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第四話 後輩たちの言い分
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しおりを挟む「なに言ってんだ? ンなもんねェよ」
「ムッカ。ってことはアイツの独断マーキングじゃねーの。んでセンパイ、さっきから顔赤くね? なんでっすか。オレのいない間にアイツに触られたんすか。ワシャワシャよしよしかわいがられたんすか。は~マジ有り得ねぇオレのセンパイなのによっ」
呆れ返る俺の言葉にブツブツと文句を付ける中都は、ジワジワと動いて俺の上に乗ってくる。
なんで乗るんだオイ。男に乗られても嬉しかねぇぞ。
そしてうなじをスリスリすんのやめろ。
三初が朝戯れに舐めたせいでなんか気になんだ。ゾクゾクする。
「あのなァ? さっきも言ったけどよ、俺は誰の所有物でもねぇ。顔赤いのはまぁ、クソな事情があるンだよ。別に……、って別にアイツに触られたからって照れるか! 眼科行け眼科、ふざけんな」
「耳まで真っ赤なんですけどぉ~っ?」
「っぅひ、っ」
「んっ……!?」
中都はふくれっ面で俺の胡座の上に、向かい合わせで座る。
その手が耳に触れ、ついピクン、と体を跳ねさせてしまった。
う、わ。くそ、変な声出た。
中都も変な顔してやがる。ドン引きだろうな。そりゃそうだ。でも今のは別に、その、耳あちィから触られてびっくりしただけで……ッ!
「え、照れ顔、か、かわぁぁ……っ」
と思ったが。
なぜか中都は恍惚と頬を染め、俺の耳に触れていた手で口元を押さえて興奮気味にそんなことを言った。
……そういえばこいつ、昔からこうだったな。
俺の一挙手一投足にテンションを上げて尻尾を振るポメラニアンだ。
子犬な後輩はかわいいがそのセリフが痒くなるものだったので、俺は余計にカァァ、と赤くなって中都を押しのけた。
「っああもう触んな、降りろ! さっさと選んで終わらせんぞ。ンでワッフル食う。しこたま食う!」
「嫌っす! うわぁ~このわかりやすさ最高っすね写メっていっすかってかもっと見たいっす!」
「そのスマホ叩き割っていいなら好きにしやがれよ、あ?」
「目がガチ目がガチっ。でもそゆとこ懐かない野良っぽくてむしろいいすわぁ」
「よし噛み殺してやる」
「ギャー!」
なにが楽しいのか毛頭理解できないので、俺はスマホを取り出した中都の鼻頭にガブリと噛みつく。中都は悲鳴を上げるが笑顔だ。ドマゾかよ。
それでも「でも写メは欲しいっす! 一枚だけ!」と食い下がられたので気だるさと相まって余裕がなく本気で睨むと、中都はギクッ! と肩を跳ねさせてから、大人しくスマホをしまった。
まぁ……俺を怖がるくせに付きまとうし、こうして引き際も心得ているかんな。
中都がかわいい後輩なのは、そういうところだ。懐かれて嫌な気はしねぇだろ?
そう思えば、職場の格安特権ありだったとしても俺のために服をかき集めてくれたのに、断固拒否するのはかわいそうな気がした。
「よーしいいこだ、中都」
「ひょえっ」
なのでビクビクと笑う中都を抱き寄せてしまったのは、俺なりの〝怒ってねぇし感謝してる〟である。
「ちっせぇなぁ」
「せ、センパイがでかいんす、侮辱っす、でもイイっす……」
冗談とからかいと甘やかしの融合体勢。
ってのはわかってるだろうから、存分にワシャワシャと頭をなでてやった。
中都は俺に負けず劣らずトマトみたいに真っ赤なのがなかなか笑える。俺よりは背も小さいしひょろいので、すっぽり腕の中に収まるのだ。
三初だと天地がひっくり返ってもこうはならないし、まず俺が抱き寄せるにはデカすぎる。あとアイツは結構強い。
体勢によっちゃあ押してもビクともしないぜ? 最早ハート以外も鋼鉄製だな。
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