいるのは楽しいんですよね? お気に入りに認定してるんだから、縄張りに入れるのも気にならなくなった」
まあ、そうだな。
「アンタが暴君だサディストだって嫌がる から……最近の俺は、先輩に優しくしてると思うケド。だから見直してくれたんでしょ? 前より俺に触ってくるようになった」
それは……そうだけどよ。
「じゃあ聞かせて。先輩は俺のことどう思ってるのか」
〝俺がどう思っているか〟
大事なことはそれだけだ、とでも言いたげに、三初は俺の耳にキスをして抱き締める腕を強固にする。一番大事だろうが一番難しいことだと言うのに、かんたんに強いてくるのだ。
自覚する、実感する、認める。
これらは全部難しい。
難攻不落の大魔王に対して腹をくくらねばならないなんて、やっぱりこれは酷い悪夢だった。
「……テレパシーとか、使えなかったよな?」
「夢ですからね。結局はコレ、自問自答デスヨ」
「散々楽しんでおいてセルフプレイかよ」
「くっくっく。ほら、ちゃんと聞いてあげますから」
「……お、俺が、お前をどう思ってるかと、正直に言うと……」
俺は──スクリーン越しに見る映画のキャラクターみたいだな、と思っていた。
生きてるんだけど温度がねぇって言うか……人工物みてぇな感じ。本気で全部をコケにして、心底から惰性で生きてるのかと思ってたんだ。出会った日からな。
それでも構わない。
そのままでもいいと思う。
人には誰しも興味の矛先があって、それが向かないものがあるだろ?
たまたまそれが世間だったり人生だったりしても、悪くはねェから。
良くないだろうが、悪くはねぇよ。
その感想はそのまま、俺の三初への認識でもあった。
三初と俺は初対面の日からずっと変わらず、三年間イタズラと説教のループをしてきたんだ。
たぶん俺が三初を否定する言葉を使うから、アイツは俺が嫌いなのだろう。そう思っていたし、今も少し思っている。
けれどそこにあの夜から妙な関係が付け足され、ループが終わった。
気持ちがなくてもできるのがセックスだが、不思議なもんで、何度か寝ると相手の気持ちも少しわかってしまうのだ。
アイツは乱暴だし、基本的に俺をいたぶる方向に持って行って、いつも最終的に泣かせる。
オモチャも使うし抵抗すると縛るしわざと嫌味な言い方をするし、とにかく極悪サディストだ。
でも、丁寧にしてくれる。……言い換えると、優しい。
消えない傷をつけたりしない。結果的に気持ちよくしてくれる。それについては度が過ぎてるがな。悪くはねぇけど、三十路目前のおっさんは体力の限界値が近いのだ。
まあ総合的に見ると、アイツは結構俺を大事に抱いているわけで。
いつか俺の家に呼び始めて間もない頃、翌朝に気持ち猫背でヘロヘロとトーストを焼いていると、小馬鹿にされたことがあった。
その時は怒ったが、次からはそこそこの頻度でついでと称した食事を用意してくれているので、ヤツなりの気遣いなんだろうよ。
そういうところだ。
そういうところは、ループが終わった三ヶ月前から新しく発見した三初の意外なところである。
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