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第四話 後輩たちの言い分
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しおりを挟むワシャワシャなでてやってククと笑う。なんだか体が熱いのには慣れてきた。意識がぼんやりし始めるのはちょっと困るけどな。
「……センパイ、昔俺が酔ったセンパイにオネダリしたこと、覚えてくれちゃったりしちゃいます?」
「あ? あー……うん。覚えてるぜ」
黙って感動に打ち震えていた中都が、上目遣いに俺を見た。
昔のオネダリ、といえばあの若気の至りか。
滞りなく覚えている俺が頷くと、そっと首に腕が回され、頭をクシャリとなでられる。
「もっかいしたいって言ったら、オッケーしてくれちゃう?」
「ん……アホ。ここじゃあ無理だろ。今やったら、休憩終わるぞ」
「じゃあいつなら空いてるんすか? うち来てほしいっす。俺マジ、もう無理。センパイにもっと触りてー」
「ったく、別にいいけどもう一緒に寝るのはなしだかンな」
「ま!? それなしとかクソガン萎えっ、き、キスはぁっ?」
「舌入れたら噛みちぎ、……ん?」
「? センパイ?」
髪を両手で触りながらオネダリをする中都を仕方なく相手していると、不意に中都の頭の向こうに、いるはずのない影が見えた。
突然小首を傾げた俺に、中都は不思議そうな顔をする。
ん、んん……? んんん……?
じーっと眉間にシワを寄せ、ぼやけた頭を叱咤してどうにか視界を安定させる。
服の置いてある棚に背を預け、腕を組みながらスマホをいじっている不遜な男。
「──ん? ああ。お気になさらず」
それは間違いなく。
外で待っているはずの、三初だった。
「……いやなんでいんだテメェ!?」
「んぎゃっ! ってえ!? ふほーしんにゅーじゃんなんでいんの三初っ!」
お気になさるに決まってんだろッ!
思考が火照りでぼやけるだとかもうどうでもいいわ!
とにかく、大人しく待っていた三初がなんでここにいるのか。その一点に尽きる。
なんてったってここ、店舗の事務所だかんな。不法侵入だぞ。
三初なら勝手に入ってきそうだと思うだろうが、そうじゃない。
俺の知る三初はそんなことをすると後々面倒事になるので、やるならバレないようにやる男なのだ。
腕の中の中都と一緒になって頭上に!?マークを浮かばせると、三初はスマホをバックポケットにしまい、あっけらかんと笑みを浮かべる。
「や。俺にドア蹴破る権利はないですけど、よく考えたらやっぱり待ってるだけって性に合わねぇなーって。だから普通にレジにいた人に許可取って入ってきました。あ。監視カメラがそこの集金室しか映してないの確認してから来たかんね。不法侵入してたとしても証拠ねーよ。安心しろ? 八坂」
「安心できねぇわー! ミリも安心できねーわ! レジ前のってあいつらマジチョロすぎじゃん! アパレルスタッフはこれだからぁぁぁ~……っ! 外見に弱いったってスタイルいいやつに甘すぎっしょ!?」
「そもそも! 待ってるだけでいいだろ待ってるだけで! 蹴破る権利どころか追いかけてくる権利すら与えた覚えねェし! 後来たら来た時に声かけろよ気配消すなよわざとだろッ!」
堂々と入ってきたらしい三初だが、問題はそこじゃないというかそれだけじゃねぇ。
だというのに三初は、ギャーギャーと口々にダメだしを喰らい、鬱陶しそうにした。
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