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第四話 後輩たちの言い分
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しおりを挟むズルリ、と俺の中から三初のモノが引き抜かれ、枯れた声が漏れた。
数時間異物を咥え込んでいたそこは切なげにヒクつき、荒い呼吸を繰り返すたび、収縮を繰り返す。
「っ……はっ、ん……クソ、最悪だ……」
自分の出した得体の知れない液体に塗れた体を小さく丸め、俺はじわりと涙の滲んだ顔を両腕で隠す。
日本中のノーマル男の中で男に抱かれ、前立腺を開発され、挙句の果てに潮吹きなるものをさせられるに至ったやつは、何人くらいだろうか。
厳密な人数はわからないが、俺の周りには一人たりともいない。
それがわかっているから、瞳を潤ませてしまう。
俺の体がどんどんアブノーマルになっていく。言葉にできない哀愁やらやるせなさやら情けなさやらやるせなさやら、込み上げるものがそうさせるのだ。
「また、俺ばっか……嘘だろちくしょう……死ね、死ねぇっ……うっ……うぅ、ぅ」
「どうしたの? 先輩、なんで泣くの?」
使用済みのゴムをパチンと手馴れたようにくくり、ベッドのそばに置いてあったゴミ箱へ乱雑に投げる三初。
ギシ、とベッドを軋ませた三初は、自分の体の変化を嘆く俺の上に覆いかぶさり、じっと顔を覗き込んだ。
「くっ、ぅ……三初、テメェ、殺すっ……」
「は、なに? 気持ちよかったでしょ? 気持ちいいの好きでしょ? 殺すのはいいですけど、なんで泣いてるんですか。こっち向いて。顔、隠さないで」
無理矢理グイ、と顎を掴まれ、三初のほうへ顔を向けさせられる。
「っクソ、触んな……っ」
「ワガママ」
誰だって自分の体液で濡れ、羞恥心に身を焦がされながら真っ赤になって涙を流す顔なんて見せたくない。
けれど三初は容赦なく振り向かせ、互いの鼻頭が触れ合うくらいの距離まで、自分の顔を近づけた。
ベロン、と熱い舌が左の目玉を舐める。
「ヒッ……!」
「クク、しょっぱ。ほら、なんで泣いてんの? ねぇ」
鼻先をこすりあわせ、逃がさないとばかりに見つめるハチミツ色の瞳。
「っ……せぇ、もっ、がっ」
「いて」
あまりに恥ずかしい涙の理由を問いただされ、俺は我慢ならず、三初の鼻頭にガブリと噛みついた。
へろへろなので大して力は込められなかったが、窮鼠猫を噛む、だ。
俺がいつもただされっぱなしだと思ったら、大間違いである。
理由なんて言いたくねェ。
まさか〝変なプレイを仕込まれて俺の体ばかりが変わっていくのが悔しくて物悲しい〟だなんて。
なんで悔しくて悲しいのかなんてわからないが、とにかく三初には言いたくないのだ。
「ふっ。ほんと、先輩ってかわいくねぇ」
「いッ……!?」
だが俺に噛みつかれた三初はさほど痛そうにはせず、仕返しにガリッ! とキツく俺の鼻頭に噛みついてきた。
その噛む力たるや。
反射的に鼻を押さえた手の感触からして、歯型がつくレベルだ。おちおち泣いてもいられす、驚きで涙も引っ込んでしまった。
「~~~ッ! テメェ……っ俺はふた粒程度の涙でも浮かべられねぇのかよっ!」
「ククク。当たり前でしょ、俺の許可取ってないし」
「男の尊厳一撃必殺された時くらい好きに泣かせろっ」
凶悪なセックスが終わったので呼吸が出来て、少し体力が回復する。
回復したての体力を使っていつも通り抗議し睨みつけると、ニマニマと笑んだ三初は、ようやく俺の上から退いた。
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