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第四話 後輩たちの言い分
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しおりを挟むったく、これだからあいつは。
昔から調子ばっかり良くって、本題には触れないでいるばかりだ。
ノリで生きているので、なんにでも軽率に手を出す。
いつだったか、酔っ払った勢いで俺のあれをあれしてだな……。
ま、若気の至りだな。
長男気質な俺は、昔から友達や先輩後輩を放っておけずなにかとお遊びやトラブルに巻き込まれていたのだ。
「酒と若さとノリと勢い……」
神妙な表情で壁にもたれかかり、腕を組みつつ在りし日に思いを馳せる。
事務所前のちょっとした空間だが、ドアがあるほうとは逆の壁なので邪魔にはならない。
まあやっぱりレジ前の客やスタッフには見えるけどな。中都と三初のコンボが決まっていたさっきより、断然目立たねぇよ。
そうしてしみじみと浸っていると、急に視界に陰が差した。
「……? あ?」
トン、と体の横に腕をつかれて顔を上げると、目の前に最早見慣れた男がいる。
客の彼女曰く、かっこいいヤバイ、なある意味ヤバイ三初だ。
……いや、なんで俺後輩に壁ドンされてんだ? ンな胸キュン関係じゃねぇぞ。
現状を理解して、俺の脳内には疑問符が乱舞した。名残る暑さもあり思考能力がなんだか落ちている気がする。
つーかされて初めて知ったが、壁ドンってなんかムカつくな。
こう、質の悪いセールスマンに玄関の隙間に足挟まれた時と同じ感覚だ。近い、邪魔、強制すんな。イコール不快感。
そんな思考回路に則って、俺は当然眉間に深めのシワを作った。
トゥンク展開になると思ったら大間違いだぜ。
ヒロインポジが俺だかんな。
この体勢が気に食わないので、このまま胸ぐら掴んでドンし返してやりたい。
そうなるとジャンル恋愛じゃねぇだろ。バトルアクションだろ。
俺的にヒーローポジが三初って時点でジャンルがホラーサスペンス間違いなしなところも、もちろん理由の一端である。
「シュウスケセンパイのそーゆーとこダイスキ、ですって。ねぇ」
「だからなんだよ」
「さぁ?」
「おい、昨日の約束。思ったことはちゃんと言え。でねぇとお前知らん間に不機嫌なって黙り込むだろ? あれ俺すっげぇ嫌いだぜ。なんかゾワゾワするし」
「ふーん?」
頭の横に手をついた三初はへの字口になる俺の言葉に、本心の読めない相槌を打つ。
「ンだよ、言えよ」
「じゃあ言いますけど、八坂と先輩って昔なんか親密な関係でした? なんかもういちいち勘繰るのめんどくさいんであったこと全部ゲロってください。あ、俺が気になりそうなことだけでいいです。どうでもいいことは興味ないし省略で」
「お前はマジで意味不明だな!?」
ありのまま言えと言ったからにはそれなりになにを言われてもちゃんと聞く心構えでじっと見つめたのに、この返答。
思わずガウッ、と吠えかかってしまい、またしても周囲から視線を感じる痛い結果となってしまった。
それでも悪びれないのだから、三初のハートは鋼鉄製に違いない。
身構えた俺の心を返しやがれ。
つか、そもそも俺と中都が絡んでてなにを勘繰ることがあんだッ? あぁ?
「別に? まぁ先輩はアホなので言ってもわかんないことですし、脳死しながら語ってください。こっちで勝手に咀嚼するんで。気楽にトークしていいですよ」
「お、そりゃあ気の利くこった……ってなるわけねぇだろ! そもそも中都と親密な関係は見ての通り以外なんもねぇわ!」
「だからそこ詳しく」
「はぁ……!? いや詳しくって、テメェと同じだっつの。普通の後輩。当たり前だろうが。わかったらこの不愉快な体勢を今すぐ改善しろ。先輩をドンすんな。壁際追い詰めて詰問とか路地裏のヤンキーかテメェは」
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