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第四話 後輩たちの言い分
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しおりを挟む──しばらく後。
疲れた体に鞭打ってシャワーを浴びたあと、出前を三初に任せ、ビチャビチャになったシーツを取り替えた。
なにのせいでビチャビチャなのかはさておき、誰のせいでというと俺様何様三初様である。いつか絶対仕返しをしてやろうと画策しているのは、秘密だ。
そもそもの原因は大魔王だというのに健気にシーツを取り替える俺は、かなりイイ先輩だと思う。
ギシギシと軋む筋肉は当然だが、しつこすぎる前戯のせいで意外にも酷使された尻の穴に痛みはない。
しかし体内の違和感と擦れすぎによる痺れ、いつも通り弄ばれた乳首の腫れは別だ。
今日は新たに大事な息子の先端がなんだかムズムズと変な感じがしていて、しばらく漏らしたような心地が収まらなかった。
それなのに敷布団、上布団の二枚分のシーツを取り替えたんだぞ。褒めてくれてもいいはずだ。
全てを終えてやや猫背になりながらそう言うと、鬼畜暴君は「百八十越えの大人の男一人、丸洗いした俺がまず褒められるべきですよね」と鼻で笑った。
もちろん、返す言葉に詰まった俺の負けである。
し、仕方ねぇだろ……!
ベッドから立ち上がった瞬間膝から崩れ落ちるなんて、誰が予想したってんだこんちくしょう。
ちなみにあまりの情けなさにふてくされた俺が、床の上から「もう無理。お前責任取れ。俺を洗え。そして死ね」と丸くなった結果が丸洗いだったり。
テコでも動かなかったために、三初が折れたのだ。
初めてもぎ取った勝利がダダを捏ねた結果とは、やはり情けない限りである。
──そうしてなんやかんやと処理しながら、一時間が経った頃。
「あ? なんだって?」
近所のファミレスの出前であるてりたまハンバーグ弁当をつつきながら、俺はポカンと口を開き、次の瞬間に首を傾げた。
「だから、明日八坂に会いに行くなら、俺もついて行きますねって言ったんですよ」
いやいや。
決定事項みたいに言いやがって、そんな話俺聞いてねぇぞ。
正面の席に着き一人でピザ一枚を食べている三初は、突然なんの前触れなくそう言ったのだ。そりゃあ聞き返したくもなんだろ。
第一理由がわからない。
なんのつもりか警戒しつつ訝しげに見つめると、気まぐれな猫はぺろりとピザ耳の粉が付いた親指を舐める。
「ま、ただの暇つぶしです。腰抜かしてシャワーも浴びれなかった先輩が明日ちゃあんと時間までに起きれるのかははなはだ疑問ですけどね。起こしてあげませんし」
「は? あんだよ、なにって?」
「いや? 先輩こそ、逆に俺同伴がダメな理由があるんですか」
「別にねぇケドよ」
ならいいでしょ、と言って目をそらし、三初は最後の一切れに手をつけた。
じろりと観察してみるが、いつかみたいに機嫌が悪い気も、いい気もせず、いつもどおり。
俺といる時はだいたい素、という本人の弁だったような気がする。
それから俺が〝なんでもできてもなんでもしなくていい〟と今の三初を認めたあの時の発言を受け入れた記憶も組み込もう。
それらを加味すると、特に裏の意図があって言い出したわけじゃなさそうだが……なんだ、このネズミを狙う猫が身を屈めているような不穏な気配は。
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