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第四話 後輩たちの言い分
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しおりを挟むベッドの背もたれにもたれかかってダラりとしつつ、ポツポツとくだらない話をした。
「チョコで一番好きなのは?」
「んら、トリュフ。チョロルも」
「へぇ。先輩って昔から甘党なんですか」
「あぁ……甘いもん食うと、甘やかされた気になる。それがいい。……お前、甘いもん好きか」
「さぁ? どうだろ。パサパサしたもんは微妙かな。まぁなんでも食いますけどね」
「なんでもいいのか。そんなんばっかだ」
「そんなんて」
くだらない話なもんだから、笑う三初はてんで俺を見ない。
そんなんばっかって言うのは、なんでもいいって言うところである。基本なんにでも興味ねぇんだよ。
せっかくいるのに、と思った。
ガジ、とまたスプーンを噛む。なんかつまんねェ。
「ん」
「ぅえ」
そうしていると、三初は俺の手からお椀とスプーンを奪い取り、ニヤリとしながら卵粥の乗ったスプーンを差し出した。
「あと少しでしょ、口開けて」
「…………」
これはいわゆる、あーん、だ。
妙な状況だと思ったがそれ以上考える思考力がないので、素直にカパリと口を開ける。
口内へ入ってきたスプーンにかじりつき、差し出されるがまま卵粥を胃に落とす。
あんまり遅いから焦れたのだろうが、三初はやけに楽しそうだな。
もぐもぐと口を動かしゴクリと飲み込む。すると次が差し出される。それを文句を言わずに食べる。
シラフならあまりにぞっとしない行為だが、スマホより俺を見ているようだから不問にした。俺は寛大な先輩だ。
「いやーたぶん熱上がってるなぁ……」
「んぐ」
言葉は素っ気ないけれどいつもより優しい三初は、最後の一口を俺の口に突っ込みながらそう言う。
一人じゃなくなって安心したせいだろう。仕方ない。それに、つい話したくなる。
静かになって眠ってしまったら、こいつが帰ってしまうかもしれないから。あとはただ話してぇだけだ。
自分の手じゃろくに進まなかったくせに食べさせてやるとやすやす完食した俺を、呆れた声がつつく。
「美味しかったですか?」
「ん、うまい」
「そりゃよかった。じゃあ薬飲んでくださいね。いったん寝て、熱下げないと」
頬に触れて体温を確認された。
冷たい手のひらに無意識に擦り寄ると、その手はすぐに離れる。
サイドテーブルに乗った薬を取り、パキッ、と折る手を見て、今日はやけに名残惜しいな、と思った。
理由はよくわからないが、寂しいからだろう。頬に触れた手が他の誰の手でも、今はもっとと思うはずだ。
「……三初」
「はい」
「なんでもねぇ」
「そ? ほら、これ飲んで横になって」
「ん」
手渡された薬を口に入れ、飲み物で流し込む。
名前を呼んだのはいいものの、その続きが思いつかなかった。
ベッドに潜り込んで深く布団を被り、鼻から上だけを出す。
横になるとドッと体が重くなり、目の前がチカチカとした。言われたとおり、山場らしい。
そばに腰掛けたままの三初は俺の髪を掻き混ぜ、髪質を楽しむように弄ぶ。
相変わらず機嫌がいいような気がするので、俺は布団に埋もれながら、目線を三初に突き刺した。ずっと考えていたことを聞き出すチャンスだと思ったのだ。
「……三初、今日の昼……」
「昼?」
「お前が構うの、やめたくてもやめられないくらい好きな相手って、誰だよ」
「ふっ、マジか。昼間の発言、一応気にしてくれたんですか?」
「違う。ずっと気にしてたわ。バーカ」
途端、グリッ、と強く頭をなでられる。ちょっと痛い。なんで怒るんだよ。
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